「いじめるヤバイ奴」第1話を読んだ感想

この記事は

「いじめるヤバイ奴」の感想です。
ネタバレあります。

はじめに

オリコンニュースでこの漫画の事を初めて知りました。
www.oricon.co.jp
マガジンポケットで第1話を読んでみた感想です。

f:id:nuruta:20190612002128j:plain
©中村なん

漫画による教育

僕が子供の頃、いじめによる自殺が社会問題になりました。
そんな折、「週刊少年ジャンプ」で短期集中連載されたのが「元気やでっ」という漫画です。
当時からしても、「ジャンプ」らしくない異質な漫画でした。

どこまでもリアルで、まるでノンフィクションかのような作風。
いじめのリアルを描写していました。
主人公が自身に対するいじめに立ち向かい、周囲の協力もあって、それなりの問題解決まで持って行くという所は、「そんなに簡単に解決する問題ではない」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、落としどころを除けば「陰湿な世界観」が際立った漫画だったのです。

いじめる首謀者とその仲間。
クラスメイトはそこに乗っかり、担任教師ですらいじめに加担している。

胸糞悪いったらないですよね。
でも、「ありふれた光景」なのだと思う。
(教師が加担するまで行くケースは少ないかもですが、「見て見ぬふり」は当時の問題の一端ではありました。)

何故当時のジャンプ編集部は、このような作品を載せていたのか。
理由は簡単で、少年漫画雑誌らしく「いじめは良くない」ということを言いたい為です。

いじめをしてしまうのは、想像力が欠如しているからと考えます。
一部分かった上でいじめを振るう人間もいるでしょうけれど、学生のいじめに関しては大方想像力の欠如と見なせるんじゃないかな?
少なくとも、今はいじめに加担してなくても、将来する可能性の芽を摘み取ることは出来るかもしれません。
漫画を使った一種の教育ですよね。

いじめれば被害者はどうなるのか。
学校に来なくなるでしょう。(来れなくなる)
自殺してしまう可能性だってある。
少なくとも、間違いないのは、心に深い傷を負います。

心の傷は、癒えにくいです。
下手すれば一生残ります。

家の母がそうですね。
学生時代にいじめられて、心に傷を負っています。
大うつ病になった今は、当時のことをフラッシュバックしては苦しんでいます。

傷害罪と何が違うのでしょうか。

もし、自殺させてしまったら、どう責任を取るのでしょう?
警察に捕まって、服役を命じられた方がましかもしれません。
「罪を償った」という形は作られるので。
「社会的には」赦されるのですから。

けれど、実際は大方が刑罰はありません。
よほど悪質なケースでない限りは、せいぜいが少年院に送致されるくらいでしょうか。
もっと「軽い」罰が殆どな気がします。
人を自殺に追い込んでおいて、罪の意識も感じなかったら、そりゃもう人として終わってると思うのですけれど、「軽い気持ち」でいじめに加担して罪悪感に襲われても、誰も赦してくれないんですよね。
一生罪悪感に苦しめられることだってあるんじゃないかな。

こういった想像をちゃんと出来るようにする。
それだけでも、漫画でいじめ問題を扱うことには意義があると思います。

「加害者になる恐怖」に向き合う漫画だと信じてる

であるならば、「いじめるヤバイ奴」はしっかりとその役割を担ってくれるのではないでしょうか。

被害者が実は加害者で、加害者が被害者であったという構図は非常にトリッキーで、現実的ではありません。
落としどころを見誤ると、胸糞悪いだけのいじめ漫画になりかねません。
ただのフィクションになっちゃうんですよね。

そうではなくて、しっかりと「加害者になる恐怖」を描き続けられたならば、その時は想像力の喚起に繋がるんじゃないでしょうか。

僕はそういった意義のあるラストを迎えてくれる漫画であると冒頭の記事を読んで確信しています。
作者の中村なん先生は以下の様にインタビューに応えられています。

金曜の終電間際のホームで酔っ払い同士の殴り合いのケンカを見たんです。
時間にして10秒程度だったのですが、2人ともお互いボコボコに殴っていて、とても痛そうな光景でした。
すぐに駅員がきて収まったのですが、そのケンカを見て「痛そう」という気持ちに加えて、「人を殴ることって怖いな」とも思いました。

なんの躊躇(ためら)いもなくに生きている人間を殴るって、たとえ「殴ってもいい」と言われてもできることではないなと。
「加害者になる恐怖」とでもいうのでしょうか。
この感情はこれまでの漫画には多くなく、みんなに共感してもらえるんじゃないかなと思いました。

確かになと。
「殴れ」と命令されて、「分かりました」と簡単には応じられないですよね。

常識とか倫理観以前に、だって怖いじゃないですか。
もし、もしですよ。
打ち所が悪くて、殺してしまったらば…。

自分可愛さから、そんな危険な可能性がある行為はしたくありませんもの。

投獄されて、人生終わるのも嫌だし、「人を殺してしまった」という罪悪感に苛まされるのも嫌。
考えるだけで怖くて仕方ないです。

「加害者になる恐怖」ってあると思うのです。
先に書いたように、はっきりと「加害者」となり難いのがいじめの厄介なところですが、そこを上手く処理して「加害者になる恐怖」を読者に植え付けさせることが出来れば今作の勝ちであり、価値ですよね。

そして、「上手く処理」するためのトリッキーな設定なのだと思っております。

作者自身がいじめ問題のことを真剣に考えた上での連載。
道徳的に意義のある漫画なのだと思うので、安易な批判はせずに、最後まで読んでからにして欲しいです。

終わりに

いじめを冗長するメッセージが込められてれば、批判して然るべきですが、今作は真逆のメッセージが込められているはずです。
教育の一環として普及していっていい作品なんじゃないかなと思いました。

最新情報をチェックしよう!