「進撃の巨人」最終34巻まで読み終えての感想

この記事は

「進撃の巨人」の感想です。
ネタバレあります。

浅い読者

さて、初めに予防線を張らせていただくと、僕は浅い読者です。
浅すぎると言ってもいい。
割との初期の頃、初めて読んで、「読後ここまで鬱な気分になる漫画は初めてだ」ってくらいに嫌な気分になって、以降読んでいませんでした。
伏線とか謎とか気にはなっていたんですけれど、それ以上に残虐シーンに耐え切れなかったんですよね。

転機は去年。
いよいよ完結するぞと分かり、世間的にメッチャ売れた大ヒット漫画に目を通しておかないのは、それはそれで勿体ないなと。
電子書籍に既刊を大人買いして、読み進めました。

不思議と昔感じた「残虐さ」はあまり感じず。
淡々と読み進められました。

そんな感じで、「全く読み込んでもいないし、特別楽しんで読んでいたわけでも無い読者」の感想です。
肩の力を抜いて先へお進みください。

究極のエゴイスト・エレン

「DRAGON BALL」の孫悟空は正義のヒーローなのか。
筋斗雲に乗れるほど純粋で、とても優しい。
仲間想いでもあり、地球の為に何度も立ち上がった。

これは孫悟空と言うキャラクターの真実であり、一面です。

けれど、正義のヒーローなのかと問われれば、僕は否と答えます。

彼が人類を、地球を、宇宙すら救い続けたのは、結果論に過ぎません。
唯一ヒーロー然として戦っていたのは純粋ブウとの闘いのみと言ってもいい。
基本的には、「強い奴と戦いたいから」。
これが全てであったと思うのです。

強い奴が、何故なのか悪い奴らが多かったので、結果としてヒーローのように見えるだけなのです。
強い奴と戦いたくて、周りが見えなくなっちゃうという少し怖いキャラなんですよね。
ヒーロー然として見えるのは、「人を傷つけない」「モノを壊さない」という悟飯爺ちゃんの教えの賜物なのでしょう。

話を「進撃の巨人」に戻します。
個人的には、エレンって悟空と似た方向性のキャラだったんだと思ったのです。
似たというより、より尖らせたという方が適切。
悟空で言う「人を傷つけない」等のブレーキを全く持ってないのがエレン。

子供のころから狂気染みた性格をしていたエレン。
母を殺され、明確に巨人への殺意を抱き、成長と共に巨人殲滅を志す。
やがて巨人の真実を知ると、かつての仲間達すら敵に回して、世界を滅ぼそうとする「人類の敵」になって。
何故主人公がラスボスになったのかと読者(僕)が振り回される中、最終決戦が始まり、彼は文字通り「人類の敵」としてミカサとアルミンに討ち取られる。

ダークヒーローとかヴィランが主人公って訳でも無いのに、主人公がラスボスを張る。
とんでもない型破りな主人公像に思えるものの、最終回で明かされた真実によって、見えてきた景色が反転するという構成。
反転は言い過ぎか。
数えきれないくらいの人間を殺戮したのは事実だし、そこに正義感も何もないのだから。

何の罪もない子供たちが無惨に踏み殺されるシーンは、エレンの殺戮にはなんの正義も無いことの証左にもなっているんです。
正義なんて色々と立場によって変わってくるけれど、どう立ち位置を変えても「正義の行い」ではない。
ただの蹂躙であり、ただの殺人行為。

仲間を守りたい。
巨人を駆逐したい。
そういった究極のエゴであって、目的のためには、仲間以外の人類がどうなろうと構わないという恐ろしいまでのエゴイスト。

不思議だよね。
普通であれば、ただただムカつくだけの主人公像なのに、そこまでエレンに対して悪感情を抱けないというのは。

やはり巨人そのものが醜悪な化物であるという事実があるからなのかな。
被害者であり、加害者でもある化物。
色々な意味で、この世から消えてなくなって欲しいと感じる巨人。
それがエレンが悪役を演じることによって、この世から消滅したわけで。

他の方法は無かったのだと言われると、エレンのやったことにも一定の理解(?)が出来るのよね。
彼自身も醜悪な巨人システムに取り込まれた被害者と言う見方も出来るというのも、彼をそこまで悪く思えない理由なのかな。

終わりに

世界の全てと認識させられた世界。
それが箱庭の世界だと分かり、その外に驚きの真実があったという中盤の構成には、驚かされました。

また、主人公の次に重要なキャラかと思っていた超大型巨人の扱いにも驚かされたなぁ。
もっとメインに近いキャラが正体なのかと当たりを付けていたら、地味目なキャラだったし、早々に死ぬし。

おまけ漫画で「予定調和」的な自虐をしてましたけれど、とんでもない。
考察勢にとっては予想通りな事も多かったのかもですが、僕にとっては予想の斜めを行く展開の連続でした。

政治的だったり、思想的だったりと、少年漫画の域を超えた難しさもあり、ちょっと退屈を覚えたりもしました。
また、残虐シーンの多さもあって、決して好みの作風では無かったのですが、最後まで読み切らせたパワーはありましたね。
途中で読むのを辞めようという選択肢が自然と湧かなかった。

総じて、なんとも形容しがたい作品だったかな。
良かった、面白かったと賞賛したいわけでも無く。
かといって、つまらなかった、最低だったとも言えない。
玉虫色に「普通」ともまた違う。

好みでは無かったのは確かですけれど、読んで損をしたとも言えない。
不思議な感想を抱いた作品でした。

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