コミカライズ進化論〜原作の魅力を多角的に引き出す作品達〜

この記事は

コミカライズに関する記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

御大層な記事名を付けてしまいましたが、名前負けしておりますw
大した中身はいつも通りありません。

「ROBOTICS;NOTES」

以前も「あの花」コミックスの時にコミカライズの話を書きましたが、今回もコミカライズについて。
先日ふら〜っと近所の書店に寄り、所在無げにボ〜っと漫画雑誌のコーナーを眺めてました。
特に買うものも無かったので、本当にただただ眺めていただけなのですが…。
目に飛び込んでくるのは「Robotics;Notes」の絵・絵・絵!!!
同じ絵ではありません。みんな違う絵。違う漫画雑誌の別々の漫画の絵。

一体いくつの雑誌で連載してるんだろうかと驚きました。

調べてみて納得。
なんとwebコミックを含めて全6誌で連載しているようです。
しかも全て違う出版社。
いや〜凄い。
なんていうか、こういうのってコミカライズだから可能な手法なんですよね。
しかも原作がゲームだから、よりやりやすい。
というのも、違った視点・違ったルートを描けて、題材が同じでも中身で差がつけられ易いから。

実際この「Robotics;Notes」もそうなってました。
嬉しい事に「ウルトラジャンプ」、「少年エース」以外の4本はWEBで試し読み出来たのです。
全部ちょろっと紹介。(アニメでしか今作を知らない為、深い事は書けないです。特にストーリーに関しては)
作家さんは敬称略で書きます。
情報元は全てアニメ版公式サイトより

▼「ROBOTICS;NOTES Phantom Snow」
[漫 画]郷
[掲載日]ファミ通コミッククリア公式サイトにて毎月第4週金曜日(WEBコミック)
[サイト]http://www.famitsu.com/comic_clear/se_robotics/

愛理をメインとしたお話っぽいです。
現在4話まで公開中。
海翔を主人公にして、ミステリホラー調で展開している感じ。
原作の展開を知らないので、これが原作準拠かどうかの判断は出来ないですが。
個人的な印象では、作画は可もなく不可もなくといった感じ。

▼「ROBOTICS;NOTES Side Junna:小さな夏のものがたり」
[漫 画]NB
[掲載誌]月刊少年エース
[サイト]11月11日現在試し読み無し

大徳淳和を主人公かメインヒロインに据えた物語ぽいですね。
それ以上の言及は出来ないです…。

▼「ROBOTICS;NOTES Dream Seeker」
[漫 画]知乃綴
[掲載誌]月刊少年ガンガン
[サイト]http://gangan.square-enix.co.jp/introduction/roboticsnotes/

2話まで試し読みできます。
本編メインヒロインの瀬ノ宮あき穂視点(つまり彼女を主人公として)で描かれるシリーズ。
物語はアニメ版と同じ感じなので、原作準拠なのかもしれません。
作画は試し読みした中で一番好き。少年漫画風の作画なので、そういうのが好きならば嵌ると思います。

▼「ROBOTICS;NOTES Revival Legacy」
[漫 画]シヒラ竜也
[掲載誌]ウルトラジャンプ
[サイト]11月11日現在試し読み無し

「〔神代フラウ〕ルートのコミカライズ」と紹介されているので、そういう事なのだと思います。
作画担当のシヒラ先生はベテランですので、間違いなく一番上手い(これも主観ですが)んじゃないかなと。
というか、イラストからして上手いw

▼「ROBOTICS;NOTES」
[漫 画]浅川圭司
[掲載誌]月刊コミックブレイド
[サイト]http://comic.mag-garden.co.jp/blade/784.html

副題無しから分かるように、海翔を主人公にした正伝。
原作・アニメ版の純正コミカライズといった位置づけなのかも。
って、よくよくサイト見たら「ゲーム発売前に最速コミカライズ」って書かれてたw
原作より先だったとは。

▼「ROBOTICS;NOTES -Side;日高昴-」
[漫 画]空十雲
[掲載誌]月刊コミックアライブ
[サイト]http://www.mediafactory.co.jp/comic-alive/index.php

第1話だけ読めます。
日高昴視点で展開される物語。一番笑えたw
作画担当の空十雲(そらとくも)先生は、なんか個人的に懐かしかったですw
「マガジンZ」以来の拝見でした。

全然大した事書いてないのに、無駄に長くなりました。
基本的なお話は被っていても、主軸とするストーリーや重点を置くキャラを変える事で、全て個性を出しています。

原作を多角的に描き出しているコミカライズ達

「ROBOTICS;NOTES」並に驚いたのは、「パパのいうことを聞きなさい!」ですね。
集英社のスーパーダッシュ文庫のラノベを原作とする同作は、同じく集英社6誌で一斉連載。
「ジャンプSQ.」のコミカライズを筆頭にして、「週刊ヤングジャンプ」や「りぼん」など幅広く展開されてました。
現在半分以上終わってしまったみたいですが…まだ半年ちょいなのに早いな〜…。

これも主人公を変えて、色々な側面から作品を再構成していたコミカライズと言えるんじゃないかな。
しかも内容に振り幅がデカい。
「SQ.」版は(恐らく)原作準拠。適度なお色気シーン有りでしたが、「YJ」版は本気のエロ描写有りw
かと思ったら、少女漫画誌の「りぼん」でも連載していたという。
原作の懐の深さが垣間見える気がします。

このように多くの作品を一斉連載という形ではありませんが、「とある魔術の禁書目録」も非常に特徴的なシリーズ。
これも作品の特性を良く活かしたコミカライズ展開と言えそうです。
「魔術」と「科学」の2つの要素を含んだ原作の持ち味を活かしている。

原作とは無関係のスクエニ出版の「少年ガンガン」で本編コミカライズを連載。
インデックスがヒロインなので、こっちは基本「魔術」サイドという印象。(今の所は…)
一方「月刊コミック電撃大王」は、「科学」サイドに振っています。
本編ヒロインの御坂美琴を主人公として、「禁書」とは全く違う作品になってます。

「禁書」コミカライズ2本で面白いのは、「色々な側面から作品を再構成」が作品内容からも明らかな事ですね。
本編を別視点(美琴視点)で描いた「欠陥電気(レディオノイズ編)」。
本編の裏側で起こった事件を描いている「大覇星祭編」。
等々。
原作と密接にリンクした物語を原作を知らなくても楽しめるように作っている「超電磁砲」という漫画そのものが、上記特色を濃密に表現しているように思うのですね。

これは、原作者の鎌池先生が積極的に関わっているからなんでしょうね。
漫画に於ける「原作」表記の意味って主に2種類あると思うのですね。

「名前貸し」の場合が、ケース1。
漫画自体の制作には基本的に関わらず、「作品」や「名前」を”貸している”ケースです。
例えば。「仮面ライダーSPIRITS」等。
石ノ森章太郎先生のように原作者が「コミカライズ制作に参加できない」と、どうしたってこうなります。
存命かつ制作に参加出来る場合でも、コミカライズ作品に於ける「原作者」は、基本こっちですね。

ケース2としては、漫画そのものの原作者として機能している場合。
作画以外の全て(又は殆ど)を書いている人。
これは更に2つに分かれるのかな。
漫画ではネームが最も重要で、作るのに時間を特に要するという意見もあるらしいです。
実際は漫画を描いた事の無い自分には分かりかねる事ですが…。
これを事実とすると、その重要なネームを描く人(描ける人)と描かない人がいるようです。

ネームまで描く原作者(描いても作画担当者に変えられる事がある事はご愛嬌)と原稿(脚本)で上げる原作者。
確か梶原一騎先生が原稿用紙に書かれるタイプでしたっけ?脚本で原作を上げる珍しいタイプの作家だったというのを聞いたことがあったような。
編集者出身の天樹先生も恐らく同じタイプ。
で、「超電磁砲」に於ける鎌池先生もこれなんでしょうね。
ケース1の多いコミカライズに於いて、これは珍しいケースな気がします。

でも、だからこそ原作の魅力を多角的に描くという事が可能になっているかもですね。

コミカライズは進化している

コミカライズは昔からあります。
僕自身起源は知らないのですが、記憶を遡るとゲームのコミカライズが僕の知る中では最も古い。
「マリオ」とか「ロックマン」とか。
ファミコン時代のゲーム作品が、幼年誌や4コマ漫画などを中心に多くコミカライズされてました。
当時から出版社の垣根を越え、又は、同一出版社の複数の雑誌で、1つの作品がコミカライズされるという事はままありました。

でも、そのコミカライズ間での「差」は、あまり感じられませんでした。
せいぜいがギャグに振るか”原作”準拠で描くか。それ位かな。
作品のジャンルを変えれば、そりゃ「全く違った作品」に映りますけれど、それはせずに…。
原作と同じジャンル(原作がバトルものならバトル漫画。ギャグならギャグ漫画…等)のまま、原作の様々な魅力を多角的に描き出している。
そういったコミカライズが近年増えてきた気がします。

これってとっても良い事だと感じます。
コミカライズの目的は「原作の宣伝」であることは間違いないです。
原作準拠のコミカライズはもとより、原作の魅力を違う角度から描き出しているコミカライズは、原作への見返りを期待できる…と思っていて。
「パパ聞き」のように色々な層(青年誌の読者から少女漫画誌の読者まで幅広く)に訴求出来ることもありますし。
また、視点を変える事で「Aの視点(での物語)では面白いと思えなかったけれど、Bの視点では(Bに感情移入出来て)面白かった」等有り得そうですしね。
この場合、「Aの視点でのコミカライズ」だけでは得られなかった読者が原作に入る可能性を齎すんじゃないかな。

更には、コミカライズ個別の読者をも生み出せる。
コミカライズってどうしても「原作ありき」の部分があって、「漫画」として低く見られがちな部分ってある気がします。
僕自身昔っから、少々そういう目で見てしまっているから、そう感じているだけかもですが…。
宣伝の役目が終わると打ち切られたり、作画が残念な事が多かったりと。
マイナスの面を見続けていたから。
これはコミカライズでは無い一般の漫画にも当て嵌まる事なので、やっぱり偏見だったとは思います。

兎も角。「超電磁砲」は漫画単独としての魅力が高くて、「ただのコミカライズ」の枠に収まっていないと感じます。

さてさて。
「ROBOTICS;NOTES」はどうなるでしょう?
新人作家からベテラン作家まで取り揃え、原作を様々な視点で描き出しているようです。
「パパ聞き」のように色々な層に訴求は出来そうです。
WEBコミック、青年誌(ウルトラジャンプ)、少年誌(ガンガン等)と「読者層が異なる」様々な雑誌に展開してますから。

「超電磁砲」のように原作と切り離して「名作」と呼べる作品が出て来るかどうか。
これは個人の価値観によって異なる事ですし、まだまだ始まったばかりのプロジェクト故、何とも言えないですが…。
出て来る可能性はありますよね。

どっちも叶えた時。
コミカライズはもっともっと注目を浴び、増えていくのかもしれませんね。

NO IMAGE
最新情報をチェックしよう!