「虚構推理」が面白い!!!!!!

この記事は

「虚構推理」の記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

ミステリを構成する最も大事な要素

「ミステリを構成するにあたり、最も大事な要素は何か?」

人によって答えが代わる問い掛けかもしれません。
全ての人が納得出来る答えは無いかもしれない。
なので、敢えて「個人的には」という言葉を頭に付けさせて頂きますが、僕としては「世界観の提示」を挙げます。

例題を一つ出して、僕の考えの根拠を書かせてもらいます。

ある部屋で遺体が見つかった。
自殺、事故、殺人、全ての面から慎重に捜査が行われ、結果として自殺や事故、更にいえば病死の可能性は排除された。
およそ外部の介在が無ければあり合えない死に方をしていたからだ。
しかし、不思議な事に外と通じる全ての戸や窓には内側からしっかりと鍵が掛けられ、また、それらを外から施錠する術も痕跡も見られない。
壁や天井もしっかりとしており、抜け穴の類も発見されなかった。
完璧な密室。不可能犯罪。
殺人と断定される現場は、しかし、殺人とは考えられない状況に置かれていた。

稚拙な文章で、こんなミステリチックな状況説明を書いてみましたが、では、真相はどうなんでしょう?
単にこの文章だけを提示されれば、「何らかの人為的なトリックが使われたのではないか」と考えるでしょう。
現実的に可能と”思える”機械的、もしくは心理的なトリックを想像するのではないでしょうか。
ここにはそれを具体的に推理出来るだけの材料が提示されていない為、それ以上の考察は出来ませんけれど。

でも、でもですよ。
犯人がヤードラット星人だったならば話は別です。

瞬間移動など数々の超能力を使える彼らが犯人だったら、密室の説明は簡単についちゃいます。
もしも被害者がフリーザ様で、犯人が悟空だったら、やっぱり謎は謎で無くなっちゃうんですよ。

こういった類の「解決編」を何の説明も伏線も無しにやっちゃうと、それはもうミステリでは無くなります。
仮にミステリ小説として発表しようものなら、非難轟轟でしょう。
別の部分に面白味やミステリ的仕掛けが施されていようものなら、評価の対象に上ることもあるかもしれませんけれど、そうじゃなければ駄作。
「アンフェアである。」
ミステリ的に言えばこうでしょうか。
「推理する上で重要な条件が提示されていない」、「フェアでは無い」。
きっと、そういう評価しかされないでしょうね。

但し、こういう場合もミステリとして成立させちゃう術はあって、先にも書いたように「世界観の提示」の有無が左右してくるのかなと。
上の例で言えば、作品世界が「DRAGON BALL」と同じであり、その世界での密室殺人事件を扱っていると予め提示されていれば、何の問題も無かった訳です。

通常ミステリ小説の場合は、「現実の世界観」を相似としている為、このような「世界観の提示」は不要であり、読者も自然と現実に則した推理を展開させて愉しみます。
現実では説明できない「超常的な何か」を推理の根幹に組み込ませたいのであれば、必ずその説明はすべきなのです。

という訳で、今個人的には最もアツイ「虚構推理」の感想です!!!
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作風に適した絵

何が「という訳」なのか、全く伝わらないかもしれませんけれどw
この漫画の素晴らしい点は、色々あるんですが、一番に触れるべき点の触りだけを最初に書いてみました。
これを以て、では、「虚構推理」に当て嵌めるとどうか…という話は、最後にします。

なので、他の素晴らしい点について書いていきますね。
1つは「作画」について。

絵の好き好きについては、文章で表現し辛いんですよね。
なので、簡潔に書きますが「可愛くて格好良い」んです。
もうコミックスの表紙とか惚れ惚れするレベル。
感覚的に好きな絵であるのです。

が、「他者にお勧めする理由」としては使いづらいポイントなので、「作品に合っているかどうか」で語られてもらいますと、これがズバリ「合っている」と自信を持って言えます。

そもそも「虚構推理」ってどんな作品なのかから話すべきですね。
まあ、僕にもまだ分からないんですが^_^;
というのも、原作があって、そちらを読んでいないからです。

「スパイラル 〜推理の絆〜」や「絶園のテンペスト」など漫画原作としてもお馴染みの城平京先生。
氏が2011年5月に上梓したのが「虚構推理 鋼人七瀬」であり、この漫画の原作となっています。
この小説を未読なので、あくまでも帯の宣伝文句や、2巻までの漫画の内容から察する事しか出来ませんけれど…。

色々な要素で構成されているのですが、作品の根幹を成すべきなのはやはり「怪異バトル」と「伝奇ミステリ」なのでしょう。
「怪異」。
つまりは妖怪や霊など超自然的なモノが認められた世界観であるという事。
それらとのバトルが大事な要素の1つとなっています。

とすれば、おどろおどろしい雰囲気を出せて、かつ、迫力あるバトルが描けるかが「作品に合った絵かどうか」の見極めとして相応しいはず。
前者は、例えばこんな感じ。
公式サイトで公開されています第1話の1コマをご紹介。(本来こういうことしちゃいけないのですが)

怪異的なおどろおどろしい雰囲気がしっかりと出てると思うのです。
後者に関しては、まだバトルバトルしてるシーンがありません。
強いて挙げれば、第2話の琴子vs鋼人七瀬や第4話の九郎vs鋼人七瀬とかかな。
決着の無い途中過程でのバトルシーンなので、あまり見せ場が無いんですよね。
とはいえ、アクションシーンが無くとも、躍動感のある絵が描けるかどうかは語れると思います。

僕は、絵の勉強をしたこともありませんただの門外漢なので、頓珍漢なことを書くようですが…。
近年で最も躍動感を覚えたのは、やはり「進撃の巨人」ですね。
第1話の冒頭で調査兵団が巨人に奇襲を仕掛けるシーンから「すげぇ」と感嘆。
単純な絵の上手さとかを超越した迫力があり、構図やコマ割りの良さも手伝って、物凄いスピード感と躍動感を覚えました。

一番凄いと思ったのは、調査兵団の身体の描き方でしょうか。
このページの調査兵団なんか、かなり人間離れした骨格というか、漫画的なデフォルメをされた身体で描かれてますよね。
骨格を意識して身体を書いてしまうと、およそ描けない絵。
なんですが、だからこそ躍動感が感じられます。

これに関しては、分かり易いサイトを発見しましたのでご紹介。
イラストレーターの丘田ぽんちさんのサイトです。
http://www.okapon-world.com/lessons_p9.html
「身体をくねらせて、風が吹いているように描くと躍動感が出る」
確かに!!!

「進撃の巨人」の該当シーンでも有り得ない程身体をくねらせていますし、風も感じます。
躍動感を覚えて当然ということでしょうか。

話を戻しましょう。
片瀬先生の絵はどうか。
第2巻の表紙を置きます。
一枚絵なんですけれど、動きがあるんですよね。

虚構推理(2) (講談社コミックス月刊マガジン)

虚構推理(2) (講談社コミックス月刊マガジン)

漫画の中の絵では無いので、スピード線(流線)も集中線もありません。
つまりは、効果線による動きの効果が無い絵なんです。
それでも躍動してるように感じるという事は、絵そのものに躍動感があると言い切れます。

しっかりと風が描かれていて、髪や衣服が揺れている様が表現されている点。
キャラを棒立ちさせる訳では無く、くねらせて動きをつけている点。

丘田ぽんちさんの言葉をお借りするならば「身体をくねらせて、さらに風が吹いてるように描くと、躍動感がでて、動きが魅力的に見える例」そのものに思えます。
このサイトにも書かれてますが、プロの漫画家さんといえども、「躍動感を感じない絵」を描かれてる方に出会う事って存外少なくありません。
適当に漫画雑誌1冊を買ってきて、全作品に目を通せば、1作品位そういう絵の作品を見つけられる…というと暴言が過ぎますでしょうか…。
流石にそこまで多くは無いかもですが、それでも雑誌数冊あたり1作品くらいの頻度では見つけられる気がします。

今作の片瀬先生の絵は、そうではなくて、動きのある絵。
アクションやバトルを迫力一杯に魅せてくれると思うのです。
実際2話に於ける琴子の飛び蹴りのカットは、とっても良かったですもの。

ラブコメ

2つ目のお勧めポイントとしては、ラブコメです。
怪奇的な雰囲気を損なわない範囲ながらも、どこか読み易い「軽さ」を覚える要因としては、このラブコメ要素は見落とせません。

軽快な会話劇の面白味もさることながら、ラブコメの中心人物となる3人のメインキャラたちの立ち位置がとても面白いんです。

今作は、1人の男を巡る2人の女性の三角関係(?)を基軸に回っています。
主人公の岩永琴子は、19歳とは思えない幼い容姿をしている女の子。
中学生に間違われるほどのロリっ子です。

彼女が慕うのが桜川九郎。
とある理由から5年以上付き合った彼女と別れ、その隙を突いた強引な琴子の猛アタックに陥落。
琴子の彼氏になるも、「琴子と付き合っているのが心底嫌」と口にする程、琴子は九郎のタイプではなかったりします。

その九郎の「5年以上付き合っていた元カノ」が弓原紗季。
現在は警官となり、事件を通して琴子達と再会します。
あることから九郎の「正体」を知り、恐くなって別れるも、未だに九郎のことを引き摺っていたりします。
尚、見た目は九郎のドストライク。

既に琴子と九郎は正真正銘のカップルなので、三角関係になりそうも無ければ、ラブコメ要素も無さ気なんですけれど。
ちょろっと書いたように、結構複雑な関係なので、充分にラブコメ出来るんですよね。

先ず琴子と紗季は、九郎を巡る「恋敵」状態。
琴子はイマ彼のくせに九郎に好かれていないと自覚してるのもあり、また、九郎の好みドストライクな元カノの紗季を脅威に思っている。
紗季は九郎と別れたとはいえ、「九郎そのものを嫌いになった訳では無い」というちょいと複雑な事情もあり、今カノの琴子を面白く思っていない。
その一方で、自分は逃げてしまった九郎を受け入れている琴子に一目置いている節も見られる。

見事なまでにヘビとマングースよろしく的な関係であり、九郎を巡るあれこれで舌戦。
2人の言い合いが読んでいてとても面白いんです。
3話では、ネットで「自分には無い恋敵の特徴」についてついつい真剣に調べちゃう2人の様子が重なって、非常におかしいw

九郎が抱える「とある事情」。
片やそれを受け入れ、片や恐れ逃げてしまった。
作品の怪奇性とも切っては切れぬこの「事情」をラブコメに見事に落とし込んでいる。
2巻から本格的になったラブコメ模様は、作品に読み易さを加えていて、かつ、キャラの性質をしっかりと組み込んだものなので、凄く楽しいのです。

この作品はミステリである

「伝奇ミステリ」。
漸くこの話に入ります。

前提としてこの漫画(作品)は、「金田一少年の事件簿」とか「Q.E.D.-証明終了-」とかとは違います。
現実の物理法則、自然現象だけで物事を推測しうる世界観では無いということです。

先にも書きましたように、妖怪・霊など人ならざるモノが跋扈する世界観。
しかも、そんな超常的なモノが事件の核心に居るのですから、ミステリたりうる為にはそれらの説明が必要です。

1話では、ミステリ要素は殆ど見当たりません。
妖怪がいる世界観ですよという説明に割かれています。
2話で、遂にこの漫画のメインの事件が発生します。
本編突入です。やはりミステリしてません。

お待ちかねの3話で遂に「おおおおおおお、ミステリしてきたああああああああああ」となりました。
ちょいとネタバレ入りますが、琴子は「妖怪 あやかし 幽霊 魔 そういうものたちの知恵の神」をやっています。
人外のモノの世界に精通しており、つまりは、彼女のそれら世界観に関する言葉は正しいと捉えられるんです。

琴子が語る「妖怪たちのルール」に嘘は無いので、この「妖怪たちのルール」を「事件の推理をする上でのルール」にして構わない事になります。
読者としては、こうして「世界観の提示」がされたので、今後この作品を「ミステリでは無い」とは言えないんですよね。

うん。
3話からミステリとしての面白さが格段に上がりました。
「単純に人ならざるものである鋼人七瀬が人に災いをもたらしているので、琴子が退治(若しくは交渉による説得)をする」という単純な話ではなくなって、「鋼人七瀬は何者なのか?」という謎が提示されたのですから。

鋼人七瀬は幽霊の類で間違いはないけれど、琴子が言うように「妖怪たちのルール」からは大きく逸脱しているという謎。
幽霊という存在を認めたとしても、あまりにも「人間的すぎる要素を備えている」ことがおかしいという謎。
鋼人七瀬の生前の人物とされるアイドル・七瀬かりんの不審な死に纏わる謎。

世界観がしっかりと提示されたからこそ、生まれた数々の謎。
フェアな条件を以て謎が提示されたわけですから、ミステリとしての面白さが生まれています。

終わりに

物凄く好きな漫画なのですが、1つ懸念があるとすれば、あと2〜3巻もあれば終わっちゃいそうな点。
今のところ原作は1巻だけですからね。
どんなに膨らませたとしても、あと2〜3巻が限度なんじゃないかな。

こんなに面白い作品が5巻前後で終わっちゃうかもしれない。
それは嫌だな〜。
せめてその倍くらいは楽しみたいものです。

現時点で、原作の城平先生は漫画版には完全ノータッチらしいですが、漫画版の為に新作エピソードを作って頂きたいものですね。

虚構推理(1) (講談社コミックス月刊マガジン)

虚構推理(1) (講談社コミックス月刊マガジン)

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