「ぼくたちは勉強ができない ルートif」の読み方

この記事は

「ぼくたちは勉強ができない」の感想です。
ネタバレあります。

賛否荒れるルートif

作者も編集部側も想定内ではあるのでしょうけれど、やはりというかファンの間でも賛否分かれている「ルートif」編。
本誌では、理珠ルートが終了し、文乃編へと入りました。
個人的な本音を言えば、理珠編が想定以上に長すぎて「先が長すぎる…」という「楽しめてない」部類に入るのですが、そうは言っても連載は続いていく訳です。
最後まで追う覚悟完了しているので、少しでも楽しみたいという欲があります。

ということで、自分自身に向けて「こういう風に楽しみなよ」という提案をしてみます。

絶対にやってはいけない読み方

僕が何故楽しめていないのか、根本的な理由を先ずは書きますね。
「誰ルートなのか分かっているから」です。
これは複数ヒロインが出てくるラブコメに於いては致命的なことなのではないでしょうか。

こういった作品の本懐はやはり「主人公が誰と結ばれるのか」を楽しむものであり、それぞれの推しが主人公とラブコメってる姿を尊ぶものであります。
先が見えない(見えないと思い込む)からこそ、ラブコメとして面白いのです。

ラブコメ漫画をこのように捉えると、「ぼく勉」は既に完結してるんですよね。
うるかと結ばれた結末”だけ”を本筋と捉えて、他は全て蛇足以外の何物でもないのです。
だからこそ、僕はルート展開を今まで通りには楽しんで読めていません。

もう1つ、ラブコメ漫画では、「結ばれなかったヒロインへのフォロー」が入ることが多いのも特徴です。
基本的には1人の女の子だけが報われて、他のヒロインは失恋してしまうのです。
このままだと恋に破れたヒロインが可哀そうでは無いですか。
ファンだって、自分の推しヒロインが悲恋のまま終わったら辛いですよね。
せめてもの救済、後味を少しでも良くするためにも、失恋したヒロインのケアは大切になってきます。

この点もしっかりと行っていたのが「うるか編」でした。
うるか自身が文乃の恋を肯定して、いがみ合うことを良しとしなかった。
そんな彼女の気持ちに報いるため、文乃も理珠も涙を堪えて笑顔で送り出しました。

このルート(本編)に於いて、僕は真冬とあすみは「サブヒロイン」だと思っております。
コミックスの裏表紙に顔を並べていないというのもそうですが、うるか達3人とはほんの少し一歩下がった立ち位置に居たように見ていました。
何故ならば、成幸への恋を「匂わせているだけ」で終わっていたからです。
意識はしていたはずですが、言明はされていなかったではないですか。
だからこそ、2人は割と軽めの「成幸を諦める」描写で十分に感じました。

それでも真冬とあすみにも最低限のフォローも入り、これで4人のヒロインの救済を済ませた「うるか編」は綺麗に終われていたのです。
自分の推しヒロインエンドでは無かったことに不満は抱いても、物語の〆方自体に文句を言うファンは少数派なのではないでしょうか。
それはつまり、やるべきことを全て済ませていたからに違いありません。

これを踏まえ、では改めてルート展開を考えると、誰と結ばれるのかが確定している以上、他ヒロインへのフォローは「不要」となるんです。
勿論描いてはならないわけでは無くて、描かなくても話が成立しちゃうというのかな。
「このルートでは〇〇と結ばれるけれど、他のルートでは△△と結ばれるのだから、△△推しは我慢してね」という論法。
要は、割り切ってくださいということ。

難しい。
理屈ではそうかもしれないけれど、心情的には中々にハードルの高い要求です。
全員を等しく推してたファンならばいざ知らず、特定の1人を推していると中々に受け入れ難いのですが、仕方ないです。
そういうものだと思うので。

長々と書きましたが、つまりはこういったルート分岐の場合は、そのルートのヒロイン以外の心情を慮る読み方は絶対にやってはいけないということですね。

リスタート地点から始まらないからこその齟齬

とはいえ…です。
ルート分岐が下手なのも指摘させてください。

報われないヒロインの心情を慮るなと言っても、なかなか難しいという最大の理由がこれではないかな?

公式に明言されているように、ルートの分岐点は文化祭の花火。
花火が上がった瞬間に手を繋いでいた男女が結ばれるという伝説にあやかって、成幸が手を繋いでいたヒロインが誰かで分かれていると。

それならば、この時点から物語が再開するべきなのに、「理珠編」も「文乃編」もそうではないんですよ。
「理珠編」に至っては、高校生ですら無かったですからね(笑

いくら分岐点が花火の瞬間だと言われても、その後のストーリーがどうなったのかの説明が殆ど無いんです。
描かれたのは非常に僅か。
「理珠編」では、クリスマスの緒方うどんバイト話が「うるか編」と異なると分かります。
「文乃編」もセンター試験当日が全く違います。
これ以外は不明なんです。
不明な以上は、「うるか編」と同じイベントをこなしてきたと補完するしかありません。
SLG風に言えば、うるかや文乃の好感度上昇イベントの数々もあったと見做すしか無くて。
(うるかの成幸への好感度は最初からMAXだったでしょうけれど、その辺は置いといて。)

例えば、「理珠編」のうるかが「あの程度で成幸を諦めちゃったの?」という疑問でしかない訳で。
(文乃は恋を自覚する前なので、割とすんなり理珠の応援に回ったのではないかと無理なくフォローできるのですけれどね)
どうしたってフォローが欲しくなる構成なんですよね。

本気でルート分岐をやるのであれば、もっと本格的に話数を割いて行うべきなんだと思います。
各ルートをコミックス1巻程度で纏めるには、分岐地点が物語の中盤過ぎます。

まとめ的な

大事なのは、「うるか編」でのイベントの殆どを他ヒロインではこなしていないと考えることなのでしょうね。
あと可能であれば、1巻程度で終わらせないといけないという大人の事情があるんだなと斟酌することかな。
作外の思惑を漫画の読み方として認めるのは邪道だと思うので、あくまでも後者は可能であればですけれど。

あと、不満たらたらじゃないかと思われるのも嫌なので、僕自身のフォローも少し。
「理珠編」のみさおの扱いが神ってたと思ってます。
個人的に彼女が幸せになれたのは良かったです。はい。

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