「それでも町は廻っている」 タイトルの意味と歩鳥の心理的恐怖のリンクがすんごいよね

はじめに

華々しい最後を飾り、名作になった「それ町」。
改めて読み返していて、思った事を書いてみます。

タイトルに込められた意味と歩鳥が最終的に到達する境地が一致するんですよね。

その前に謝らないといけません。

この記事で記事タイトル含め「それでも町“が”廻っている」としていました。
最低です。
タイトル間違えるなんて、本当にヒドイミスです。
ごめんなさい。

それでは、本稿です。

第13話・第14話「それでも町は廻っている」前後編

それでも町は廻っている 2 (ヤングキングコミックス)

それでも町は廻っている 2 (ヤングキングコミックス)

タイトルがそのままサブタイトルに冠された話。
タイトルを冠している以上、重要なお話ですよ。

この話では、一時的に歩鳥が死んでしまいます。
高級万年しつを壊してしまった補填に推理小説大賞の賞金を充てこもうと目論んだ歩鳥。
2週間かけて処女作「ゼリー島殺人事件」を執筆するも落選。
ショックで気落ちしたところにトラックが突っ込んできて…。

脳に深刻なダメージを受けた歩鳥は、「二度と意識は戻らないでしょう」と宣告されてしまいます。

アニメ版ではこの話、色々とシーンが追加されていて、より分かり易くなってましたが「歩鳥が死んでもそれでも町は廻っている」という意味が見て取れます。
当たり前のことなんですけれど、人が一人亡くなっても町の日常は過ぎ去っていくものです。

これが「タイトルに込められた意味」の1つとして捉えておきます。
あくまでも1つです。

第111話「夢幻小説」

それでも町は廻っている 14巻 (ヤングキングコミックス)

それでも町は廻っている 14巻 (ヤングキングコミックス)

とある壮大なトリックが仕掛けられたこのお話で、歩鳥の根源的な恐怖が描かれています。

誰も歩鳥のことを知らない、歩鳥の存在しない世界線に迷い込んでしまった歩鳥。
誰も知らない。
誰からも必要とされていないことに恐怖を覚えた彼女。

自分が居なくても町が廻っていることに恐怖を覚えるんですよね。
「歩鳥がいなくても、それでも町は廻っている」。

13・14話とはまた違った意味での「歩鳥のいない状況」が描かれています。
これもまた、タイトルに込められた意味合いの1つとして捉えておきましょう。

ちなみに

この2度にわたる「歩鳥のいない世界」ですが、歩鳥自身それを忘れているのが面白い所です。
死後の世界での記憶は消えてしまったし、別の世界線のことを夢として忘れられている。

ただ、後者は思い出す可能性を秘めていて、思い出したのかもしれませんよね。
歩鳥のことだからこれをヒントに静姉ちゃんの正体に辿り着いたのかも…。

第128話「嵐と共に去りぬ」

それでも町は廻っている 16巻 (ヤングキングコミックス)

それでも町は廻っている 16巻 (ヤングキングコミックス)

超大型の台風が近づいてきた夜。
歩鳥はとある宇宙生命体に選別され、究極の選択を迫られます。

ここで、歩鳥は、「地球人に見える筈の宇宙人の真の姿」を捕捉してるんですよね。
あれ、宇宙人が驚いている所から見ても、描かれてるおにぎり型がそのまま本来の姿だと予想出来ます。
何が言いたいかというと、歩鳥って他の生命とはちょっと違った特殊な体質を持ってるんじゃないかということ。

おにぎりとの接触は忘れちゃうはずなのに、歩鳥は、「何らかの形」で覚えてるんじゃないかなと。
その可能性はありますよね。

先程の話に戻りますが、別の世界線での出来事と一緒に、このおにぎりとの接触も「夢」として思い出し、探偵脳の歩鳥は考えた筈です。
何故自分は戻って来れたのか…と。

別の世界線での紺先輩の台詞から推測して、静姉ちゃんに「雲丹飛行船」の話をしたことが切欠だったのではないかという結論に辿り着いて、そこから静姉ちゃんの正体に感付き、探りを入れて確信に至ったとかとか。
色々と想像出来ちゃいますね。

と、話が逸れましたが、おにぎりとの対話で歩鳥は「みんなの未来」と「自分が消えること」を天秤にかけて、「みんなの未来」を選択します。
自分が消えることよりもみんなの未来が消える方が怖いと。

これもまた「歩鳥はいないけれど、それでも町は廻っている」というタイトルの意味に掛かってきますよね。

ただ、これまでの2つの意味合いと決定的に違うことがあります。
前2つは「自分のいない世界は悲しい」という意味で捕えられた解釈であり、「みんなより自分が大事」という意味になる訳です。
けれど、3つ目は違いますよね、全く逆です。

ポジティブというと何か言葉の選択が間違っているのかもしれませんが、イメージ的には前向きな意味合いになっている。

これを13・14話の頃(1年前)からの歩鳥の成長と捉えると、この1年で歩鳥は町(で暮らす皆)の事の方が大切だと思える精神を身に付けたということですよね。

何て書いたら適切なのだろう。
上手く言葉が出て来ないのですが…。

「それでも町は廻っている」というタイトルは、ずっと「マイナスの意味合い」のタイトルだった訳ですよ。
歩鳥が望んでないのに、歩鳥がいなくても町は廻り続けるよねという意味で。

でも、最後の最後で「プラスの意味合い」に変化した。
歩鳥が望む、歩鳥がいなくても町は廻り続けるという意味に。

コメディとしては、こういう逆転は正解ですよね。
明るくなったので。

しかもですよ、歩鳥はしっかりと町に組み込まれている。
「いなくなったりしないよ」というメッセージが111話で描かれている。

変わらない日常が廻り続ける。
「変わらないけれど、それでも町は廻っている」。
タイトルは最終的にそういう意味合いに昇華されているのかなと思います。

終わりに

やはり名作なんだよな~。
何度読み返しても面白いのは名作の証。

もう少し読んでから、夜の”お祭り”に出かけよう。

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