脚本家・花田十輝という共通項から見えるμ’sとAqoursの絆描写の”進化”

この記事は

「ラブライブ!」シリーズの記事です。
ネタバレありますです。

脚本家という仕事

多分に勘違いされやすい立場であると思われる脚本家という職業。
脚本家が1人でプロットを立てて、シナリオに起こして、そのまま映像化されるなんてことは、多分殆ど無いのであろう。

多くは、監督やプロデューサーらが集まって脚本会議を行い、そこで決まったプロットに沿ってシナリオを起こし、数度の改訂を経て脚本になる。
それをコンテに起こす際に削ぎ落とされたり、改変されたりして、ようやく僕らが目にする状態に仕上がるのだと思います。

しかし、今回は敢えて、こういった事(事実と思われる事象)を無視して、「脚本家・花田さんの仕事」として、「ラブライブ!」シリーズを再考してみます。

「ラブライブ!」第10話

「ラブライブ!」は舞台のようなものとして捉えております。
全体的にどこか大仰で、芝居染みているんですよね。
自然な感じはなく、「作られた」イメージが強いのです。

その象徴としての話数の1つが、第1期第10話。

第10話「先輩禁止!」

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「ラブライブ!」出場枠選考まで一ヶ月を切ったある日、穂乃果は真姫の家の別荘を借りた合宿を提案。
一方、先輩後輩を意識することが障害になると考えた絵里は、この合宿を機にμ’s内での「先輩」禁止令を発案する。
慣れない会話に緊張する1、2年生。
そうして一行は海辺の別荘に到着するが、穂乃果たちは練習そっちのけで海に遊びに行ってしまう。
そんな中、真姫だけが皆から離れて一人読書に耽っていた。
それに気付いた希は…!

ラブライブ!Official Web Site | 第1期ストーリー

呼び名というのは、最も身近な親密度を計る尺度となります。
敬意を表す相手には、敬称や役職名などを付けて名前を呼びますし、仲が深まれば呼び捨て(特に下の名前で)になったり。
必ずしも、親密度と呼び名の変化が結び付くわけではありませんけれど、仲を確かめる物差しとしては十分機能していると言えます。

μ’sは、自分達の絆をあまりにも不自然な形で成し得ています。

絵里の「命令」から始まったこの「先輩・後輩の間を無くす」という行為は、歪に見えます。
呼び方なんてものは強制するモノでなく、自然と変化すべきものと僕なんかは想うのですね。

勿論絵里の言い分も理解出来るのです。
1つのグループとして活動を続けていく中で、年齢差をお互いの間に意識させるよりかは、それを撤廃した方が良いというのは、確かにその通りです。
外から見ても、互いを下の名前で親しげに呼び合っている方が、絆が深いんだなと理解しやすいです。

然しながら、こういうイベントを経てだと、どうも違和感が残るんですよね。
なかなかこのイベントに加われなかった真姫のリアクションが最も自然に感じるのは、僕がコミュ症だからでしょうか。

ただ、この10話の面白い考察を見つけました。

なかなか名前を呼び捨てに出来ない真姫でしたが、まくら投げの際に希を呼び捨てにします。
この事に対して、記事内でこう考察されています。

ではどうして真姫は希の名前を呼んだのか?

ここで、4話で真姫が花陽と凛の名前を呼んだシーンを思い出すと、µ’sの加入直後に、真姫は2人を名前で呼んでいる。
ここから考えられることは何か。
真姫は、仲間の証として、相手の名前を呼ぶのではないか。
(中略)
真姫にとって、まくら投げゲームにおける希は、海未というボスを倒すために、共に戦った戦友である。
だから、真姫は希の名前を呼んだのだ。という説明が成り立つ。

自然に呼べるようになったやん、と希は言うが、真姫は真姫のルールに従って希の名前を呼んだのである。
呼び捨て or ちゃん付けゲームに参加したつもりは無かった。

非常に面白い考察で、とても納得出来ました。

10話に関して、新たな発見をした想いです。
とはいえ、真姫以外のメンバーの不自然さは依然取り除けてません。

花田先生のμ’sの絆の見せ方は、やはり不自然に思えるのです。

「ラブライブ!サンシャイン!!」第10話

では、Aqoursの場合はどうなのか。
やはり第10話を見てみます。

第10話「シャイ煮はじめました」
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いよいよ夏休み!夏休みといえばラブライブ!
予選大会を突破するために、休み期間を利用した特訓を提案するダイヤ。
しかし、夏休みには海の家の手伝いをしなければならない千歌。
その2つを両立するために、昼間は全員で海の家を手伝い、それ以外の時間で特訓をすることに。
いざ手伝いを始めるも、隣の豪華な海の家にお客を取られ、こちらの海の家は閑古鳥。
ラブライブ!決勝を目指す私たちが、あんなチャラチャラした店に負けるわけにはいかない!と、お客を呼ぶために奮闘する。
そんな中、梨子はある悩みを、ひとり胸の中に抱えるのだった――。

「ラブライブ!」と偶然か必然か。
第10話でともに合宿回となっています。
不思議なのがサブタイトルです。

この10話で大事なのって、やはり梨子の「夢」ですよね。
11話の伏線となる曜の嫉妬ファイヤーの前兆も見て取れる事も踏まえると、梨子離脱を仄めかすサブタイトルの方が相応しく思えます。
しかし、そうではなく、「シャイ煮」をフューチャー。

全話見た方なら気付かれてるかと思いますが、μ’sと異なりAqoursって、いつの間にか名前(基本「ちゃん」付け)で呼び合ってるんですよね。
その転機が「シャイ煮」だったんじゃないでしょうか。
11話で曜が鞠莉を「鞠莉ちゃん」と呼べている切欠も、「シャイ煮」なんですよ。

そもそも「シャイ煮」って、「闇鍋」みたいなもので、高級食材のぐった煮。
所謂鍋です。

統一感の無い食材は、個性的なAqoursメンバーの暗喩であり、それを1つの鍋にする。
一見すると不味そうだが、食べると美味しい。
バラバラに思える個性豊かなメンバーも、1つのグループ「Aqours」として調和が取れているという示唆。

1つの鍋をつつくことで、メンバーの絆が育まれた。

だからこそ、サブタイトルが「シャイ煮」なんですよ。
「シャイ煮」は「Aqours」のメタファーになってるという解釈。

個人的な意見になりますが、とても自然にメンバーの絆を描けていると思います。

まとめ

同じスクールアイドルの物語を続けて描くことで、より自然に彼女達の中の絆を描いて見せてくれたのではないか。
花田先生の進化が見える気がする…なんて書くと「お前は何様なんだ」って感じですね(汗
すみません。
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