「輪廻のラグランジェ」 考察〜ウォクス伝説の真偽〜

みんな地球人でした

ランもムギナミも元々は地球人だったんですね。
2万年以前の地球に栄えていた高度文明。ウォクスはその頃出来たようですね。
しかし、大きな戦争が起こってウォクスが暴走して世界を崩壊させかける。
人々は宇宙へと逃れ、現在まで続く…と。
そういう事みたいですが…どうにも腑に落ちませんね。

何故ラン達の祖先は地球を出たのでしょうか?

世界を破壊しかけたから?
ウォクスが怖かったから?
地球は死んだものとして、見放したから?

現在、地球は普通に存在し、ウォクスも未だに存在しています。
宇宙へ逃げる必要性を感じません。
この辺がしっくりこないんですよね。
上記に挙げた3つ目、地球を見放したと見るのが一番妥当な気もしますが、それでも何となくしっくりこない。
なので、ちょっと妄想してみます。

ウォクスは鬼か否か。

ランの王族に伝わるという歌を抜き出してみます。

萌葱の大鬼(アウラ) 天を裂き
浅葱の大鬼(リンファ) 星を喰い
柑子の大鬼(イグニス) 闇を吐き
数多の贄で地に治む
心の淀みを与ふれば まなしに寝覚め鬼は立つ

萌黄は緑色、浅葱は青、柑子は黄色の事ですので、それぞれカッコ内のウォクスを表しています。
また、「まなし」とは「間無し」…「直ぐに」という解釈で良いのかな?

さてと。この歌から推測できることは、ウォクスが鬼では無いという事でしょうか。
当たり前の話ですが、ウォクスの搭乗者次第という事ですね。

第6話で初めてアウラが「輪廻を開いた」シーン。
これはこの歌の通りならば、搭乗者であるまどかが怒りに心を支配されたから(心の淀みを与えたから)起こった事ですよね。
ヴィラジュリオがムギナミを盛んに挑発していたのは、ムギナミの負の感情を湧き立てて、イグニスを暴走させようとした為なのでしょうね。
予定に反してまどかが暴走したのは、彼にとっては結果オーライだったのだと思います。

兎も角これで世界が破壊されるかというと、僕はNOだと思っています。
6話での「暴走」時、何かが破壊されたという描写が無かったからです。
でも、実際はウォクスに関する恐ろしい伝説が残っている。
何故なのか?

そもそも僕は勝手な思い違いをしていたのかもしれません。
世界や文明が崩壊したと聞いて、真っ先に考えたのは物の物理的な破壊です。
文明の崩壊と聞いた上での先入観とでもいうのかな。
ですが、ウォクスの暴走とはそういう事では無いのではないかなと思い始めています。

輪廻の輪

何故高度科学文明が滅びたのか?
戦争による被害による部分があったのも事実でしょうね。
そういった物理的な破壊による部分はもちろん、それ以上に人が多く亡くなったからなのだと思うのです。
文明を築いた人間そのものが絶滅しかけたから、文明は滅んでしまった。
その原因がウォクスの暴走なのかなと。

ウォクスの暴走を称してモイドが「輪廻の輪が開いた」と言っていますが、これは言葉通り受け取って良い気がします。
ウォクスは暴走すると、人の命を吸収するのではないかな。

大勢の人が死んでしまったから、文明は滅びてしまった。
生き残った人々の一部は宇宙へと逃れ、地球から50光年離れた銀河にポリへドロンを形成した。
一定の命を吸ったウォクスは、暴走を鎮める。
6話にて簡単に暴走が治まったのは、まだ最初期段階だったから。
だから、まどか達が気を失う程度の「命の吸収」で済んだ。

ラグランジェというのは、手向けの花なのかもしれませんね。

ウォクスを巡るそれぞれの動き

今回の戦争をちょっとまとめてみます。

ポリヘドロンの2つの国家デ・メトリオとレ・ガリテ。
この2つの国家間での戦争が事の始まりですよね。
どちらともウォクスを狙っていて、さらに反ポリヘドロン義賊同盟である「キッス」が場をややこしくしている。
「キッス」リーダーであるヴィラジュリオは、元デ・メトリオ王子で、これまたウォクスを欲している。

まどから地球人は、この戦争に巻き込まれている形ですよね。

さて。3つの勢力がウォクスを回収せんとしている訳ですが、恐らく皆理由が異なると踏んでいます。

レ・ガリテは、ウォクス暴走の真の意味を理解しているのではないでしょうか。
上にも書いたように、モイドが暴走の事を「輪廻の輪を開く」等と言っているからです。
それを承知で回収しようとしている事から、この力を戦争の為に使おうと考えているのではないでしょうかね。
デ・メトリオを滅ぼすためにウォクスを求めている。

デ・メトリオはというと、恐らくウォクスの暴走の真の意味を知らない。
単純に伝説にもなるほど凄い機体だと思っている。
こちらも戦争に勝つためという理由でしょうけれど、ニュアンスは変わってきますよね。

これらに対してキッスはというと…。やはり暴走の真の理由を承知しているのでしょうね。
ただ、他と違うのはこれを戦争に使う気が無いという事。
以前地球側に対してウォクスシリーズの破壊を命じたからです。
暴走の恐ろしさを理解して、だから破壊するか、自らの手で回収しようと画策している。
6話で暴走を促したのは、まどからメモリア所持者を殺すため…なのかもですね。
メモリアは誰でも刻まれる訳では無いというセリフがあったと記憶しています。
なので、メモリア所持者が死ねば、戦争で使われる心配も無くなるという訳ですから。

地球側の顔役「ノウムンドゥス財団」

アステリアが事の背景に関してどこまで承知しているのかは不明ですが、少なくとも伝説の真偽は知っていそうですね。
何故その事を知っているか。
僕は彼女の一族が、地球に残った2万年前の人類の末裔だからだと思っています。
地球にもレ・ガリテの王族に伝わる歌と同じように伝説が伝えられてきたのだと考えます。

ちなみに、ウォクスらの名前を作ったのも彼女の一族だと思っています。
ウォクス「vox」がラテン語である事は、公式でも公表されているのかな?
まぁ、ちょっとググれば意味は幾らでも出て来ますし、多くの視聴者が既に気付いている事ですが。
このラテン語って、使われ出したのが紀元前7世紀頃らしいですし。
少なくとも2万年前にはまだ存在していなかったと思います。
(あくまで現実の歴史=作中の歴史とした場合ですが)
なので、ようこらが研究しているモノは、2万年前よりもずっと新しい時代に記されたもの…つまりは地球側にも2万年前の伝説を語り継いできた人がいるという事ですよね。
それがアステリアの一族で、これこそが地球で伝え残された「伝説」なのだと。

また、「ノウムンドゥス」はラテン語表記だと「no mundus」かな。
意味は「宇宙では無い」という感じみたいです。
「mundus」は「世界」と訳される事が一般みたいですが、「宇宙」という訳も可能だそうで。*1

宇宙に逃げた人類では無い地球に残った人類による財団という意味なのでしょう。

まとめのようなもの

なんにせよ、これらはただの妄想ですが、どうもまどからの心境が安定してさえいればウォクスは危険な機体では無いのかなって。
そんで、きっとそれは杞憂で終わるのかなと。
誰か1人が唆され心をかき乱されても、他の2人がフォローするでしょうから。
まどから3人の心の交流を丹念に描いているのは、そういった理由からかなって。
さらにバックからアステリアがバックアップしてくれそうですしね。

分割2クールと言われているこのアニメもそろそろ前半が終わります。
ここまで爽快で気持ちの良い展開を魅せてくれているので、最後も見終わって笑顔になれるものになってくれると思っております。

*1:参考:http://oshiete.goo.ne.jp/qa/3026963.html
「宇宙」にぴったりあてはまるラテン語はないのですがまあ一番近い言葉と言えばmundusでしょうか。
そもそも古代の宇宙観と現代の宇宙観では全然違います。古代人にとって、大地と海と天、天に輝く太陽、月、星、それらすべてが知りうる世界、宇宙だったのです。
星は天空にはりついているもの、その外側なんて考えようがなかったのです。セビリアのイシドールスの博物誌(Etymologiae)から引用します。
Mundus est caelum et terra, mare et quae in eis opera Dei.(Etymologiae XIII,1)
「mundusとは天空、大地、海、さらにそれらに含まれる神のみわざ」
mundusと言えば、「世界」と訳されることが多いけれど、「宇宙」と訳してよいものです。

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