料理下手キャラに説得力を持たせた「バカとテストと召喚獣」に脱帽した

この記事は

「バカテス」の感想です。
姫路瑞希、恐ろしい子。

殺人料理なんてあり得ない

最早定番の属性となっている「料理下手」。
あんなに可愛い子が料理を作ってくると、夜叉のように見えてしまう。
ポンコツの代名詞的に広く多用されている、この料理が下手という設定。
しかしながら、現実的に考えてしまうとどうしても腑に落ちないですよね。

料理を食べただけで、気絶をしてしまったり、もっと行くと臨死体験をしたり。
いやいや、何をどうしたらそうなるんだと。
フグとかキノコとか危険な食材を使っていたらまだ分からなくも無いですが、一般的に安全と目される食材を使って、一見すると普通の調味料で味付けをして。
それでも出てくる料理は殺人級。
一つのギャグ的表現だというのは理解しつつも、真面目に考察しちゃうとあり得ませんよね。

現実での失敗と言えば、砂糖と塩の入れ間違いというのが最もオーソドックスでしょうか。
量が多かったり、料理によっては食べられないこともありますが、流石に気絶はしません。

ただ、調味料が何か意図的に伏せられていたら、人間は激マズ料理を作ってしまうことも本当なようで。
昔主に深夜帯に放送していた「愛のエプロン」って見たことありますか?
TOKIOの城島茂リーダーが司会を務めていた料理番組で、女性タレントが作った激マズ料理にもがき苦しむ審査員たちのリアクションが面白くて、毎週ゲラゲラ笑いながら見ていました。
テレビ番組なので、多少の誇張はあるでしょうけれど、「リアルに吐くほどマズイ料理」を作る人間は実在します。
(但し、繰り返すようですが、その際調味料の種類は分からない状態で調理していた為に起きたことです。)

さて、前置きが長くなりましたが、このあり得ない問題を華麗に解決していた作品がありました。
「ぐらんぶる」の原作でもお馴染み。
井上堅二先生の代表作「バカとテストと召喚獣」です。

正直、感動しましたw

才女・姫路瑞希の作る料理が凄い

作中のメインヒロイン・姫路瑞希。
主人公たちが通う文月学園に於いて学力最底辺のFクラスに在籍している彼女ですが、しかし、それはハプニングがあってのこと。
実際は学年トップクラスの学力を持った大変に頭の良い女の子なのです。

そんな彼女ですが、唯一の弱点が「人を死に至らしめる料理」を笑顔で大量に作ってきちゃうこと。
愛情を込めたお弁当を優しく微笑みながら好きな男の子に楚々として差し出す奥ゆかしさも、差し出された側からすると死刑宣告に相応しく。
事実を告げて彼女を傷つけたくない少年は、死に物狂いで言い訳を考えて、その場から逃げようと画策するのですが…。

ギャグ作品である「バカテス」に於いて、瑞希の作る料理というのは当然にギャグシーンとして使われているんですよ。
料理を食べたくないものだから、必死に言い訳をしたり、足の引っ張り合いを繰り返す男子連中の必死さに笑い。
足掻きも虚しく、料理を口に入れられてしまい、最終的には悶絶しながら倒れていく様に笑う。

分かっちゃるけれど、それでも件のあり得ないだろうという疑問が湧くのです。
まぁ、あり得ないだろうという読者のツッコミを含めてまでのギャグなのですけれど、無粋にも思わずにはいられない。

そんな僕を嘲笑うかの如く、天才的な発想で「何故、姫路瑞希は殺人料理を作ってしまうのか」が作中で示されたのです。
それは6.5巻にありました。
先ずはご覧いただきましょう。

瑞希さんの作る肉じゃがのレシピが載っておりました。
「あの人の舌もとろけちゃう特製☆肉じゃが」という想像するだけで唾が溢れそうになるキャッチーなことを仰ってますね。
説明するまでも無いでしょうけれど、「舌がとろける」というのは「美味しい」の比喩表現ですね。
この場合は、とろとろに煮込まれた牛肉を想像していただければ良いのかと。

さて、レシピを見てみると下の方に色々とおかしい点が見受けられますね。
中でもひときわ目を惹くのが「硫酸」。
ここで理解できました。
「舌がとろける」というのは物理的な表現なんだなと。

この辺は、一先ず置いておきまして。
作り方に目を転じますと、最初の4項目までは実に普通です。
寧ろ「料理できる女の子」感が出てます。
目がおかしくなるのは5項目目ですね。
「硫酸を加えます」と書かれてます。
おや、おかしいぞ。
頭がどうかしちゃったかしらと思ったのですが、ここで瑞希先生のワンポイントアドバイス。

僕はね、このアドバイスを読んだ時に、成程!!と膝を打ちましたね。
これは凄いと。

アドバイスにはこうあります。

じゃがいもに含まれるデンプンは硫酸を加えて煮込むと加水分解を起こして単糖類になって甘みを増すのでオススメ☆

彼女は天才なんだなと。
イギリスの作家ロバート・バートン氏は言いました。
「料理は芸術であり、かつ高尚な科学である。」
日本の物理学者の湯川学教授も言ってます。
「料理は科学だ。」
文月学園の才女・姫路瑞希さんは言いました。
「料理は化学ですよ」

音は同じでも、一文字変わるだけで別の学問なんだよな~。
非常に残念なことですが、それでも頭の良い彼女らしいアプローチで料理を作っていたのですよ。
化学的な反応を考慮して、甘味や旨味を引き出そうとしていたということが分かりました。

この後工程も「材料の関係でお鍋が解けちゃうから、素早く調理してね♪」とか「お鍋に残った溶液を専門業者に依頼して処分するのがお料理をする人の最低限のマナーですよ♡」とか恐ろしいことを仰ってますが、それ以上に大事なのは最後の部分です。

この調理に於ける化学反応式が書かれてますが、王水というガチの毒物を精製していることに注目です。
金やプラチナを軽々溶かしちゃうほどなので、画像にもある通り骨髄くらい楽勝で溶けて消えるでしょうね。

つまりは、彼女の料理を食べるとガチで死ぬということです。

真面目な話、これは本当に感心しました。
このレシピ自体がギャグにもなってるんですけれど、それでいて「死ぬほどマズイ料理」に説得力を与えつつも、勉強の出来る彼女ならではの調理法である為、滅茶苦茶自然なんですよ。
こんな凄いことをさらっとやってのける井上先生、マジパネェって思いました。

終わりに

という訳で、「バカテス」感想でした。
まだ未読の方には、今の時期こそお勧めですよ。
コロナ疲れで精神的に参っているなら、笑いを補給しましょう。

僕も疲れていて。
コロナ疲れもそうだし、イベントの自粛、ショップの臨時休業、そして志村けんさんの死。
嫌な事、辛い事が多くて鬱になってます。
そんな訳で、今週末はゆっくりと「バカテス」を読もうと思います。
まだ8巻までしか読めてませんので。(現在進行形で読書中なのだ)

大いに笑って、リフレッシュしましょう。

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