この記事は
「いなり、こんこん、恋いろは」の感想・考察記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。
はじめに
「いなり、こんこん、恋いろは」。
やっとこさ、通常版第8巻発売です!!

いなり、こんこん、恋いろは。 (8) (カドカワコミックス・エース)
- 作者: よしだもろへ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2014/07/03
- メディア: コミック
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僕は、「はっかん」と読んでますが、そんな8巻が発売されてました。
いやはや、特装版が出る場合って角川コミックスは通常版が遅れて発売がデフォですよね。
(正確には「通常版より早く特装版が発売される」ので、通常版の発売が遅くなっている訳では無いですが)
通常版の購入を考えている人間にとっては、辛い日々でした。
発売してるのに読めないっていうね。(じゃあ特装版買えよって話ですけれどもw)
という事で…。
「いなり」第8巻を中心に据えた記事です。
先ずは感想から
さて本編。
墨染さんがボブカットになったのが何気にショック。
いや、好きな髪型ですし、似合ってるとは思います。可愛いです。
でも彼女はロングの方が似合っていたので残念は残念でした。
ただ、こうなるまでの流れが凄かった。
墨染さんの友情の厚さが表されていた。
恋に纏わる事なんです。
誰が悪い訳では無い。
今回はちょっと後輩の女の子がやりすぎてしまってましたけれど、大目に見て致し方なし。
それ以上に墨染さんがどれほど、いなりの事を想ってくれていたのかが大切ですよね。
自分の恋を認めてくれた友達。
想いを大切にしていいんだよと言ってくれた友達。
そんな大切な友達であるいなりがどれ程の気持ちでチョコを作り、マフラーを編んだのか知っていたから。
火に飛び込む事も厭わずに、いなりの大切な物を守り通した。
墨染さんの行動は、とても良かったです。
で。この”事件”で大事なのは人間一人じゃないんだよって事。
先の墨染さんの件もそうだし、いなりが暴走せずに済んだ事もそう。
桃山さんの手紙を捨ててしまった過去の自分と後輩の女の子を重ね、「盗られた事を責める」事はせずに「自ら道を正す事を促した」。
これが出来たのは、丹波橋君が側にいてくれたからですよね。
仮定のお話をします。
丹波橋君に秘密がばれておらず、「僕がいる 力になるから」という言葉を掛けられてなかったら…。
いなりはまた力を暴走させていた事でしょう。
彼女自身「何も変わってない」と述懐していたのですから。
そうは言ってもいなりだってちゃんと成長はしてると思うんです。
もしも、いなりが桃山さんの手紙を捨てていなかったら…。
この事件を経験し、「誰かの想いを奪ってしまった辛さ」も「奪われた者の辛さ」も両方知っていたからこそ、責めたりせずにいられたんじゃないでしょうか。
プラスだけの感情じゃない。
丹波橋君を想う少女達の気持ちをも持ちながら。
それでもいなりを支える多くの想いに助けられ、いなり自身それを理解した。
バレンタインのプレゼント消失から…。
いや、もっと前ですね。
桃山さんの手紙を失くしてしまった時点からかな。
「人間一人じゃない」という様々な経験をして「他人に変身したい」という気持ちは捨て去れた。
後輩ちゃんと墨染さんの問答が全てですよね。
他人を羨望するのは自由です。
けれど、誰だって悩みはあるし、不自由してることだってある。
そういうのを無視して…「無い」と決めつけてしまうのは良くない。
悩みも不自由もある。
それを受け止め、周りに支えられて、克服したりして人は成長する…。
良い感情も悪い感情も糧にして、一歩を踏み出す。
いなりの告白。
そういうのが感じられてとても良かったですね。
それと墨染さんのことも触れておきます。
この事件を経て、気持ちに区切りが着いたのか、彼女の恋愛も決しましたね。
流石に百合カップル成立とはいかなかったですけれど、まあ、仕方なし…かな。
吹っ切れて晴れ晴れとした表情を魅せてくれたので良かったです。
さてさて。丹波橋君も受け入れて晴れてカップルとなったいなりと丹波橋君。
遂にですよ。
8巻にして想いが叶った訳ですけれど、物語はもう少し続きそうです。
そこで。
この辺のお話を。
「ラブストーリーの終着点はどこなのか?」
ラブストーリーの終着点はどこなのか?
漫画やアニメにドラマ、小説。
それこそ昔から連綿と描かれている多くのラブストーリーの大半は「片思い」から始まります。
主人公が男だろうと女だろうと、開始前、若しくは開始直後から異性に想いを寄せており、物語は基本的にこの恋模様を中心として紡がれていくわけです。
そうすると、ゴール地点も明確になります。
想いが成就した瞬間。
つまりは、想っていた異性との恋が実り、カップルとなった時ですね。
人気が出て物語が終われないとか、そういう外部的な要因が無い限り、この後物語が続いたとしても、それは全てエピローグ扱いとなります。
作品的にはテーマを完結させたのですからね。
まあ、現実を鑑みて、カップル成立後を描くのは色々と…ね。
それこそ、死語ですけれど「トレンディドラマ」的な作品だと難しい。
「恋に恋する」的な「恋愛を極限まで美化」してると、例えば肉体関係をにおわせたり、破局なんて展開はファンも望んでないでしょうから。
そういうのは割愛して、エピローグとして「その後2人は結婚。子供も生まれました」という情報をさらっと提示するのが精々。
「カップル成立後」は暈して、綺麗にハッピーエンドで結ぶのが大半な気がします。
けれど、「カップル成立後」を描いている作品も珍しくはありません。
そういう作品はいっぱいあります。
「いなり、こんこん、恋いろは」もこの類に分類して良い感じになってきました。
いなりと丹波橋君がカップルになっても、物語は続いてますからね。
この類のラブストーリーは、ではなぜ物語をカップル成立時点で終わらせないのでしょうか?
商業的な理由等々は無視すると、「テーマを完遂してないから」という答えに行きつく気が致します。
「いなり」の場合、僕が思うに2つの柱があるんではないかと。
1つは、いなりの恋物語。
これが大黒柱で、作品の中枢と言っても過言では無いですよね。
今回これが叶ったので、物語はクライマックスに突入した事は疑いようは無いです。
若しかしたら9巻で終わり。長くても10巻くらいかなと見ています。
で、この問いに絡んできてると僕が考えているのはもう1つの柱。
変身能力。
この摩訶不思議な神から与えられた力が、物語の動力源でした。
「草食系」である奥手のいなりは、この力が有ったから恋を実らせたと言っても良いですよね。
この能力をいなりが持ち続けるのか。
それとも、返す事になるのか。
決して有耶無耶に出来ない部分だし、エピローグ的に端折る事も出来ない。
しっかりと決着を描くべきことだと考えます。
いなりの恋愛の決着=最終回とならなかった最大の理由がここにあると思います。
ラブストーリーの大きな柱が「主人公の恋愛成就」にあるのは基本です。
どんな作品にも当て嵌まる筈です。多分w
カップル成立が作品の終わりとなるラブストーリーは、これだけを重点的に描いているのでしょう。
そうではなく終わらない作品は、他に描くべき「柱」がある。
「いなり」の場合は、うか様の事なんでしょうね。
終わりに
このいなりの変身能力の決着を描く事は即ち「うか様の結末」を描く事になります。
うか様に恋愛させたのは、つまりはその為なのかなと。
8巻で両想いであることも分かり、彼女の恋愛譚も1つの大きな節目を迎えた訳ですけれど、一体どうなるんでしょうね。
人間になるのか?
神のままで恋は諦めるのか?
うううん。
気になるのは、いなりが消えた様に見えた点。
丹波橋君から見て、いなりが見えなくなったという事は「いなりが神化」している兆候なんじゃなかろうかと。
もしかしたら力の本来の持ち主であるうか様が人間になりたいと願った事で、
うか様⇒人間
いなり⇒神
と2人の立場が入れ替わろうとしてるのかもですね。
もしこの仮説通りなら、うか様はいなりの為に自らの恋を諦める…という事になるんでしょうけれど、いなりがそれを許しませんよね。
「自分の想いを大切にして欲しい」と願ういなり。
墨染さんにしたように、うか様にもするだろうし、行動を起こす。
いなりが神になってしまうというのは、丹波橋君や彼女の友人、家族にとっては耐え難いバッドエンドなので、そういうのは無いと願いつつ。
入れ替わりをクリアしつつも、うか様もいなりも普通の人間になって終わり…というのがベストかな。
「入れ替わりのクリア」が最後にして最大のミッションとなって、物語的にも大いに盛り上げられそうですしね。
何にせよ、クライマックス。
5巻辺りのあとがきで「折り返し」と仰っていたように、本当に10巻位で終わっちゃいそうですね。
作品を彩ってきた3つの恋愛譚も、いなりと墨染さんが決着。
残りはうか様のみ。
彼女の恋愛の決着を描くには、いなりの変身能力をどうするのかに掛かってきます。
この絡みがどういう帰結するのか…。
終わりが見えて寂しいですけれど、楽しみに次巻を待ちたいです。