「天体のメソッド」のループの意味合いを考察する

この記事は

「天体のメソッド」の考察記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

ラスト2話で唐突に描かれた時間の逆行。
天文台でノエルと涙のお別れをしていた次の瞬間には、時間が冬から夏に逆戻り。
乃々香が霧弥湖町に引っ越してくる日になってしまいました。

12話はこのあまりにも突然の始まり方で、正直面食らいました。
え?何?何が起こってるの?と。
しかも、乃々香以外はノエルの事も円盤の事も記憶に無く、それらが無かった事になっている。
それもそのはずで、11話まで描かれていた世界とは違う「円盤の現れなかった世界」になっていたのですからね。

結局何故こうなったのかは最終回でも語られずでしたが、しかし、よくよく考えてみると納得出来る展開でもあったのですよね。
時間の逆行・別世界への移行は何故必要だったのか。
持論を書いてみます。

「天体のメソッド」のループの意味合い

乃々香がノエルに願ったお願いは、「みんなでいつまでもニッコリできる」事でした。
然しながら、ノエルが現れたことで5人の間に亀裂が生じてしまったのですから皮肉です。
柚季を起点とした2つの亀裂ですね。

円盤(ノエル)が現れる前までは仲の良かった柚季と湊太の兄妹は、円盤出現後事あるごとに喧嘩をする犬猿の仲に。
更には柚季は円盤を目の敵にして、円盤を呼ぼうと提案した乃々香を憎むまでになっていました。

この2つの溝は、ノエルがちょこちょこと歩き回って解消。
円盤出現以前のように、兄妹仲は修復し、乃々香と柚季も元通り友達関係に戻りました。

時間が巻き戻り、「円盤(ノエル)が来なかった世界線」(世界線って便利な言葉ですよね)に移行したのは、この2つの亀裂を「最初から存在させない為」でしょうね。
ノエルの”せい”で出来てしまった「乃々香のお願いに背く事象」を無かった事にしている。

さて、ノエルにはどうしようもなかった亀裂もありました。
乃々香と汐音の間に生じた溝です。
何も告げずに町を引っ越してしまった乃々香を恨む汐音は、「円盤(ノエル)が来なかった世界線」に移行する事では解決出来ません。
ノエルが2人の仲を取り持ったのは事実で、「円盤(ノエル)が来た世界線」の”記憶”が必要不可欠なんです。

7年間汐音は誰よりも乃々香を想っていました。
柚季ら3人が忘れていた乃々香にいち早く気づいていたのがその証ですよね。
だからこそ、何よりも深い亀裂を生んでしまったのですが、それもノエルが頑張って直してくれました。
ノエルの”お陰”で仲良しさんに戻れたんです。

汐音に「円盤(ノエル)が来た世界線」の”記憶”があったのも、乃々香のお願いを叶える上では無くてはならないものであったのだと頷けます。
乃々香にも記憶が残った理由としては、少々苦しいのですが、ノエルのお願い主だったからかなと。
ざっくり言えば主人公補正でしょうか。
汐音が乃々香に抱いていたのと同様に、乃々香が誰よりもノエルを想っていたから消える事は無かったと解釈する方が綺麗かもしれませんね。

いつも的確な意見を下さるムメイサさんに感謝感謝で、追記です。
母を亡くした辛い記憶と共に封印していた(意識して忘れようとしていた)4人との思い出を解きほぐしたこともノエルの重要なお仕事でした。
この際の記憶を持っていないと乃々香自身が4人とニッコリな関係になれませんでしたね。
だから、乃々香にも「円盤(ノエル)が来た世界線」の”記憶”は必須だったと。
大切な事を忘れてしまっていたのを反省ですね。

乃々香、柚季、こはる、汐音、湊太。
乃々香のお願いはこの5人の仲がいつまでも続くこと。
「円盤(ノエル)が来なかった世界線」で「円盤(ノエル)が来た世界線」の”記憶”を乃々香と汐音だけが持っている事で漸く叶うお願いなんですよね。

まとめ

ループ(世界線の移行)で、お願いが叶う為この展開には納得出来ました。
「ノエルが居なくなる」という意味もきちんと含んでいますしね。

ただ、ノエルにも予想できなかっただろうことは、乃々香のお願いの中の「みんな」にノエル自身が含まれてしまった事でしょうか。
乃々香にとってノエルはそれ程掛け替えのない存在になって、他の4人と同様の友達になっていた。

改めて「みんなでニッコリ」というお願いをして円盤を呼ぶ事で、ノエルは戻ってきた。
乃々香、柚季、こはる、汐音、湊太、ノエル。
6人でニッコリな世界になるという、とんでもなくハッピーなエンド。
ノエルが出現する事で願いが成就する為、今度はノエルが消える事はありません。

ハッピーエンドのお手本のような素晴らしい物語でありました。
間違いなく良作アニメだったと思いますね。

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