「29とJK」はラノベ版・池井戸潤作品を目指して欲しい

「空飛ぶタイヤ」がクッソ面白かった

少し前ですが、実写映画の「空飛ぶタイヤ」を見てきました。
感想はサブブログに挙げていますので、詳細は避けますが、途轍もなく面白かったです。
これぞ池井戸作品という爽快感を味わいました。

僕はまだ「オレたちバブル入行組」しか読んでませんが、氏の極意は勧善懲悪にあると思っております。
出てくるのは巨大な悪。
といってもテロリストとか殺人鬼とかいう訳ではありません。
巨大企業の重役なんかですね。

彼ら悪人は、保身の為に権力を振るい、人を陥れたり、過失を隠ぺいしたりします。
その「暴力」に苦しむ人々は、横暴に膝を屈し折れていきます。
そんな中、颯爽とヒーローが現れる訳ですよ。
ヒーローは決して悪には屈しません。
度重なる悪からの攻撃に時には挫折しかけたりもしますが、勇気を振り絞り敢然と戦い抜くのです。

現実では理不尽の前に成す術もなく、人は諦めちゃったりするんですよね。
池井戸先生の作品に登場する主人公達もまた、多くの理不尽に晒されます。
追い込まれて追い込まれて、どん底にまで叩き落とされるんですよ。
誰もがもうダメだ、打つ手がないって状況になって、漸くそこから大逆転劇が始まるんです。

だからもうカタルシスが半端無い!!
数々の理不尽、危機的状況を覆す様は圧巻の一言。
数々の伏線が収斂される終幕に圧倒されます。

現実にどこまでも則った世界を舞台にエンタメに徹底している。
あまりにもドラマティックな構図は、やはり有り得ないと感じる部分もあるのだけれど、だからこそ物語の面白さに溢れているんです。
現実には有り得ないからこそヒーローの活躍に胸躍らせられる。
言い尽くせない爽快感があります。

何故こんなことを「29とJK」の感想の冒頭にわざわざ書いているのか?
理由は単純です。
今作に池井戸作品のような「サラリーマンがどん底の状況から大逆転をかますエンターテイメント作品」としての醍醐味の可能性を感じたからです。
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美少女達がしっかりと可愛い

目つきは怖いが会社では一目置かれている29歳社畜・槍羽鋭二。
ゲームや漫画が好きで、休日のネカフェを癒やしに日々を生き抜いている。
ある日、槍羽は《あること》で説教した女子高生・南里花恋からコクられてしまう。
14も年下とは付き合えないとキッパリ振るが、
後日社長から呼び出され――「業務命令。孫の花恋との交際を命ずる」。
なんなんだこの会社!? 絶対に辞めてやる! (入社以来17回目)
だが始まってしまうJKとの交際。妹が、元カノが、会社の部下が、世間の目が槍羽の前に立ちはだかる!
29歳とJK、“禁断の”年の差ラブコメ、はじまる!

GA文庫公式サイトの本作第1巻の紹介文です。
ここにもあるように本作の本質はラブコメです。
それは間違いありません。

出てくる美少女が揃いも揃って可愛いです。

先ずはメインヒロインの花恋。
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多少ストーカー気質を持ってますが、誠実な良い子です。
鋭二の好きなネカフェに張り込んでは、鋭二を待ち伏せ。
早起きして一生懸命作った愛情たっぷりのお菓子を渡してくれます。
重いかもですが、それだけ深く一途に人を好きになれる子と解釈しました。

妹の雛菜はもう物凄く可愛い。
兄ちゃん大好き。
兄ちゃんも妹を溺愛してる。(鋭二自身に自覚がない所がもうおかしいw)
え?どっからどうみても土間家の干妹だろって?
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(画像は、漫画版より)
こまけぇことはいいんだよん。

渡良瀬綾は期待の新人。
真面目クールなので、冷たいなどと陰で呼ばれているが、恋の事になると素が出ちゃいます。
赤面して、慌てて、すっ転んで。
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奥手で鈍感可愛い女の子。

あと、幼馴染の元カノも出てきます。
1巻時点ではまだちょっと分からないので割愛。

ラブコメのヒロイン達らしくどの子もキャラが立っていて、可愛い子ばかり。
そんな美少女達に好かれる鋭二という構図は、漫画やラノベにありがちです。
よくあるラブコメラノベなのか?
ちょっと違います。

唯一無二という特徴ではありませんが、本作には「一般社員・鋭二vs大会社役員」というもう1つのドラマが描かれていたのです。

鋭二がヒーローたり得る部分

どうしてもお上には逆らえないですよね。
目を付けられたくないし、左遷とか解雇(まぁ、普通は解雇なんかされないけど)がチラつく。
心の中では毒づきつつも、はいはいと平身低頭拝命する。
相手の役職が高ければ高いほど、一般社員は委縮してしまいます。
これが多くの人にとってのリアル。

でも、槍場鋭二は違うんです。
出来ない事は出来ないという。
決して感情的にならずに、しかし、怒りを滲ませて理路整然と無理だと説く。
業務を理解し、現場を仕切っているからこその視点でもって、現場を知らない幹部に楯つきます。

格好良いです。
決して真似できません。
当然役員には目を付けられてしまうし、こういうところが出世コースとは外れてしまってる理由なのですが。

そんな鋭二は外資系保険会社の八王子コールセンター主任。
一般的にコールセンターは離職率の高い職業です。
異常な残業を強いられて体を壊すというより、日々のクレーム処理で心を病む系でしょうか。
理不尽に苛まれれば、辞めたくなっちゃいますよね。
だけれど、鋭二はそれを見逃しません。
「社員の役目だから」の一言で、率先してクレーム処理にあたります。

机上で組み立てられた命令に対してはしっかりと意見をし、また、下の者には思いやりを持っている。
上司やクレーマーからしっかりと部下を守るので、上には疎まれていても下には慕われています。

まさに理想の上司です。
格好良いです。
ヒーローです。

あと一歩

しっかりと鋭二のヒーロー性を描いたうえで、役員との対決が描かれています。
そこには熱い逆転劇がある訳です。

中学生や高校生を読者としたラノベとしては、「サラリーマンがどん底の状況から大逆転をかますエンターテイメント作品」の水準を満たしています。
社会の理不尽も描けてるし、そこに立ち向かう鋭二の格好良さも光っている。

けれど、それはまだまだラノベというフィルターを通しているからこそなんですよね。
池井戸作品と比べてしまうと、カタルシスが足りません。
読者に大きなカタルシスを与えるには、相応の窮地を作る必要があると思うのです。
一言でいえば、鋭二の追い込み方がまだまだ足らないんです。
もっと畳みかけるように鋭二を絶体絶命の窮地に追いつめて欲しい。
1巻では、それなりに追いつめられますが、「それなり」なので割とあっさりと逆転しちゃうんです。

もっと追いつめられた鋭二を見てみたい!!
そして、そこからどう危機を乗り越えるのかを楽しみたい。

無理じゃないはずです。
きっと見せて下さると信じています。
だって強大なラスボスが提示されたのですから。

ラブコメと絡めた逆転のドラマ

立場的に弱いものが強いものを食う。
ジャイアントキリング的ドラマを内包する本作は、第1巻でラスボスになり得そうな存在が登場しました。
非常に狡猾で絶大なる権力を有したモンスターです。

結局鋭二はラスボスの掌の上で踊っていたに過ぎませんでした。
最後に意趣返しはしたものの敗北感は残ります。
ラスボスとの戦いは、鋭二が会社に居続ける限り続くのでしょう。
そして、ラブコメに於けるラスボスでもあります。
なんせメインヒロインである花恋の関係者でもあるのだから。
ラスボスが本気さえ出せば、鋭二と花恋の間を引き裂くのも簡単なはずです。

仕事でも恋でも圧倒的に優位に立つ存在が現れた。
1巻の敵よりも上位の存在なのですから、ラスボスとの戦いは熾烈を極めるでしょう。
徹底的に追いつめられる鋭二が拝めますね♪

その時、鋭二はどうするのか。
まだまだ先のお話になりそうですが、今から楽しみなのです。

終わりに

漫画版買いました。
絵が良い感じです。

原作も2巻を購入。
これが公開されてる頃には、読んでる予定です。

原作ラノベでも漫画版でも「29とJK」を楽しんでいきます。

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