長編作品にとってNHKでのアニメ化は最も幸福な事なのかもしれない

この記事は

「NHKアニメ」って素晴らしいと思うという事を綴った記事です。
色々と間違っている事を書いているかと思います。

はじめに

「バクマン。」の最終第3シリーズの放送がいよいよ迫ってきました。
今回で第3期であり、これで最後というのは大方のファンの予想通りだったのではないでしょうか。
3期の放送が告知され、その後原作が完結したので、予想が立てやすかった。

これで「MAJOR」に続き、長編少年漫画原作としたNHKアニメが原作最終回までアニメ化を果たすという快挙を成し遂げた訳ですが…。
(厳密には「MAJOR」は、OVAでの補間込みでとなります)
これって凄く羨ましい事ではないでしょうか。

原作ファンにとって、原作のラストまでアニメ化してもらいたいというのは悲願の一つと言っても大袈裟では無いと思うし、少なくとも僕自身はそう思っています。
折角アニメになったのだから、最後までと考えるのは人情でしょう。

最近では民放のアニメでも「灼眼のシャナ」や「ゼロの使い魔」なんかがファイナルを謳って放送されていました。
ストーリーが原作準拠だったとは言えなかったようですが(僕は両作品とも原作もアニメも未視聴・未読故細かくは知りません)、それでも「アニメで完結」出来た稀有な作品と言えるかと。
大抵の原作付きアニメは、途中で終わってしまうからですね。

それは、どうしても人気に左右されてしまうという、抗い難い現実があるから。
ただNHKは最後までアニメ化してくれる作品が続いた。
これって作者にとっても、ファンにとっても、嬉しい事なのではないでしょうかね。
今回はNHKアニメに関しての記事です。

尚、「原作最終回までアニメ化する事」と「原作準拠で最後まで描いたか」どうかは別問題であり、後者は当論考では無視します。
(ラストが、原作通りなのかアニメオリジナルなのかどうかは考察の範囲に含めないという事です。)

視聴率とソフト売上

民放(キー局と言われる日本テレビ放送網・テレビ朝日・TBSテレビ・テレビ東京・フジテレビジョン)では…。
プライムタイム(19時から23時)やノンプライム(6時から19時と23時から24時)の殆どの番組は、視聴率が最優先事項になると一般的には言われています。
実際は、視聴率だけでは無く、グッズ収入や映画興収等様々な要因が絡み合っているようです。
「GS美神」が良い例ですね。視聴率こそ高く好評だったにも関わらず打ち切られてしまった要因が、グッズ収入の低迷と言われていますから。

さておき。視聴率が大事なのは変わらず。
数字が人気のバロメーターに使われ、これが「作品放送を続けることが困難」なレベルを一定期間続けてしまうと「打ち切り」という憂き目にあいます。

UHF局はどうなんでしょう。
視聴率が公表されたのを見たことが無いですので、こちらはキー局とは考え方が違うのかもしれません。
アニメに関して言えば、次の深夜帯放送の考えに等しいと見ていいのかもです。

という事で、深夜帯では、視聴率は二の次になります。
ソフト売上が人気を測る最大の基準になるようですね。
やはり、一定のライン(これは番組ごとに違うと思う)が設定され、それを上回る売上を記録すれば、続編の制作が現実味を増し、下回れば続編へのハードルは高くなってしまう。
必ずしもこれだけで続編の有無は決まらないと思われますが、状況を大きく左右する力はありそうです。
これは放送局に限らず、また、UHF局ではノンプライムタイム放送のアニメも含まれると思われます。

アニメの放送は、放送する時間帯によって何が大事なのか変わってくる。
視聴率とソフト売上、2つの要素からNHKアニメについて考えてみます。

NHKの視聴率

視聴率とは何か…。
僕自身ふわふわとした概念しか持ち合わせていないので、調べてみました。
採取方法に関してはどうでもよくて…。

何故民放で大事にされているか…ですね。
で、やはり広告の営業活動に大きく関わってくるかららしいです。
CMですね。

民放はCMがあり、これが無いと番組は放送出来ません。
CMを売っている企業としても、1人でも多くの人に見て貰いたいと考えるのは必然であり、その指標として視聴率が存在している。

だから、民放では視聴率を重視している。
でも、なら深夜アニメは何故除く事が出来るのかと考えてしまう。

深夜アニメとノンプライムのアニメを比べると一目瞭然ですよね。
ノンプライムのアニメでは、そのアニメと関係の無いCMが流れることが多い。
「コナン」とか一般企業のCMが大半です。

一方深夜アニメでは、作品と関係のある企業のCMが中心。
レコード会社のCMだったり、作品のソフト販売会社のCMだったり。
アニメ制作に携わっている会社が、CM枠を買って作品を放送していると推測出来て、故に視聴率は度外視出来るのかなと。
まあ、ただの推測ですが。

閑話休題。
NHKの場合はどうか。
民放とは事情が違ってきます。

人力検索はてなで、素晴らしい質問がありました。
以下質問とベストアンサーに選ばれた回答を抜粋させて頂きます。
該当ページはこちら

Q.
「NHKが視聴率争いをしなければならない理由を教えてください。」

A.
「まず、全ての番組において視聴率争いをしているわけではありません。視聴率を意識せずに作られている番組は多数あります。
例えば教育の「手話ニュース」は、他局と視聴率争いをしていません。
ただ、仰るように視聴率を意識しているものもあり、代表的なものが大河ドラマや紅白ですね。

NHKは原則的に、TV視聴をしている全ての世帯から受信料を徴収しています。
その場合、番組制作の方向性が二つあります。
自治体の福祉サービスのように、数は少ないが一部の必要な人のための番組を作るケースと、自治体で言う教育サービスのような、受信料をもらっている全ての世帯に対して番組を提供することです。

そこが、完全な国営放送ではなく民放でもない彼らの、悪く言えば中途半端な位置づけを表しているともいえます。

前者(一部の人に対しての価値ある番組)だけでもよいとした場合、逆に受信料を払っているのに、そのサービスを享受できない、つまり自分にあった番組がない、という人が多数発生してしまいます。
そうなると、その受信料は税金の性格を帯びるわけで、公共放送という多くの人に放送を提供する意図から少し離れてしまいます。

また、多数の人の興味を呼ばなければ不払いの原因になります。」

民放とは違って広告(CM)で番組が制作されている訳ではなく、我々の受信料で番組を作っているNHKならではの構造ですね。
視聴率の高低で番組の継続が判断される事は、民放よりかは無さそうです。
ですが、あまりにも低い状態が続くと「受信料不払いが増える」要因の一つとして、打ち切り判断材料となるのかもしれません。

「バクマン。」はどうか。
視聴率って殆ど表に出てきていないので分からないのですが、贔屓目に見ても高いとは言えない数字だと予測できます。
原因の一つは「名探偵コナン」ですね。

「コナン」が2009年4月より全国的に土曜6時に移ってきました。
丁度裏のNHKでは「MAJOR」第5シリーズを放送中。
当時は同じ「サンデー」アニメが同時間帯に放送されるという事で、ちょっとした話題になりました。

「MAJOR」は高視聴率番組で、その第5シリーズでは初回に7%を叩きだしたようです。
しかし、「コナン」が来てからじりじりと後退。
「コナン」は、かつての20%台連発だった頃には見劣りするのは事実ですが(TV全体の視聴率低迷もあり、安易に比べることは出来ない事です)、それでも同時間帯トップを連発するお化け番組。
午後6時代で12%以上の視聴率を叩きだす程なので、こっちに視聴者を食われてしまったのでしょうね。

「バクマン。」1期もやはり「コナン」の裏で苦戦。
2期では「コナン」と被らない午後5時半からの放送でしたが、視聴率的には芳しく無さそうだったのに、3期が決定。
「バクマン。」は視聴率が求められている訳では無さそうです。
(NHKの合格ラインが非常に低く、それを超えているからという可能性もあります。実際の所はやはり不明)

NHKのソフト売上

「合格ライン」は作品によって異なりますし、通常発表されるようなものでもありません。
僕はこういう売上にはとんと疎く、また興味もありませんので、良く分からないというのが本音なのですが…。
まあ、1万超えると大成功とか1000枚下回ると爆死とか言われているのは見かけたことがあります。

「バクマン。」のソフト推定売上データを探してみました。
「アニメDVD・BD売り上げまとめwiki」より。

○バクマン。 【全9巻】
巻数  初動     発売日
     DVD(BD)
01巻 1,404(*,648) 11.01.26 ※合計 2,052枚
02巻 *,659(*,***) 11.02.23
03巻 *,***(*,381) 11.04.06
04巻 *,***(*,339) 11.04.27
05巻 *,***(*,***) 11.05.25
06巻 *,***(*,***) 11.06.22
07巻 *,***(*,***) 11.07.27
08巻 *,***(*,***) 11.08.24
09巻 *,***(*,***) 11.09.22
※DVD3,4巻の合計 978枚(アニメパワーランキングより算出)

○バクマン。 2 【BOX全2巻】
巻数 初動 発売日
BOX1 *,*** 12.06.20
BOX2 *,*** 12.09.26

データが無い部分は、「数字が出なかった」のか、はたまた「数字出る前のデータ」なのか…。
2期のBOX2は発売前(今日発売なんだ!)なので、「データ出る前」で確かですが、それ以外は前者っぽいですね。
ついでに「MAJOR」も調べてみたのですが分かりませんでした。

う〜〜ん。どうなんだか分からないですけれど、「売上が良い!!」とは到底言えないのかなという印象。
ソフト売上も然程重視されていないとも考えられそうです。

NHKでの放送は良い事が多い

NHKアニメは、他局に比べて「続編へのハードル」が滅茶苦茶低そうです。
が、実際は僕の考えも付かない独特の基準があり、その規則の上で続投かどうか協議されているのかもですが…。

今回「バクマン。」を例として書いてきました。
色々書きましたが、当初から「原作の完結までをアニメ化する」という条件の下制作され続けていたのでしたら、上につらつらと書いてきたもの、ほぼ全てが否定されるかと思います。
でも、例えそのような契約が交わさていたとしても、これって民放やUHF局では考えられないんではないかな。
だって、かなりリスクのある契約ですもの。

いざ放送が始まって、視聴率が低迷を続けるかもしれない。
ソフトの売上がダメダメかもしれない。
そんな中、契約だからという理由で2期も、3期も延々と放送を続けないといけない。

「商売」が第一の放送局では到底成り立たない契約。
実際の所は不明ですが、やはりNHKアニメは良い事が多そうです。

この他にも、NHKでアニメ化される「特典」って多いんですよね。
一つは再放送。
人気や需要があれば、何度も何度も繰り返し放送されるのがNHKの特徴。

「MAJOR」も飽きる程再放送されていましたし、今の「バクマン。」もそう。
年末年始に一挙放送をしたり、前期と新シリーズの間の半年間では、前期を1話から再放送したり。

再放送というのは、非常に魅力的なコンテンツ。
かつて再放送から人気に火が付いた作品は少なくない。
人気の継続としても、更なるファン層の拡大としても、とても効果の高い再放送をしてくれるのは大きな魅力であります。

もう一つ。物語の構成面。
長期作品のアニメ作品に於いて、そのアニメ自体も長期化した場合。
問題となるのが、原作のストックです。
特にストーリー漫画の際は大変。

引き伸ばし。オリジナルエピソードの挿入等々。
あらゆる手で原作に追いつかないようにしないとならない。

NHKの「MAJOR」や「バクマン。」では、基本的にこの問題とは無縁でした。
半年放送⇒半年休止⇒また半年放送というサイクルである為、原作に追いつく心配が少ない。
これも大きな利点と言えそうです。

また、全国放送というのは、やはり大きい。
全国どこからでも、同時間帯に視聴出来るのは非常に高い価値があります。

とはいえ、全ての作品がこの恩恵を受けられる訳では無いんですよね。
NHKは他のTV局と比べても自主規制が強い放送局です。
お色気アニメやえっちいシーンを武器としたアニメには不向きな局。

また、残酷描写の多い作品もやはり向いていないと言えるかと思います。
「作品を選ぶ」という短所がある事は否定できない事実ですね。

長所ばかりとはいかないNHKでのアニメ化。
しかし、嵌れば非常に美味しいのがNHK。
長期作品にとってNHKでのアニメ化が決まれば、とても幸福な事のように思います。

「バクマン。」最終シリーズも楽しみつつ、その次に取り上げられる作品が何なのか非常に気になるところです。
個人的には、そろそろ「GIANT KILLING」の2期を所望したいです。
地上波でも放送されましたし、あれから時間は経ちました。ストック的にも問題無いはず。
2期、始まるといいな。

補足

素晴らしいコメントを頂きましたので、補足として記事中にも転載させて頂きます。
漫画道場さん、ありがとうございました。

漫画道場
NHKアニメと言っても色々あるみたいで、制作・著作がNHKの場合、
制作会社が製作に関わる場合、製作委員会が作る場合などですね。
このうち、『バクマン。』はNHKが元請に制作させたものだそうで、
おっしゃる通り視聴率は度外視してるそうです。

で、続編が作られない可能性が生まれるケースとして、
NHKの製作じゃない場合が当てはまるっぽいです。
これこれの予算を出すからこれで作ってねっていうケースだと、
予算がカツカツで制作会社は大変でも、予定された通り最後まで作られる。
なぜならNHKが予算全額を負担してる時点で採算が取れてるから。
でも、採算が取れるかどうか分からない外部製作だと、
アニメーション制作の質は維持出来ても、2話収録で6000円とかいう
クソ高いDVDを出さざるを得ないし、失敗したらそこでアウト。

こういう感じだそうですよ。

という事で、ざっと調べて見ました。
今放送中で1話30分(25分)のアニメを中心に。
(NHKエンタープライズ、総合ビジョンなどはNHKという表記で統一します。)

▼「MAJOR」、「バクマン。」
製作はNHKと小学館集英社プロダクション(小学館プロダクション)
小学館集英社プロダクションは、名前の通り小学館と集英社がメディア展開を一括管理している会社ですね。
ここが製作に名を連ねているという事は、両作品とも最後までアニメ化する事前提であったのかもしれません。

▼「銀河へキックオフ!!」
製作はNHKとNAS。原作アリ。
製作・著作に広告代理店であるNASが絡んでいる今作は、どういう扱いになるんだか分らなかったですw
まあ、でも、NHKとは関係の無い外部会社が製作に関わっているので、ある程度の利益は求められているのかもですね。

▼「キングダム」
製作はNHKとぴえろ。アニメ制作会社が製作にも名を連ねた原作アリ作品ですね。
これも、外部会社が関わっている、しかもアニメ制作会社そのものが製作しているので、「銀河へキックオフ!!」以上に利益が求められているのかな?

▼「ファイ・ブレイン〜神のパズル〜」
製作はNHKとサンライズ。オリジナル作品。
原作有無という違いはあるものの、「キングダム」と同一ケース。
この作品の場合、3期の製作が決まった為、採算が十分取れているのかもしれません。

▼「GIANT KILLING」
で、ジャイキリですね。
製作はNHKのみ!!
NHKさえ作ろうと思えば、続編作られそうです!!
期待!

ざっと調べた限りだと、自分が調べた範囲(上ので全て)ではNHKが製作に関与していますね。
製作委員会の場合、特殊な作品固有の名前が作られていて、分かりやすいのですが、今回それは見当たりませんでした。
けれど、放送局(NHK)と他会社が連名で製作している作品は、製作委員会方式と見做していいのかなとも思いました。
そう考えると、「ファイ・ブレイン」は製作委員会方式なのに3期まで作られるという異例の作品と言えるのかも。
(とコメントでは書いたのですが、やはり「ファイ・ブレイン」等は「製作委員会方式では無い」と見るのが妥当っぽいです。)

うん。分からないので、あまり深く言及する事は避けますw

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