初代会長から考える作品の構造とちょっと歪な現状 「げんしけん 二代目」考察

この記事は

「げんしけん 二代目」の記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

「げんしけん 二代目」のアニメ放送が迫りつつあります。
2期まで続いた「初代」も原作の途中までしか描けてなかった為、また、声優陣一新という事もあって「二代目」と言いつつ、ここから新しい作品が始まるという認識で宜しいのかなと思っております。
さて。
今回は原作「げんしけん」、「げんしけん 二代目」について考えてみました。
以前も今作についての記事は書きましたので、今回で2度目かな。

初代会長から考える作品の構造

「げんしけん」こと「現代視覚文化研究会」の初代会長。
名前は…あるんかな?作中では出て来なかった会長。
常に影が薄く、謎が多く、そして唐突に引退・卒業していった人物です。

僕はこのキャラが作品を読み解く上で非常に重要な人物なのではないかなと思っています。
作品内世界と僕ら読者の橋渡し的な人物…とでもいうのかな。

会長。本当に謎多き人物です。
4年制という大学のシステムに於いて、最低16年は在学しているという有り得ない経歴を持っている可能性があったり。
咲らを盗撮・盗聴しているような素振りを見せては、「人間行動学に関する卒業制作に向けてのデータ収集」をしていたり。
何が目的で、何の為に大学に居たのか分からない、本当に謎だらけのキャラクターでしたが、「人間行動学」という点が興味深く思うんです。

そもそも「現代視覚文化研究会」とは

漫画、アニメ、ライトノベル、コンピュータゲーム、そしてそれらを元にした造形(フィギュア、カプセルトイ、プラモデル等)、コスプレ、同人誌二次創作といったおたくカルチャー全てを対象とする総合的サークル

としており、様々なオタクが集まるような仕組みを持ったサークルとなっています。

オタクと一口に言っても、趣味嗜好によって多岐に亘りますからね。
アニメオタクが漫画オタクとは限らないように、人それぞれ何が好きかは分かれます。
そういった多種多様なオタク達を集め、観察する為に初代会長の手によって創設されたサークルが「現視研」なのではないかなという考えに至りました。
オタク文化を研究するのではなく、オタク文化を好むオタクを観察・研究するサークル。

こういった切り口で作品を見直すと、初代会長の影が極端に薄かったのも、早々に居なくなったのも腑に落ちます。
そもそも「オタク文化を研究するのではなく、オタク文化を好むオタクを観察・研究する」というのは、僕ら読者に近い視点です。
少なくとも僕がそうでした。
彼らオタク達の青春の日々を楽しんでいるし、様々なオタク像を興味深く眺めているんです。

そう言った意味では、会長は僕らに最も近いキャラに思えて来るし、逆に作中で最も不要な人物にも思える。
咲という「オタクでは無い一般人」を「現視研」に入会させた時点で、初代会長の役割も終えたのかなと。

読者に最も近い視点を持ち、必要最低限の(だけれど重要な)仕事だけをして、こつ然と姿を消した。
「こういう見方で、この作品を楽しんでください」という「読み方の一例」をさり気無く提示して。
自然と会長の研究テーマであった人間行動学は、一部の読者に引き継がれた。

「げんしけん」という作品は、多種多様なオタクを眺め、楽しむという構造をしていると思うのです。

「女性オタク」≠「腐女子」

「初代」の主人公は男である笹原。
だからか、基本的には男オタクに焦点が当てられていました。
美少女フィギュア、18禁同人誌、エロゲー等々。
男オタク中心と思われるものを好きなキャラが大半を占めていました。

「二代目」では荻上に主人公の座がバトンタッチ。
女子である荻上が主人公になったからか、サークル内の陣容も逆転。
女性オタク中心となりました。

そんな中、「二代目」では「男の娘」が主要キャラで登場。
定義自体は結構昔からあった「男の娘」ですが、流行(?)したのは、ここ数年のうち。
「新しいオタク像」と呼んでも問題は無いかもしれません。
「様々なオタクを嗜む」本作に於いて、登場するのが自然に思えます。

そんな「男の娘」である波戸は、更に「腐男子」という属性も持つハイスペックなキャラです。
男なのに、男同士の恋愛を妄想し楽しむという趣味を有しています。
そう。
彼を筆頭に、「二代目」はBL好きのオタクが多いんですよね。
新キャラ3人ともがBL好きの「腐女子」or「腐男子」。
会長・荻上を筆頭に、皆が皆BL好きという事になっています。

大野の名言「ホモが嫌いな女子なんていません!!!!」を体現しているようです。
でも、何かオカシイ。
ちょいと歪に見える。
様々なオタクを登場させている本作に、抜け落ちている部分がある気がするんです。

「腐女子」というのは、女性のオタク全般を指す言葉ではありません。
大野の言葉を否定するようですが、「ホモが嫌いな女子」だって居る。
そういう女性オタクだっていますよね。

なんで、そういうキャラが出てこないんでしょう。

メインは勿論、サブに至るまで、BL嫌いの女性オタクって出てきた記憶がありません。
強いて言えば登場当時の荻上でしょうか。
「ホモ嫌い」を公言するキャラを演じていました。
ですが、他に目立ったキャラが居ない。
別に「BLを否定する」要素を持つ必要は無いんですが、「BLを好きでは無い女性オタク」って出てこないんでしょうかね。
漫画内のキャラクターとして立たせにくいのでしょうか。

正直現状では「女性オタク」=「腐女子」という感じになっています。
これが悪いという訳ではありませんが、正確では無いですよね。

この等式を作品内で否定する為にも、また、物語をもっともっと盛り上げるという意味でも「腐女子ではない女性オタク」の新キャラが出て来て欲しいな〜と思います。

まとめ

ただ、「BL好きでは無い女性オタク」って難しそうです。
「BL嫌い」にすると、初期荻上に被るし(演技では無く本心なら「被る」とは言わないですが)、「BL嫌いでは無いけれど、好きでは無い」だけなら無害な立たせにくいキャラになりそうですし(汗
ううううん。
ま、まあ、ここはひとつ「斑目好きを公言する」という属性も足してみたら…とかとかw
触発された恵子、スー、そんで波戸が「斑目争奪戦」を繰り広げて面白い事になりそうで。

それはさておき、「BL好きでは無い女性キャラ」が出てきても不思議では無いと思うんですよね。
折角女性オタクに焦点を当てられる内容なんですから。
「短期連載」から「本格連載」に変わり、更にアニメ化まで果たした「二代目」。
この先もまだまだ連載は続いて下さるでしょうし(願望)、来たるべく新キャラには、是非こういうキャラが出て来て欲しいですね。

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