意図的に話題作を作る手っ取り早い方法の考察

この記事は

「進撃の巨人」を題材として書いた記事です。
所詮は妄想なんだよ。

はじめに

最初に提示しておきたいのが、話題作は必ずしも「人気作」…換言すれば「傑作」には成り得ないという事でしょうか。
一過性の話題のみで終わってしまう作品もあるし、当然そのまま人気が定着し多くの人から傑作と評される作品だってある。
人気作を作る方法では無いという事だけ先に書かせて下さい。
それと、あくまでも僕の個人的な意見であって、絶対では無い事も併記しておきます。

人気作に上り詰める方法の1つに、話題作になるというのがあると考えております。
ネットで話題になる。
漫画読みや評論家の間で話題になる。
書店員の間で話題になる。
とかく、話題を作れれば、多くの人の関心を呼びこめて、人気作を生みやすくする。

そんな話題作って、意図的に生み出す事も可能なんじゃないかなと云う妄想。

「進撃の巨人」のケースから考えていく

先日別の記事で頂いた「進撃の巨人の作者もジャンプ編集部に落とされた」という旨のコメントを読んで、この件について少しだけ調べてみました。
諫山先生ご自身のブログに簡単ではありますが書かれてました。

参照:「現在進行中の黒歴史」

一部抜粋させて頂きます。
中略してますので、出来るだけ上記リンク先の原文をお読みください。

子供のころから読んでるジャンプに固執せずマガジンを目指したのは、その二回の持込みで僕の力不足以外の欠点に「漫画」じゃなくて「ジャンプ」を持って来いって言われたことです、
当然かもしれませんが編集さんは「少年ジャンプ」と言うジャンルを求めていたからです
(中略)
自分の描きたい物は対象年齢とか考えずにやりたかったんで本当….好きに描かしてもらえるマガジンの雑誌でよかったって感じです、(汗)マ、マガジン最高!!(びびりつつ)

諫山先生がジャンプ編集部にどんな作品を持ち込まれたのかは、これだけでは分かりません。
「進撃の巨人」の読切版かもしれませんし、全く別の作品かもしれません。
ただ、漫画の方向性は「進撃の巨人」と一緒だったのではという事が窺えます。
「自分の描きたい物は対象年齢とか考えずにやりたかった」という言葉が全てを物語っていますしね。

んで、これをして多分「ジャンプは勿体ない事をした」という論調が大勢なんじゃないでしょうか。
むざむざ大ヒット作を逃したという理由で。
僕も同じような感想ですね。
勿体ない事をしたんじゃないかなって。

諫山先生のようなケースは、特段珍しいお話では無いんですよね。
最初に持ち込んだ編集部ではダメでも、別のとこで評価されて連載。
読者の人気も博したというのは良くあるお話…らしいですから。
だから、「断ってしまった事」が「勿体ない」のではなくて、「週刊少年ジャンプで連載すれば確実に話題になったであろう類の作品を受け入れる土壌が無い(かもしれない)事」が「勿体ない」と感じたんです。

集団の中で目立たせる事が話題作への近道

「別冊少年マガジン」と「週刊少年ジャンプ」を比較して、部数が違うから「週刊少年ジャンプ」の方が話題になっていた…とか言いたい訳では無くて。
(注目が集まりやすい事は、話題になりやすいというのは事実ではあるでしょうけれど)
「進撃の巨人」は少年誌であれば、どこで連載していても話題になっていたと思います。
ただ、イメージ的には「少年マガジン」や「少年チャンピオン」よりかは、「少年ジャンプ」や「少年サンデー」の方がより話題になりやすかった気もするんですね。
論拠は各雑誌の連載ラインナップです。

「少年マガジン」や「少年チャンピオン」は、やや年齢層が高めなのか、連載陣の内容もそれ相応です。
残虐描写、暴力描写、えっちい描写など。少しだけ過激に描かれている事が多い。
「少年ジャンプ」や「少年サンデー」も、まあ、そんなに大差ないですけれど、やや抑えられている印象が強いんです。
勿論「DEATH NOTE」等一部の作品は除きますけれども。

先に結論から述べます。
話題作って、集団の中で目立たせる事が早道なんじゃないかなと思っているんです。
僕のこの意見は、多くの人が似た考えを持っていらっしゃるんではないかな。

先程名前を出した「DEATH NOTE」ですけれど、この漫画が人気作になったのは内容や絵が純粋に多くの人の心を射抜いたからです。
その前に「話題作」になったのは、「週刊少年ジャンプ」に連載されていたからですよね。
「週刊少年ジャンプ」らしからぬ「人殺しを主役に据えた作品」だったから話題になった。

「週刊少年ジャンプ」らしい王道漫画である「ONE PIECE」とか「NARUTO」とかとは全く異なる作風であり、異端であった。異色作であった。斬新であった。
そこで注目を集め、口コミで話題が広がり、「話題作」となった。
口コミの方法は、昔ながら学校や職場等リアルな人間関係によるモノから、現代的にネットを媒介としたモノ。
更には「このマンガがスゴイ!」の影響。近年は特にこの影響が大きいですよね。
「デスノ」も「進撃の巨人」も当然のように選ばれています。

今連載中の「暗殺教室」も似たようなモノなんではないかなと思っているんです。
「暗殺の方法を学生に教える学園モノ」というアイディアは非常に斬新ですし、やはり「週刊少年ジャンプ」らしくない。
そこで注目を集めて、話題になり、今があるんじゃないのかなって。
人気が定着したのは、最初のアイディアを捏ねただけの浅い作品では無かったからではないでしょうか。

昔で言えば「金田一少年の事件簿」も同じでしょうか。
当時は漫画でオリジナルの本格ミステリというものが無かった時代。
それを取り入れ、しかも週刊連載。
内容も伴って話題作から人気作に上り詰めた作品の一例と言えそうです。

「進撃の巨人」の話に戻します。
何といっても目を引くのは、残虐性ですね。
これはインパクトがデカい。
よく分からない謎の巨人に人間があっさりと食べられていく。
肉を裂かれ、骨を砕かれ、ボリボリと嫌な音を立てて咀嚼される。
ただ単に「人が殺される」のではなく、ずっと凄惨で悲惨な殺され方をされる。
これを「少年誌」でやってるんです。
そりゃ目立ちますよね。
そういった作品を好む人たちは確実に存在しますし、先ずそういった人たちが注目する。

で、次に内容や絵に惹かれていくわけです。
絵は、絵の描けない僕が言うのも何ですが、決して上手い方では無いと感じました。
ただ作風に滅茶苦茶合ってるし、なによりも迫力ある「動きのある絵」が最高に凄い。
関節とか考慮しちゃうと、人間がそんな風なポーズは取れないとしても、漫画だから関係ないんですよね。
手足がぐにゃーっと伸びているように見える絵が、キャラクターにスピード感と躍動感をつけていて、アクションの絵が凄く迫力あるなと感じました。
1話冒頭の下のページでそう感じたんです。

余談ですがこの絵を見て、どこか「ネウロ」や「暗殺教室」の松井先生っぽいなと感じました。
松井先生も独特の迫力ある絵を描かれる方という認識なんですよね。

内容は、謎で読者の興味を引っ張るというミステリ仕立て。
巨人は何者なのか。
何が目的で、どこから来たのか。
巻を重ねる毎に次々と謎が生まれ、深まり、そして解かれていく。
変に引っ張る訳でも無く、小気味よく展開する物語は、グロイ作品が苦手でも引き込まれる魅力がありました。

残虐性と言う点に於いて、目立ち注目をかき集める。
後に内容や絵が評価されて、人気作となっていった。
全ての人がこの過程で作品に触れて、好きになったとは言いません。
最初から絵に惹かれた人だっているでしょうし、話題になる前から好きだった人だっていっぱいいることでしょう。
(そもそも、話題になる前から作品を好きだという人達が居ないと話題に成り難いですしね。)
それでも、集団の中で目立つ事って大事な気がしますね。

ところで、集団というのは、ここでは「少年誌」ということです。
これが「青年誌」になると話は変わってくると思うんですね。
例えば「ヤングマガジン」で「進撃の巨人」が連載されていたならば…。
例えば「ヤングジャンプ」で「DEATH NOTE」が連載されていたならば…。
どちらも人気作になっていた可能性は高いですけれど、話題作にはなっていなかった可能性が高い気がするんです。
人気作になるんならば、話題作になってなくても問題無いんですけれどねw

そうそう。
「進撃の巨人」がどういった経緯で今の人気を獲得したのかは、実は僕は知りません。
「このマンガがスゴイ!」あたりから話題になった気がしたので取り上げてみましたが、間違っている可能性が高いです。

終わりに

はじめの話に戻りますと、「進撃の巨人」を「週刊少年ジャンプで連載すれば確実に話題になったであろう類の作品」と書きました。
これ、1個だけ条件があって、「ジャンプ色に染めない事」ですね。
多少ならば

「少年ジャンプ」と言うジャンル

に寄せても問題は無かったかと思うんですけれど、大きく変えていたら今ほどの人気は得られてなかったでしょうね。
“今のままで連載していたら”、今の「週刊少年ジャンプ」の色の”補色”的な「進撃の巨人」は、滅茶苦茶目立って、あっという間に話題作になっていた気がします。

各雑誌の色とは違う作品を敢えて載せるコト。
本来の読者層とは違った作風・表現を多用している作品を採用するコト。

これらはてっとり早く目立つ要素になり、目立てば、話題に上る可能性もグッと高まる。
話題性がつけば、そのまま人気作に化ける確率が高まる。

色を守る事も大事だと思うんですけれど、冒険する事って必要なんじゃないかな…。
「進撃の巨人」の件だけで言えば、「少年誌で連載する事」を決めた「別冊少年マガジン」の”冒険”は「マガジン最高!!」と評されるに値する英断だったのかもですね。

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