この記事は
「不死探偵・冷堂紅葉 03.君への挑戦状」の感想です。
ミステリのネタバレしてます。
次の「館」は?
体育館から始まり、水族館、図書館と来て、次はどこの館なのでしょうね!!
僕も天内君同様、気になります。
いや、違うか。
流石に「裏染天馬シリーズ」と作中のミステリゲームの次回作を掛けたネタではないかぁ。
さて第3巻。
個人的には、さほど「待たされた」感は無いんです。
1巻を読んだのが2024年11月、2巻が今年の5月。
「既刊が書店で品切れていてamazonでプレ値が付いてる」とか、「3巻の発売が決定した~」等の話題をXで見かけるようになったのが、今年に入ってから…だったかな?
なんだか普通に続刊されるものだと思っていたので、「やっと発売してくれたんだ」的感慨は少なくて。
ただ、調べてみると2巻の発売が2023年11月だったようなので、実に2年9か月ぶりの新刊。
リアタイで追っていたファンの方からすると、感慨深くなるのは納得ですね。
余計な話が長くなりましたが、感想です。
浅はかなり。まことに浅はか
個人的には1巻読了後に「この先どうするんだろう」と思ったのです。
今作は所謂「特殊設定ミステリ」と呼ばれるものです。
近年多いですよね。
現実には存在しない特殊能力や世界観を前提として成り立っているミステリのことで、今作は、主人公コンビを含めて能力者が登場します。
キスをすると過去の不特定の時間に戻る能力を持つ天内。
不老不死で永遠の16歳であるヒロインの紅葉。
第1巻は、メイン2人の異能力をこれでもかと活かしたトリックやギミックがふんだんに盛り込まれたミステリでした。
故に「2人の能力を用いたこれ以上のトリック、無いんじゃね?」と感じたのです。
縦軸となるストーリーこそあれ、「特殊設定ミステリ」としての今作の旨味は全部出し切ってしまったのではないか?
くっそ失礼ながらも、そういう感想を抱いたのです。
そうした感想を持ちつつ2巻を読み、早くも「僕が浅はかでした」と敗北宣言。
新たな能力者を出しつつ、彼女達の能力を前提としたミステリが描かれ、「特殊設定ミステリ」をやってのけてくれたのです。
謎の見せ方、テンポ、伏線の巧みさ、驚愕の真相。
「次々と何の罪もない可愛いヒロイン候補が殺されていくのだけれど…」と心の中で涙を流しつつも、ミステリ面では満足感が得られたのでした。
そして今回、です。
「ひよったのか?」
ぶっちゃけ序盤はそう思ってしまったのですよ。
冒頭で不穏でシリアスな空気感は出てたけれど、蓋を開けてみれば、ラブコメ成分マシマシ。
競馬場のイカサマとか密室トリック暴きゲームとか、ミステリのネタ的には弱いなぁと。
事件らしい事件も起きないし、読者受けを狙ってラブコメを強めてきたんだろうか?
そんな失礼な事を考える始末。
僕はここに至るまでまだまだ理解してなかったようです。
サブタイトル通り「君への挑戦状」が出てからの怒涛のミステリ成分に驚愕。
シリーズならではの壮大な伏線回収を経ての「悲しき犯人当て」。
あぁ、これは天内も押し黙るし、紅葉にとっては心が割かれるほど辛いわ。
見事なフーダニットだったし、作中では「おまけ」的扱いの密室トリックも「こう来たか」と唸ったよ。
1巻読了後の「2人の能力を用いたこれ以上のトリック、無いんじゃね?」を全力でこき下ろされたようで実に清々しかった。
結局日常パートの「密室トリック暴きゲーム」が2つの密室殺人のトリックの伏線になってたりもして、読み終わってみればミステリ面での満足感を得られるという結果に終わりました。
終わりに
縦軸の物語も順調に進み、謎が増えてきています。
そちらの方も楽しみにしつつ、次の4巻の発売を待ちます。