絆と成長の物語 「劇場版 THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!」 感想

はじめに

「あれって喧嘩してるのかな?」
「違うと思う」
いつものように意見が食い違う真と伊織。
言い合う2人の仲を取り持とうと雪歩が割って入るも、「雪歩は黙ってて」と返される。
いつも通りの風景を見て、アイドル候補生達が呟きあっていたシーン。

この会話にこの映画全てが収斂していた。
「劇場版 THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!」感想です。
まさに絆と成長の物語でした。

絆と成長を描く為のリーダー春香

小さな構図がやがて大きな構図へと広がっていき、壮大なクライマックスへと進んでいく。
そういう物語。

スタートは、春香がリーダーに指名されたところから。
この事には大きな意味がありました。

この作品はプロデューサーの視点で語られてきた物語であり、今回敢えてプロデューサーを「蚊帳の外」に出す必要性があったのではないか。
テーマである絆と成長を描く為に。
そう感じました。
そこで、春香を指名した。
何故春香だったのかは、TVシリーズを見ていれば疑問にすら思わないところですね。
彼女を中心に765プロは団結し、765プロの皆が彼女を支えて1つの絶対的な絆を生んだ。
絆の中心にいたから春香がリーダーとなり、この事はまた、プロデューサーからアイドル12人を切り離す意味合いもありました。
語り部の遷移ですね。
「今後の問題の処理は全て春香に一任する」という意味合いで、プロデューサーが一歩後ろ、輪の外に自ら出た行為を示していた。

当然そこには物語的にちゃんとした理由があって、実の所こちらの方がスタートと言った方が良いのかもしれません。
プロデューサーの海外研修。
彼自身がレベルアップする為に、暫くプロダクションを離れるという決意を固めた事が本当の始まりで、この決意はまた、律子にも影響を齎してました。
彼の意志を尊重し、彼の為にこれまで以上にプロデューサー業を頑張ると律子は決意。
これは中盤で分かる事ですけれど、律子もまた劇場版が始まる前の時点から蚊帳の外に出ていたんですよね。

兎も角。
春香がリーダーとなった事で、2つのグループが形成されました。
アイドルグループとプロデューサーグループですね。

ただこのままだと物語は転がっていきません。
TVシリーズで丹念に描いてきた絆を壊すのは作品的に違うし、765プロアイドル達の絆はそのままに一つ石を投げて波紋を作る必要性があった。
そうしてアイドル候補生が加わってきたのかなと。

候補生7人が加わって総勢19名となったアイドルグループ。
物語が転がり始めました。

春香と可奈の絆

当たり前の事なんですけれど、765プロの面々と候補生達には「差」がありました。
合宿のダンスシーンなんかでも克明に描かれていましたが、振りが揃っている765プロとバラバラの候補生。
技量、経験の差でもあるんですけれど、ここはもう団結力の差でもあったのかなと。
1つとなって大きな舞台を成功させるんだという思いで団結している765プロとお互いの尊重も出来ていない候補生達の差。
絆が有るか無いかの差。

この「差」を先ずは提示されていたように感じたのです。
何度も言うようですが、この物語は絆を描いてきていた。
劇場版も絆を描いた物語であり、ここで提示された「差」を埋める物語なんです。
ラストに向かってこの「差」が埋まっていきます。

アイドルグループに最初に目を転じてみます。
春香と矢吹可奈。
この2人の小さな絆がやがて大きくなっていくという形。

可奈が春香を目標にしてたというのもありますが、確かに2人の間には絆が芽生えていました。
合宿中に見せてくれた2人のシーンには、温かなものがありました。

この2人似た者同士でしたよね。
「皆で頑張って成功させよう」って頑張っていた部分が。
ただちょっと違ったのは、春香は仲間と絆が出来ていて、可奈は出来てなかった事。
候補生同士のバラバラが形になって現れてしまって、可奈は舞台から降りてしまった。
んで、必死になって春香は可奈を呼び戻そうとしてました。
「本気でアイドルを諦めているように思えないから」という思いの一心で。

この2人の想いが、周りに波紋を広げて構図が大きくなりました。
明確な意味での対立という訳ではありませんでしたが、765プロと候補生達の間の対立構図。

765プロ達の意志は明確でした。
パフォーマンスのレベルを下げてでも全員で成功させようというもの。
春香をリーダーとして、彼女のこの決定に従っていこうという意志。
リーダーを信じ、多くは語らず、そっと支えてるだけ。
僕はここの塩梅が凄く好きでした。
ここで春香を全力で支えに行ってしまうとTVシリーズの繰り返しになっちゃうんですよね。
それじゃ成長を描けない。
あの頃と違って彼女達には強い絆があるから、ただちょっと支えてあげるだけでいい。
春香を信じ、大丈夫だからと後方から見守るだけ。

対して候補生達はまだまだバラバラで。
レベルの維持を望んでいたり、下げて欲しいと思っていたり。
可奈を切り捨てようという意見も出れば、可奈を待ちたい的な感じの子も居て。
纏まってない。

春香と可奈、2人の関係から始まった波紋が周りに影響を及ぼし、遂にはアイドルグループを二分してしまった。

プロデューサーグループの絆

春香と可奈の絆はプロデューサーグループにも広がりを見せていたのかなと。
可奈に手を差し伸べられなかったと落ち込み悩む春香。
アイドルを諦めきれてないのに嘘を吐いてしまっていた可奈。

春香を支えたのは仲間のアイドルだった。
可奈に「アイドルを諦めないで」と手を差し伸べたのが春香だった。

全く同じ事がプロデューサーグループでも描かれていました。
まだ自分が離れる訳にはいかないと悩み、渡米を延期しようと相談するプロデューサー。
アイドルを諦めきれてないけれど、プロデューサー業1本で頑張ると言っている律子。

プロデューサーの背中を押し支えたのが、「プロデューサー仲間」の律子だった。
律子に「アイドルを諦める必要は無い」と合宿中に参加を促したのがプロデューサーだった。

こうして対比させる事が可能ですし、すると、今度は律子と可奈も対比出来るんですよね。
可奈は自分に嘘を吐いてまでアイドルになる事を否定していたけれど、律子は違いました。
アイドル活動をしたいという気持ちは持ってるけれど、仲間の為に封印して前を向いている。
同じように「アイドルはやらない」と言っていても、実際は全く違って。
この「差」にも「仲間が居るかどうか」が関わって来ていました。
プロデューサーとの絆を持っていた律子と他の候補生達と絆を持っていなかった可奈の「差」。

プロデューサーグループの絆を演出する事で、可奈達候補生の間の絆の無さを改めて描かれていたという解釈。

アイドルグループの絆

春香と可奈の絆は大きな波紋となってしまいました。
物語は終盤へと雪崩れ込みます。

春香が動いたんですよね。
リーダーとして自分の想いを貫いた。
全員で頑張ろうと。

候補生達の間に横たわっていたバラバラの気持ちが結束した。
彼女達にもようやく絆が生まれて、1つ大きな前進を見せていました。

この一連の流れの中にプロデューサーと律子を蚊帳の外に出した意味が出ていたと思います。
春香達アイドルだけで問題の解決に当たらせる事が出来たのだから。
自分達だけで難局を乗り切れることを描く事で、765プロアイドルの成長を示せていたのではないでしょうか。

同時に春香の想いは、765プロダクションの絆を浮き彫りにしてましたね。
アイドル12人は勿論、その中に律子も居て、小鳥が居て、社長が居る。
そしてプロデューサだって入っている。
事務所全員の絆があるよと。

雨中の可奈捜索からアリーナでの春香の告白。
この流れで、遂に候補生達の中で絆が生まれて、765プロの絆が再認識された。

でもまだまだ終わりじゃ無かったんですよね。
アイドルグループの中の絆。
765プロアイドル12人と候補生7人の間の絆って、この時点ではまだまだでした。
萌芽はしてましたけれどね。
実が実ってない感じ。

「絆の出来上がり」は最後に取っておきましょうということで、ここからまた別れて練習を始めていました。
候補生達の中で出来たばかりの絆を成長させる期間とでもいうのかな。
アイドル19人が元通り12人と7人に分かれて練習を再開し、いよいよクライマックスですね。

アイドル19人の間の絆の結実

ライブシーン。
もうね、大スクリーンで見るべきダイナミックな映像でしたよ。
でかい会場を舐めまわすように躍動するカメラワーク。
映画館の大スクリーンを意識した大胆な画作りとそれに負けないアイドル達19人のダンス。

圧巻。

1曲フルコーラスのライブシーン。
時間的には短いけれど、短いからこその昂ぶり。
そして、物語のカタルシスが爆発した瞬間でもありました。

このライブシーンで19人の息の合ったパフォーマンスを魅せるんです。
凄いですよ。
小さな構図が大きくなり、結実した瞬間の大爆発。
ライブの成功は取りも直さず、19人のアイドル間の絆が結実した証左となっていた。
候補生7人がセンターに立ってのダンスシーンからは、彼女達7人の絆もちゃんと出来上がったんだねという事も伝わってくる。

何度でも書きます。
圧巻。

クライマックスに相応しいライブシーンでした。

真と伊織の言い合いに見る絆と成長の物語

冒頭に書きました会話。
765プロの絆と成長を如実に表す会話でした。

傍から見てどう感じるか。

春香から見て、候補生達の言い合いは仲間割れの喧嘩でした。
候補生達から見て、765プロの面々の言い合いは喧嘩では無かった。

また、同じ言い合いでもTVシリーズと比較するとまた違ってくる。
第10話「みんなで、少しでも前へ」でも真と伊織が言い合っていて。
この時は僕から見たら喧嘩でした。
一致団結して1位になるという目標を見てなかった感が強かったんです。
でも劇場版では違っていた。
互いを尊重し「より良いライブにする」という同じ目標を見据えての意見の対立。

絆が有るか無いか。
成長してるかどうか。
僕にとっては、この会話に765プロアイドル達の絆と成長の全てが見えました。

映画は「もう1つの絆と成長の物語」も組み込んでいましたね。
この域に候補生達が絆を育み成長出来るのかどうか。
それはこれからのお楽しみなのかもしれませんね。

終わりに

TVシリーズを見たことある人に言いたいです。

見るべき。

と。

TVシリーズを見た事無い人に言いたいです。

TVシリーズを見てから見るべき。

と。

映画としてきちんと完結していたとは思いますが、やはり彼女達の絆の出来上がりを知ってるかどうかでは感動も全然違います。
これまでの歩みをしっかりと認識したうえで、改めてこの映画を見る。
大スクリーンで鑑賞する。

そうして絆と成長を実感出来る。
そういう映画だったと僕は思いました。

NO IMAGE
最新情報をチェックしよう!