「鴨乃橋ロンの禁断推理」孤島天文台殺人事件編 感想

この記事は

「鴨乃橋ロンの禁断推理」の感想です。
ネタバレあります。

はじめに

「ジャンプ+」で連載中の「鴨乃橋ロンの禁断推理」。
作者は「家庭教師ヒットマンREBORN!」の天野明先生。

これまでは1話、ないしは2話完結の「ミステリ趣向」の漫画という感想しか持っていなかったのです。
もう少し具体的に言えば、「ネウロ」と同様「推理物の皮を被った単純娯楽漫画という認識でした
が、初の長編となった「孤島天文台殺人事件」は違った!!
明らかに今までのシリーズと隔する「本格ミステリ」でした。
あまりにも嬉しくなったので、このシリーズに限定しての感想です。

感想

この直前のテレビ局での超能力殺人も本格と呼んで差し支えない感じでしたが、この長編で本格的に本格ミステリに入ったと確信に至りました。
あくまでも僕個人の基準ですが、本格ミステリというのは、「作者と読者の推理勝負が出来ること」が大前提にあると考えております。
問題編までに読者に全てのヒントが提示されており、読者はそのヒントをもとに真相に辿り着けることが出来る。
フィクションが混ざらず、フィクションを混ぜる場合はその提示すら事前にしておく。
どこまでもフェアに、作中の描写だけで推理が出来ることが本格ミステリであるというのが、僕の持論です。

これに当てはめますと、「孤島天文台殺人事件」は本格ミステリ足り得ているのです。

真犯人特定のロジック、ロンが犯人足り得ない証拠、密室殺人のトリック。
全て問題編までのヒントを拾い集めることで、読者が辿り着けるようになっていました。

中でもロジックが美しかったのは、ロンが無実な理由。
堂々とロンの足の裏を読者に見せていたし、トトが天文台の動画に気づくまでの流れも自然だった。
一度犯人として捕らえられるまでの捜査も無理が無かったし、そこからの逆転劇も綺麗に決まっていた。
この辺の流れを読んだときは、「このシリーズは力入ってるなぁ」と嬉しくなりましたもの。

勿論トリックも言うこと無し。
実のところ密室のトリックは、釣り糸を使った原始的な機械トリックだとばかり考えておりました。
トトの推理にとっても近いのですが、外から糸で錠を掛けたのではなく、内部から天文台の動きを利用して錠を掛けたものと想像していたのです。
これでも出来そうなものですが、作中解の方が断然好みですわ。
人間心理を巧みに利用して、自然と被害者自身に錠を掛けさせたというのは、なるほどなぁと感心させられました。
しかもそのまま彼女を自ら死へと誘導するのですから、たまげたなぁ。
拳銃の自動発射装置トリックは定番と言っていいほど良く目にしますけれど、密室トリックと組み合わせることで、長編本格推理もののメイントリックとして満足いく出来栄えに昇華されていたと思いました。

物的証拠が無い中で犯人がやけにあっさりと白状したものですが、これもバックにいた黒幕のことを考慮すれば納得出来るもの。
このレベルのミステリを今後も描いてくれると、いよいよ「週刊少年ジャンプ」が苦手としてきたジャンルに「ジャンプ+」で初めて成功を収められるんじゃないかな。
(僕は「DEATH NOTE」をミステリ漫画としてカウントしてません。)

終わりに

本格ミステリとしての体裁をしっかりと内包しつつ、ラストでは縦軸となる漫画的要素をガッツリと絡めてきている。
いよいよもって本筋の物語も始動することを匂わせていて、目が離せなくなってきました。
というか、コミックスで追う事確定しました。

いや、マジで「ジャンプ+」熱いな。
面白い漫画が多すぎる。
本作もその中に仲間入り。

ミステリマニアにも十分お勧めできる漫画です。

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