ジャミラの事考えてると、加藤元浩先生の「ロケットマン」が読みたくなる

この記事は

「ロケットマン」の記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

最近「ULTRAMAN」を最近全巻購入して嵌り、オリジナルの方の「ウルトラマン」について調べています。
子供の頃は「仮面ライダー」派だった僕。
「ウルトラマン」はTBSの再放送や映画版をビデオレンタルしてたくらいでした。
好きな方だったけれど、正直然程詳しくありません。
なので、ちょっと調べているんですが、興味深いブログに行き当たりました。

「ウルトラマン『故郷は地球』は名作か?」 逆襲のジャミラさん

ジャミラと言えば、簡単にモノマネ出来る怪獣で有名なアレです。

怪獣の事は知っていても、その登場エピソードを未見だったので、どういう事か分からずこのエントリを読み耽りました。
このジャミラが登場する「ウルトラマン」第23話「故郷は地球」は人気No.1のエピソードだそうです。
何故1位なのか?本当に1位に相応しいのか。
逆襲のジャミラさんの記事では、その点について考察されております。
(逆襲のジャミラさんの上記リンク先記事は
「『ウルトラマン』全体について書いた長文の導入部となります。
単独では情報不足ですので、お手数ですが「カテゴリ:ウルトラマン」にお回りください。」
と書かれてますので、ご注意くださいませ)

本編を見てみたくなりましたので、レンタルして見てみました。
この記事は「故郷は地球」に関する感想から始まって加藤元浩先生の「ロケットマン」に繫げる事を目指して書いた記事です。
無事に目的地に着陸できるかは現時点では不明ですが、見事着地できるよう頑張りますw

ジャミラは可哀相か否か

ジャミラは可哀相な怪獣という事になっているようです。
簡単に物語を纏めます。

ある国にジャミラという科学者が居た。
彼は有人人工衛星のパイロットとなり宇宙へと旅立ったが、事故が起こって地球に戻って来れなくなってしまった。
ジャミラの本国はこの事実を隠ぺい。
彼を見限ってしまった。

時が経ち、不時着した惑星の環境のせいで怪獣になったジャミラは、自ら人工衛星を修理して地球へ舞い戻ってきた。
それを察知した科特隊パリ本部は、ジャミラの抹殺に動いた…。

というもの。

可哀相だと言われるのは、ジャミラの誕生経緯ですね。
元々普通の地球時だった彼は、本国に裏切られた末、怪獣となってしまった点。
そして、地球に戻ってきても怪獣として退治されてしまった点。
科特隊やウルトラマンからの攻撃に苦しみ、叫び声を挙げるジャミラの姿は悲痛なものでした。
成程、可哀相だというのは非常に分かります。

ただ、そうじゃないんではという意見が逆襲のジャミラさんのご意見ですね。
この記事内で、名作と思えない理由として以下のように触れられております。

ストーリーを簡単にまとめれば、宇宙で遭難してしまった宇宙飛行士が、どういうわけか(本国の宇宙局ではなく)「地球の全人類に対する恨みと呪いの心」を持ち、(全人類からしてみれば)いわれのない復讐をしにくる、という話だろう。つまりは逆ギレ、逆恨み、八つ当たりの類いだ。
それがどうして人気第一位の名作なのか。

ここは少し誤認されているんじゃないかなと本編を見て感じました。
ジャミラが地球に戻ってきた目的は”あくまでも地球人が考えたもの”なんですよね。
少なくとも劇中では、ジャミラ自身が己の目的を語っているシーンはありませんでした。
つまり、本当に復讐の為に戻ってきたのかは定かでは無い。

劇中で語られたジャミラの目的を鵜呑みにすれば、確かに「逆ギレ、逆恨み、八つ当たりの類いの話」になると僕も思うんですが、そうとは限らない。
勿論「そうとは限らない」という可能性の域を出ない空論であり、逆襲のジャミラさんの論は筋が通っています。

ぼくなりに想像するに、おそらくジャミラの人工衛星に異常が起こった時、まだ本国との通信機能は維持されていたのだろう。
そしてジャミラの本国は直接ジャミラに向かって、もはや宇宙空間での救出が不可能であることを告げてしまったのだと思う。
これを聞いたジャミラが「恨みと呪いの心」を表明したことは想像に難くない。

という考えは、十二分に考えられるものであり、これを否定する事は出来ません。
ようは、どう捉えるかですよね。

ジャミラを復讐者として捉えるか、または、被害者として捉えるか。
逆襲のジャミラさんは前者。
僕は後者で見てました。

ジャミラは「ただ単に地球に戻って来たい一心だった科学者」と捉えました。
別に復讐するという意志は無く、必死に持ちうる技術で衛星を直した。
その間に体は異形化し、心を失くし、遂には自我を失ってしまった。
「地球に戻る」事だけが彼の中に残り、戻ってきた。
ただそれだけ。

それを科特隊パリ本部は「復讐に舞い戻った」と解釈。
攻撃を指示し、ウルトラマンも「自我を失った人類の脅威である怪獣」を葬るしかなかった。

このお話を見て「正義が分からなくなった」という意見も見かけましたが、僕的にはウルトラマンの行為は正義そのものだったと思います。

イデが呼びかけるシーンがあるんです。
「本当に人間の心を失くしたのかよ」的な事を叫ぶんです。
同じ人間として。同じ科学者として。
イデはジャミラを救ってあげたいと心から思っていたので。
それを聞いたジャミラが一瞬ですが、逡巡するかのような仕草を見せるんですよね。

「好きで破壊活動をしている訳では無い」
「しかし、自我を保てずに暴れてしまう」
「ただ地球に帰って来たかっただけなのに」

このシーンから僕が感じたジャミラの想い。
こういう解釈をしたので、ウルトラマンの攻撃は何よりも優しく映りました。

ウルトラマンは何も怪獣や宇宙人を倒す事だけが使命では無いんですよね。
平和が保たれれるのであれば、見逃すことだってあります。
宇宙に帰りたがっていたシーボーズを科学特捜隊と協力して帰してやったり。
ジャミラも同じかなと。

地球に帰りたがっていたジャミラをそのまま棲ませる事は出来ない。
怪獣となってしまったので。
本人も自意識の外での破壊は嫌がっている節がある。
ならばせめて、地球の土で眠らせてやる。

水に溶け、土と一体となって死んでいくジャミラ。
その断末魔が泣いているかのように聞こえるので悲しいシーンに映りますが、ウルトラマンなりの優しさの末の行為なんじゃないかなって。

No.1に相応しいかどうかまでは分かりませんが、非常に物悲しい物語だったと思います。

科学者としてのジャミラ

このエピソードのもう1つの側面に「科学の犠牲」を描く目的があったのではないかと思います。
僕等が便利な科学の恩恵に与れている裏では多くの犠牲がある筈です。
ジャミラの件は、決して絵空事では無いという事ですね。

で、若しかしたら政治がそれらの犠牲を闇に葬っている事もあるかもしれません。
ジャミラと同じ境遇に立たされた犠牲者が居ないとは言い切れません。

「ジャミラはなぜ最後まで、平和会議場を目指したのですか。」という問いには、僕だったらこう答えます。
「科学は政界など巨大な権力に左右されていいものじゃない」…みたいな。
資金を供給してくれる人物なり組織なりがいないと研究する事も難しい分野ではあるんでしょうけれど、政治利用されたり、ましてや、蔑ろにされたり不当に扱われていいわけがない。
というのは、科学者に限らない訳ですけれど。

ただし、単純にジャミラは科学の犠牲になったと考えるべきではないのかなと。
再び逆襲のジャミラさんの記事を参照します。

ここでジャミラが「科学のために」犠牲になったと考えるのは、余りにうかつと言うものだろう。
そもそも宇宙飛行士というのはエリート中のエリートの科学者であって、普通は志願して、厳しい競争を勝ち抜いてようやく就ける名誉ある仕事だ。
宇宙で殉職するのは本望と言ってもいいかもしれない。
宇宙への限りない夢を追ったのは、まさに彼ら科学者自身だったのだから。

科学者ってこういうイメージ有りますよね。
いや、夢を追う人は多少なりこういう側面を持っている気がします。

「ロケットマン」はそういう物語です。(繋がったw)
作者は加藤元浩先生。「Q.E.D.-証明終了-」で有名です。
今作は「Q.E.D.」と並行して「月刊少年マガジン」誌上で連載されていた漫画で、文庫版も発売してます。
コミックスでは全10巻と比較的集めやすい尺かと。

世界を股に掛けた大冒険。
記憶と歴史に隠された壮大なミステリ。
宇宙に魅せられた男達のロマン。

とってもワクワクしたまま、いっきに読破出来る王道少年漫画です。
是非読んでみて欲しい作品なんです。
そしてこの作品の中に「ジャミラ」を感じて欲しい。
ジャミラが可哀相だと感じた人に読んで貰いたいかな。

「ロケットマン」とジャミラ

以下、「ロケットマン」のネタバレ。
これから読んでみようと考えている方は、読まないで欲しい部分です。

このマンガは2人の男の物語です。
その1人・R。
世界最高の情報機関でエージェントとして働くRは、任務を熟しつつ宇宙船を作っている男です。
何故Rはそうまでして宇宙船を組み上げようとしているのか。
この物語を彩る壮大な謎の1つです。

3巻でRの父親の遺体が宇宙にあるかもしれない事が判明。
やがて彼の父がどういう男だったのかが分かり、Rのロケットが打ち上がっては困る組織が出てきます。

ジャミラに準えたのは、Rの父・エルンストが「ジャミラそのもの」と解釈できるから。
宇宙飛行士を夢見ていたエルンスト。
その夢は叶わないまま大人になった彼は、しかし、ひょんなことから宇宙へ行く切符を手に入れます。
とある組織が行った軍事衛星開発の打ち上げ実験を企画し志願したのが彼だった。
ただ一人衛星に乗り込み、打ち上げられたものの実験は中止。
救助を向かわせる予算も無く、「人間が衛星に乗っていた」事実は伏せられ、エルンストの”死”は闇に葬られた…。

うん。
ジャミラそのものですよね。

さて、エルンストは復讐を誓ったのか?
自らの選択に後悔は無かったのか?
科学者としての人生に満足だったのか?

ジャミラと同じように宇宙に葬られたエルンストの出した答えは、加藤先生の「故郷は地球」に対するアンサーだったんではないかなと思いました。
…それはないかな。

終わりに

「ロケットマン」を再読して、やっぱり面白いな〜と。
王道少年漫画を読みたい方。
「Q.E.D.」大好きだ〜という方。
ジャミラが死ぬほど好きだという方。(いるのか?)

オススメです!!!!!!!

ロケットマン(1) (講談社漫画文庫)

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