第7巻 感想
「スーパー1・東北編」完結という事で、遂にスーパー1編が終わりました。
こう纏まった形で読み返してみると、他のライダーのクライマックスに比べると、やや見劣りを感じざるを得ないのは間違いなかったかな。
雑誌で読んでいても「ん?」と小首を傾げたくなるような締めでしたし。
というのも、ラストが「スーパー1の姿」ではなく「人間体・沖一也の姿」で終わっていたからですね。
どうも「ライダー」=「変身前の姿」という定義は頭で理解出来ていて、認めている事なんだけれども、実際にこういう風に見せられると「別人」として感じてしまうのです。
沖一也で敵を倒そうと、スーパー1で敵を倒そうと。行いとしては全く同じなのに、違うように捉えてしまっている。
やっぱりスーパー1の姿で、怪人に止めを刺して頂きたいという想い。
それを迫力のある絵で魅せて欲しいという願望が強い。
だからこそ、このラストにはいつものようなカタルシスを抱けなかった。
けれども、そこは「スーパー1編」の特殊な事情を鑑みれば、納得のラストだったんですよね。
別の記事でも書きましたけれど、このシリーズの目標は「バダンシンドロームの看破」であり、スーパー1が本当に倒すべき相手はバダンシンドロームという見えざる敵であった。
つまりは、一也がバダンシンドロームを克服し、スーパー1に変身する事自体が物語のクライマックスであり、また、それを市井の人々に伝播させ克服させる事が重要であったと解する訳です。
そういった意味でも、今巻で言えばZXの助けを借りて、ねぶたで竜を倒すシーンがシリーズ最大の見せ場だったのでしょうね。
そうはいっても、対大幹部戦もやはり素晴らしい見所であった。
沖一也はライダーでもあって、赤心寺の拳法家であるという事が見事に表されていたから。
上で不平を連ねたものの、物語的に人間体の姿で止めを刺した意義は大きく、これがあったから、このシリーズは綺麗に纏まっていたと感じます。
まあ、スーパー1としての活躍は、今後残されましたしね。
遁走したメガール将軍との決着は、当然スーパー1として着けてくれることでしょう。
だからこそ、ここで将軍を前線から引かせたのでしょうし。
という訳で、物語はいよいよ最終章の大詰め!!
東京でのデルザー軍団&ショッカーとの息詰まる大決戦に入っていくわけで、より一層分かりやすい盛り上がりが期待できるでしょうね。
暗闇大使の謎の暗躍など謎もばら撒いて、目が離せなくなっています。
もう一つ。物語とは関係ありませんが、どうしても城茂・荒木しげるさんの件は言及しないといけませんね。
第24話前半。ストロンガーがデッドライオンに発破を掛けているシーン。
この辺が本誌に掲載される少し前に、俳優の荒木さんが亡くなられました。
巻末の対談冒頭にも記されていますが、ライダーマン・結城丈二役の山口さん以来、歴代ライダー俳優としては2人目。
既にタックル・岬ユリ子役の岡田京子さんが27歳という若さで夭逝されている為、ストロンガー・タックルのコンビ共に亡くなられてしまったという悲しい事実。
この訃報には、僕も大変ショックを受けました。
初めて「ストロンガー」全巻をレンタルで視聴するなどして、故人のご冥福を祈ったり。(このような行為がご冥福を祈る事となるのかは甚だ疑わしい限りですが…。そこは気持ちで。)
村枝先生もやはりショックだったことでしょうね。先生はリアル世代なので、僕なんかより何倍もショックだったに違いない。
月マガ目次欄でも触れていらしたし、上記のシーンだってそう。
24話のストロンガーのシーンは、正直不要なシーンです。
物語の流れ的にも唐突ですし、恐らく本来構想に無かったんではないかな。
しかし、件の訃報もあり、思うところあって急遽捻じ込まれたのだと思います。
冒頭の茂のカラー扉といい、巻末の対談といい。
お話もちょうどデルザー編に突入するなど。
「ストロンガー・荒木しげる」が影の主役の巻であったと思います。
そう考えると、隊長ブランクと相対するストロンガーのセリフがまた違った味わいを感じさせてくれます。
「…嬉しいねぇ…
デルザー(てめえら)はブラックサタンと違って俺との戦いを」
自分の記憶を持つデルザーとの邂逅に喜びを覚える茂。
いつまでも覚えて貰えることは役者としても・人間としても喜びであると思いますし、少なくとも僕の中では荒木しげるさんはそういう役者さんです。
ライダーマンの立ち位置を振り返る。
さて。物語の「謎」に少しだけ立ち向かってみます。
殊更存在がクローズアップされてきそうな結城丈二。
彼は、この先一体どういう立ち位置になるのでしょうか。
先ずはおさらい。
第4の男としてライダーズに居る彼は、ひときわ異彩を放つライダーです。
元デストロンの科学者という出立もさることながら…。
顔を半分露出させたマスクもさることながら、改造部位が右腕のみというのも特徴ですね。
文献によっては、「仮面ライダーV3」以降(のとある時点で)全身手術を敢行したとあるようですが、この漫画に於いてはこの”設定”は採用されていません。
右腕しか改造していない”力に劣る”ライダーだからこそ、「SPIRITS」での活躍が光るんですよね。
第1部の「右腕の記憶」とか、改造人間では無いライダーマンだからこその戦い方だったし。
で、だからこそ、彼は今このような立ち位置に居るんでしょうね。
第3部第28話。JUDOの変身ショーで、JUDOはV3からXへと変身しました。
この様子を見ていた暗闇大使は、「やはりキサマ(結城)はプロトタイプでは無かった…」と述懐。
今巻収録の「新」第26話でも、JUDOがはっきりと「(結城など)知らんな」と断言。
この事から、結城ことライダーマンは、JUDOの完全体を作る為のプロトタイプでは無く、完全なるイレギュラーであるという事が分かります。
JUDOが戦った幻影のライダー達の中にも、ライダーマンだけはいなかったですしね。
そう。
この漫画に於いて「仮面ライダー」とは、「JUDOの器を作る為の実験体」なんですよね。
歴代の組織を使って、少しずつ改良を重ね、より失われた自らの体に近付けていくという遠大な計画。
1号から始まり、その完成形はZX(最後の者)という設定です。
Wライダーに改造されたV3でさえ、JUDOの計画の内だったというから、かなりの力技の設定ではありますけれども、そういう事になってます。
そんな計画とは無縁の存在であるのがライダーマン。
他のライダーとは唯一別の存在であることが示されている訳で…。
どうしてこういう立ち位置に彼を置いたのでしょうね。
おわりに
依然として、結城がバダン内部に潜入した意図は不明です。
ただ、結城の目的が何にせよ終幕に於いて最も重要な存在に居る事は確かではないかなと思います。
仮面ライダーって、一也の件で描いていたように「人間」なんですよね。
ただそれは精神的な部分であって、肉体は人間では無い事を認めている。
しかし、結城丈二・ライダーマンだけは精神も肉体も人間のままである。
結構重要な事な気がします。
人間を「人間風情が」と見下し、ライダーをモルモットとしか見ていないJUDOを倒すのは、”人間”である。
その打倒の最大の切欠を作るのが、ライダーの中でも最も人間に近い結城になるんじゃないかな。
根拠こそ無いんですけれどね。
人間と改造人間の狭間。
“中途半端”な立ち位置に居るからこそ、彼は大事な存在になる。
そう確信しております。
ところで、今まで結城は「大首領の考えで、幹部待遇で迎えられている」と言われてましたけれど…。
JUDOは結城の事なぞ知らなかったわけで。
とすると、結城を迎え入れたのはツクヨミの意志なのかもしれませんね。
暗闇が仕えているのはJUDOだけではなかったのだから。
ま。おいおい分かってくるでしょうし、この漫画はアレコレ考えながら読む作品でも無いと思ってます。
格好良いアクションとセリフに痺れる漫画ですから。
という訳で、次巻の感想に続くw
そうそう。
この7巻の続きは、12月発売の月マガで読めます(笑
雑誌派に移行するなら今がチャンスでっせw
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