「どんな面白い連載にもつまらない回はある。」という「H2」の名言から考える掲載誌の発行間隔が漫画に及ぼす影響の考察

この記事は

週刊誌と月刊誌掲載漫画の違いに関する記事です。
今月あと2〜3回位しか更新できないというどうでもいい余談。(↓の本論自体も十分余談)

はじめに

「H2」の中のたった1コマを探してたら、ふと我に帰ったら丁寧に読み返していたというね…。
これだから名作漫画ってやつは。

という事で、やっと見つけた1コマ。
携帯でパシャッとな。(写真の撮り方下手すぎ&紫過ぎる)

古賀監督「どんな面白い連載にもつまらない回はある。」

妙に頭にこびりついて離れない一言。
あだち先生お馴染みの自虐染みたギャグ的な台詞の1つと捉えているのですけれど。
それだけで終わらせずに、改めてこの台詞の意味合いを考えてみました。

と言いましても「そりゃつまらない回はあるよね」という話では無く、ちょっと方向性を変えたアプローチです。
ストーリー漫画に於ける週刊連載と月刊連載時の違いについてです。

週刊連載漫画と月刊少年漫画。より長期化しやすいのは?

週刊連載漫画と月刊少年漫画。
どちらの方が長期連載作が多いのでしょう?
どの程度以上を「長期」と呼ぶのか定義もありませんし、そもそも週刊誌連載作と月刊誌連載作の連載継続年数を比較するのは野暮というもの。
ここは1つの物差しとしてコミックスの巻数「40巻以上」を長期連載と見做してみます。
「DRAGON BALL」の42巻を「物凄く多い」と子供心に感じて以来、40巻というのが僕の中の1つの指針になってしまっているものでして(汗

そんな訳で、週刊誌連載作から40巻以上のストーリー漫画というと…。
一杯あり過ぎて割愛(笑
では、月刊誌連載はどうか?
氷山の一角だとは思いますが、挙げてみましょう。

「海皇紀」45巻
「風光る〜甲子園〜」44巻
「DEAR BOYS」シリーズ 69巻
「鉄拳チンミ」シリーズ 65巻
「なんと孫六」81巻
「龍狼伝」シリーズ 51巻
「Dreams」65巻
「イレブン」43巻
「かっとび一斗」シリーズ 72巻
「わたるがぴゅん!」58巻
「スーパーマリオくん」47巻
「ああっ女神さまっ」48巻

「月マガ」に偏ってるw
どういうことなの。
少年誌でありながらオッサン雑誌と一部で言われるだけはありますね。
月刊誌全体をざっと見渡しても、40巻以上の作品は印象通りそんなに多くはありませんでした。

雑誌数そのものが週刊誌の方が単純に多いのかもしれません。
しかしそれにしても長期連載漫画は週刊連載の方が多い気が致します。
勿論基準を下…例えば30巻くらいまで引き下げれば、その比率はまた変わってくるのかもしれませんけれども、下げれば下げるだけ週刊誌有利になる気もするんです。

非常に偏った調査ではありますが、一先ずの結論として「週刊誌連載漫画の方が長期連載になりやすい」とします。
何故なのでしょう。
僕の持論ですが、1年間の連載回数とページ数にその答えがある…と踏んでいます。

「どんな面白い連載にもつまらない回はある。」の解釈

週刊誌は1年間に大体48冊程出版されます。
「週刊少年ジャンプ」の年間発行号数がこれ位なので、他の雑誌も似たようなものとみて問題無いと思います。
休載無しと考えれば、年に48話掲載される訳です。
1話あたり19ページならば、大体コミックスにして5巻分ですね。

一方月刊誌は数えるまでも無く年間12号。
ストーリー漫画の場合、1話あたり40ページ程が一般的かな。
コミックス換算で2〜3巻分の分量が溜まる計算です。

ここで「H2」の古賀監督の言葉を思い返します。
「どんな面白い連載にもつまらない回はある。」
感じ方は人それぞれですが、「つまらない回」がどのような内容かと考えれば、「動きの無い回」を思い描く人も多いんじゃないでしょうかね。
特に展開に進展が見られず、万が一読み飛ばしても問題無いというか。
流石に言い過ぎですけれど、所謂「繋ぎの回」や「バトルだけの回」等がそれにあたるのではないかなと。

毎回毎回きっちりと進展が見られる漫画というのも、若しかしたら存在するのかもしれません。
けれど、そういう漫画…いや、小説やドラマ、アニメ等ありとあらゆる物語をひっくるめても良い。
断言しても良いです。
そんな作品、滅多に無いはずです。

どんな作品にだって「ストーリーが全く進展しない回」は存在します。
緩急は大切ですからね。
息抜きとなるような話であったり、文字通り次への布石だけを敷いた回であったり。
話を転がすための準備だけに費やした回だってあるでしょう。

そのような話を一概に「つまらない」と一括りにしたい訳ではありません。
あだち先生の言う「つまらない回」を「話の進展の無い回」と解した僕なりの答え。

これを踏まえてみると、週刊誌連載だとこういった「つまらない回」を挟む余裕が多いんですよね。
年に48話もあって、しかも1話のページ数が比較的少ない。
話を停滞させた1話19ページを構成しやすそうに思えます。

ところが月刊誌は、なかなかどうしてその余裕が少ない気がするのです。
1年でたったの12話しかありません。
しかも1話あたりのページ数が多い。
例えば1話40ページも使って話を全く進展させないとなると、そうする方が難しい。
敵ボスとの最終決戦だとか、そういう「大きな話」を描いている時は余裕で消化出来そうですけれど、そうじゃない「つまらない回」。
「次への繋ぎの為の準備」だけで40ページとなると、少々ページ数を持て余しそうではあります。
ページ数が多い分、どうしたって展開を進める必要性も生まれているのかなと。

この積み重ねが、連載の長期化の「差」となっているんじゃないかなと考えました。
月刊誌連載の方が、コミックス単位で言えば週刊誌連載よりも少なくなり易い「差」として。

こんな様な事を「ロトの紋章」シリーズを読んでいて考えちゃいました。

「ロト紋」と「紋継ぐ」

現在「ヤングガンガン」で連載中の「DRAGON QUEST列伝 ロトの紋章〜紋章を継ぐ者達へ〜」。
正直に話しますと、僕はこの漫画から一度ギブアップしています。
前作である「ロト紋」が大好きで、「ヤングガンガン」もこの漫画の為に創刊号から暫く買い続けていました。

最初は「大好きな漫画の続編」としてワクワクしながら読んでいたのですが、次第にテンションがダウン。
封印された呪文。
姿を見せないモンスター(敵)。
消えた前作の主要キャラと謎だけが増えていく展開。
スローテンポな展開と作品のゴール(目的)の見えない物語が長々と続いて、8巻くらいだったかな。
清涼剤だった可愛いユイさんが早々に逝ってしまったのもトドメとなり、読むのを止めてしまったのです。

「ロト紋」はもう本当に面白かったので、それと比較してしまったのもあります。
僅か21巻にぎゅうぎゅうに敷き詰められた大冒険の数々。
迫力あるバトルにハラハラドキドキの疾走感溢れる展開。
子供の頃から知ってる世界観・呪文・モンスターで彩られた勇者アルスの伝説に夢中になったものです。
その続きとしては、あまりにも落差があったもので…。

でも、ちょっと釈明させて下さい。
「紋継ぐ」ガチで面白いんです。
先日久々に読んでいなかった9巻以降に手を出してみたのですが、イシス編に入りどんどんとギアを上げていって、伏線の回収、敵の露見、謎の解明と。
10巻以上に亘って燻り続けた(ごめんなさい)種火にいっきに火が入った感じで。
カムイ先生のコメントを読む限り、どうも「主人公の常に先手を行く間抜けじゃない敵」をどうしても描きたかった結果が、長く敵の正体すら謎なままにされていた理由でしょうか。
なんだかこのコメントでいっきに得心が言ったというか。
「こういう話もアリだ!!」と。
確かに「先の先」を行く魔王軍の恐怖は強く感じますし、スケール感というか敵の強大さも見て取れます。
簡単には(少なくとも偶然に頼った様な)倒し方は出来なさそうだという気配がビンビンにするんです。

このような「スロースタート作品」。
最初はつまらなくても(意図的にそうしている節がある)、読み進める毎に加速度的に面白くなっていく作品も確かに存在するんですよね。

ただこれは隔週誌ならではなのかもなと。
月2回発行している「ヤングガンガン」。
1話あたりのページ数は20ページ前後と週刊と月刊の中間くらいの分量です。
どちらかといえば、週刊誌の方に寄っている。
年に24号発行しているので、「余裕」もいくらか(少なくとも月刊誌以上は)ありそうです。
もしも「紋継ぐ」が前作同様「月刊少年ガンガン」連載だったならば、もう少し展開は早かったのかもしれませんよね。

だって繰り返すようですが前作は僅か21巻で完結してるんですもの。
「紋継ぐ」はまだ大きな戦いも少ないまま19巻。巻数では前作に迫っています。
物語の密度だけで言えば、失礼ですが「紋継ぐ」とは比べ物にならないかと。
前作連載当時の「ガンガン」は一時期だけ隔週雑誌化されていましたけれど、基本は月刊誌。
月刊ならではのスピーディな物語構成が成せる業とも言えるのじゃないでしょうか。

「ロト紋」と「紋継ぐ」では脚本家が交代していること。
少年誌と青年誌という性質の違い。
物語展開上どうしてもスロースタートになりがちだったこと。
様々な要因が考えられますが、長期化の一因には掲載誌の発行間隔もある気がしてなりません。

おわりに

展開が速くなりがちな月刊誌連載の方が優れているよね…という記事では無いですので。
一応。
あくまでも一例を取り上げただけであり、月刊誌だから展開が早い。週刊誌だから遅いという訳では無いです。
当然ですけれど。
ページ数とかの関係上、週刊連載の方が「余裕」のある分「展開が停滞した話」を入れる余地がありそうだよねという推論。

そうそう。
月刊⇒隔週⇒週刊の順で「展開がゆっくりになりがち」みたいな感じで纏め、「紋継ぐ」のゆっくりペースは隔週だから可能とも取れる書き方をしてしまいました。
矛盾するようですが、週刊誌。
特に「週刊少年ジャンプ」ではまず間違いなくダメな物語構成な気がします。

「序盤はのんびりしていて、次第に面白くなっていくような作品」を「ジャンプ」で連載してしまうと、高確率で「面白くなる前」に打ち切られます。
恐らく読者層的に、そのような構造の漫画は受け付けにくいんでしょうね。
最初からトップギアでガンガン飛ばしていき、軌道に乗ってからペースを落としていく。(編集部に強制的にペースを落とされる事が多い気もしますが)
「ジャンプ」の打ち切られなかったストーリー漫画連載作の多くがこのパターンだと思います。
一部例外を除いた、これまた僕個人の印象論でしかありませんけれど。

なんだかとっちらかってしまい、何が言いたいのか自分でも分からなくなってますが…。
掲載誌の発行間隔が及ぼす漫画自体への影響は存在しそうですね。

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