実写「アラジン」感想。盗人アラジンを「許す」ための物語としての解釈

この記事は

実写「アラジン」の感想です。
ネタバレあります。

はじめに

アニメ版の「アラジン」を見たことのない希少種ことnurutaです。
そんな僕が実写版を見た率直な感想です。

盗人アラジンを「許す」ための物語

鑑賞動機は、ウィル・スミスさんが好きだからです。
格好良いよね。
好きなハリウッド俳優の1人です。

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©ディズニー

そんな訳で、ジーニーを目的に見に行ったのですけれど、ああ。面白いや。
面白い。
ディズニーらしい夢と魔法と冒険に満ち満ちた映画でしたね。

女性主人公が夢を見て、王子様と結ばれるという典型的なシンデレラストーリーの逆バージョンなのですね。
アラジンが貧相な生活から抜け出して、ジャスミン王女と恋に落ちて、結ばれる物語。
ただそれだと面白みが無いと判断したのか、原案の「アラジンと魔法のランプ」からそうだったのか…。
アラジンがその日1日を生きるためにコソ泥をしていたというのが、ポイントになってきていました。

いくら生きるためとはいえ、犯罪には違いありません。
オープニングで貧しい子に食べ物を恵むという優しさを見せてはいても、チャラになるほどのことではなくて。
そんな彼が幸せな結末を迎えてしまうことについて、どこか抵抗感のようなものを覚えちゃうのは仕方ないと思うのです。

どうやって、アラジンが盗人をしていたという事実を視聴者に忘れさせるか。
これが物語最大のポイントであったと僕は感じました。
罪を許して、結婚を許す。
そういう物語。

加点方式で、大きなマイナスをゼロにするための措置がありましたので、気づいた点を列挙。
1つ目、貧しい子供に食べ物を上げちゃう。
先程はチャラにならないと書きましたが、しかし、少なからずプラスにはなります。
自分自身食べるものに困っている中で、盗みで得た食料とはいえ、躊躇せずに分け与えることが出来るのは、なかなか出来ないことです。

2つ目、ジーニーに親友と認められる。
これメッチャ大きい。
1万年も「3つの願いを叶える魔人」業をやってきたジーニー。
セリフの端々からも窺えましたが、人間の醜い部分を嫌というほど見て来たのでしょう。
基本善性の彼は、人間自体を疑っている。良く思ってない感じでした。

そんなジーニーに好かれたのですから、相当ですよね。
泥棒という罪が「生きるために仕方なくやっていた」こととして、許された感がありました。

3つ目、ジャファーから国を救う。
ジャファーが国王になってたら、大変なことになってましたよね。
ジャスミンの母の祖国は滅ぼされ、アグラバーの人々も搾取されていたはず。
力による支配を目論むジャファーなのですから、間違いなく悪政を敷いていたでしょう。

ジャスミンを救っただけではなくて、多くの人々を救った偉業です。
大きな加点になっていました。

4つ目、ジーニーを自由にする。
またもジーニーに関することですけれど、彼はランプの主人に常に「3つ目の願いで自由にして欲しい」と訴えていたのじゃないでしょうか。
どこか人間は強欲ばかりではないと期待していたのかもしれません。
だとすれば、そんな想いは悉く打ち砕かれてきたわけですけれど。
紆余曲折あったものの、最終的にアラジンはジーニーを自由にするという願い事を言いました。

3つ目の願いで、いくらでも豊かな生活を送れることが出来たのに、それを自ら破棄したのです。
彼が欲深い人間ではないことの証左と言えます。

5つ目、これはおまけみたいなものですが、人知れずジャスミンの前から去ったこと。
ジャファーをやっつけて、ジャスミンが王位を継承して。
サルタン(元)国王もアラジンを認めてくれて、流れから2人の結婚OKという中で、しかし、アラジンは城から黙って去りました。

空気読めてたはずなんですよ、アラジンはw
「お、これ。俺、好きな子と結婚できるんじゃねぇ」って理解したはずです。
それでも、彼は黙って立ち去った。

ジャスミンは必ず追いかけてくるという卑しい計算をしていたとは思いたくないです。
この瞬間は、心から「ジャスミンと結婚したい」という欲を捨てていたはずです。
4つ目と同様に欲深くないということが見て取れるので、大きな加点対象ですね。

盗人も欲の為ではなくて、生きるためにやっていたということが、これらのことから浮き彫りになります。
だからといって、無かったことにはならないんですけれど、物語上では許されても良いのかなと思えるんです。
多くの人命を救っていますので、それを考慮すればより「無罪」感が持てるんじゃないかなと。

加点の積み重ねで、アラジンは幸せになる資格を得た。
だからこそ、最終的には物語の落としどころに納得出来て、面白かったという感想が持てたのです。

吹替素敵だった。

愛と夢と冒険と歌と。
ディズニーの全てが詰まった映画。

特にミュージカルとしての魅力は、「アラジン」を語る上では外せないと僕でも理解しています。
「ホール・ニュー・ワールド(A Whole New World)」は流石に知ってますから。

英語歌詞なのだから、ミュージカルを100%楽しむには、字幕版を見るにこしたことはありません。
然しながら、吹替版も負けてなかったんじゃないかと、字幕版を見てもいないのに自信たっぷりに言いたくなりました。

中村倫也さんと木下晴香さん、素晴らしかったですよ。
特に良かったのが、木下晴香さん演じるジャスミンがジャファーに立ち向かう決意を固めた場面。
あそこの歌の力強さと伸びやかさには、鳥肌が立ちました。
すんげぇぇぇぇぇと感嘆でした。

山寺宏一さんは言うまでもなく。
コミカルなジーニーは、嘗ての「マスク」でのジム・キャリーさんを彷彿とさせる名演。
歌声も凄かった。

この3名は、ミュージカル部分を担っているので、特に重要なキャスティング。
オリジナルの良さを決して傷つけない歌声を披露してくださっていると信じています。

吹替では、メインキャスト3名以外に印象的だったのは、ジャファー役を務めた北村一輝さん。
先日の「コンフィデンスマンJP 運勢編」での悪役も「上手すぎる」と感じていましたけれど、声優としても堂々の貫禄。
悪役の演技があまりにも巧くて、本当にプロ(本職声優)かと思いました。

北村さん演じるジャファーは、僕的一押しでしたね。

終わりに

ラストのダンス、圧巻だったなぁ。
全員キレッキレのパフォーマンスを、一糸乱れぬ調子で魅せてくださっていて、短い中でも大きな満足感がありました。
まぁ、本編でヨレヨレだったサルタンがキレッキレだったのには草生えましたけどw
役者ってすごい。

思ってた以上にアクション要素もあって、一切飽きの来ない有意義な時間を過ごせました。
楽しい映画でした。

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