「スパイ教室」第14巻感想 

この記事は

「スパイ教室」第14巻の感想です。
ネタバレあります。

最終章は、「未来」から始まる?

物語の中途で「物語の結末」を示唆する作劇が苦手だ。
感覚的なことなので、論理的に説明できないのがもどかしいのだけれど、苦手なのです。

なので、今巻のプロローグは、正直歓迎できないというのが本音ではある。
やたらと不吉な結末を示唆しつつ、時を遡るかのように、過去を回想する体で本編へと入っていく。

このプロローグが、今作の結末であるのならば、ガッカリするかもしれない。
終わりが見えてる物語程、つまらないものはないから。
しかも、どう甘く見積もってもバッドエンド寄りだ。
悲劇が待ち受けていること前提で読み進めるのは、苦である。

灯のメンバー全員には光ある未来が来てほしいから。

けれど、そうじゃないんだろうね。
今作はミステリ的な側面を含んだ作品だ。
間違いなく叙述トリックが仕込まれていると確信している。

近い未来、物語がこのプロローグに追いついて、実は…という展開になるはずだ。
「1/5」という表記があるから、少なくとも残り4回は、「真相」が語られるのだろう。

その中で少しずつトリックが明かされていくのかな。

さて、本編の感想です。

こうでなくちゃ!!

やってることは完全にスパイの枠を飛び越えちゃってるんだけれど、それは今更よね。
『暁闇計画』を阻止して、かつ、恒久的な平和を勝ち取る。
正義のヒーローが取るべき第三の道。
ここまで気持ちよくメンバー一丸となって、その道を選択するところが最高だわ。

とはいえ、無茶無謀。
人間の域を軽く超えた化物揃いの一流スパイ達を全て敵に回すのですからね。
今回遂には祖国すら敵に回してしまって、帰る場所も喪った。

どんな作品でも語られるけれど、「安心できるホーム」って存外大事なのよね。
バトルで傷ついた心身を休める場所があるかないかって、生きるか死ぬかってレベルで大事。
「陽炎パレス」を自ら爆破してしまったことが、この先どう転ぶのか…。
まぁ、祖国を敵に回した時点で、陽炎パレスには戻れなくなるから、どっちみち同じだったか。
代替となる場所をすぐに”与えた”のも、こういった展開にはしないという意思表示なのかもですしね。

「真相」に仕掛けられたトリック?

話は戻して、冒頭の「真相 1/5」。

叙述トリックが仕掛けられてるのではと推測しましたが、いきなり首を傾げるところが。
ランのことを「最悪のスパイ」と評しているところに違和感。

確かに今回ランと敵対した。
自らランを誘い出し、裏をかき、騙し、見破られ、戦いとなった。
「祖国から追い出す」というのは、一面から見ればその通りだった。

とはいえ、こうして読み終わると、ランは最後まで灯を信じようとしてたし、灯はディン共和国を「自ら出ていく」道を選んでいた。
灯からどう悪意を持って評しても「ランが追い出した」とも「ランは最悪のスパイ」とも言えない。

もうここからして、変なんですよね。

 

もう1つの違和感は、この「灯の女スパイ」自身のこと。
「正体」が見えないんですよ。

口調に特徴が無く、外見にしても誰とも言える無個性な描写に終始している。

絶対ではないけれど、こういった場合、大抵「誰であるのか」推定することが可能なようになっている。
それが出来ない時点で、「正体を隠したい意図」があるように見える。

「灯の女性諜報員」とは何者なのか?

そんな中で提示された唯一のヒントが「甘いものに目が無い」という箇所。
この部分を読んだ瞬間、僕の脳裏にはリリィの顔が浮かんだのです。
食いしん坊万歳なリリィに違いないという風評被害。
単なるイメージで、実際リリィが「甘いものが好物」という描写は無いんですよね。
それどころか灯の誰にも当てはまるようで当てはまらない。

明確に「甘いものが好き!」とされているキャラクターが居ないんです。

せいぜいがクラウスくらいでしょうか。
甘いものが好物とは言われてないけれど、好んで食べている描写は多い。

もしクラウスなら「女性」という部分がトリックとなるのだけれど。
さらには、インタビューに来た「少年」は、それを看破しているということにもなる。
さて?

終わりに

どんな時でも明るいリリィに心から救われる。
リリィ好きだわぁ。
心からモニカと結ばれて欲しいと思うよ。

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