「株式会社マジルミエ」第1巻感想

この記事は

「株式会社マジルミエ」第1巻の感想です。
ネタバレあります。

憧れの「職業」

警察官が人助けする正義のヒーローであり、立派な職業なのであるからして、仮面ライダーもウルトラマンもスーパー戦隊も立派な職業。
ならば、女の子にとってのそれは魔法少女である。

今はどうか知りませんが、僕が子供だった頃は、まさに「子供にとって、ヒーローは職業」だったんですよ。

故にかどうかわかりませんが、僕らやその上の世代が制作に周った現代において、「ヒーローを生業とするヒーローの物語」が定番化しています。
平成ライダーなら例えば「仮面ライダードライブ」、アニメなら「TIGER & BUNNY」等々。
枚挙にいとまがありません。

故に「魔法少女を職業とするヒロインの作品」というのは、新鮮さには欠けるかもしれない。
けれど、ひとたび読み進めると、あっという間に虜になる魔力がありました。

オッサンなので、一度として魔法少女に成りたいなんて思ったことは無いし、読後の今も気持ちは変わってないのだけれど。
それでも、「1人の社会人」として憧れを持っちゃったのです。

果たしてこの漫画は、どの世代をターゲットにしているのでしょうかw
感想です。

感想

「ジャンプ+」で連載されているのだから、対象年齢層は小学生から高校生、せいぜいが大学生じゃないかしら。
当然、僕らのようないい歳して漫画大好きな世代も想定されてはいるのでしょうけれど、「少年」を掲げてる以上、何処まで行っても未成年を主要読者層としているに違いない。
ならば、この物語は、少年少女たちにどう映っているのだろうか?

例えば、主人公の桜木カナは、どうしてもいくつもの企業の面接で落とされているのでしょうか。
受ける企業についてしっかりとリサーチを行い(現役社員すら知らないことまで把握するほど)、ピシッとしたリクルートスーツで身を固め、エントリーシートも作り込んで、本番に臨んでいる。
それなのに何故なのか?

就職氷河期だからか?
大手ばかりだからか?

この辺の背景は作中からは知り得ないので、一切合切無視すれば、株式会社MURAOKAの採用担当者の一言に尽きる。

「ご自分の言葉でありませんか?」

バイトでも入試でも何でもいいけれど、一度でも面接なんてものを経験したことがあれば、10人が10人思うことがあります。
「こんなんで、本当に『良い人材』を選別できるのか?」と。
自信をもってYESと答えられる超人もいるのかもですけれど、凡人が殆どの世の中です。
無理なんですよね。不可能なんすよ。

優秀な人材かどうかなんて、実際に入社させてみなければ分かりません。
ちょうど2話冒頭で「新入社員の立場から見た企業の実態」が描かれてるじゃないですか。
「どんな会社も入ってみるまで、その内実は分からない」って。
同じ。
採用担当者が見てるのは、だから、多くの場合はそこじゃない。

一緒に働きたいと思えるかどうか。
だから、参考書の言葉を並べ立てても響かないし、「自分の言葉で」と言ってくる。

けれども、小学生読者がこんな読み方をしてるかと言えば、まぁ、してないでしょうね。
曲がりなりにもサラリーマンしてるから、なんとな~く、こんな感じで読んでいる僕らとは、見えている景色が違う訳で。
小学生読者にとって「面白い漫画」になり得てるのだろうかと、とても疑問なんです。
もう少し「少年漫画らしい」「分かりやすい」展開を挟まないと、打ち切られてしまわないだろうか…。
不安でいっぱいであります。

ま、そこら辺はただのオッサンが考えても仕方ないので、オッサンなりの感想を書かせてもらえば、凄く面白いわけですよ。
やたらと現実的な就職活動を下地にして、見事にエンタメに昇華されていて。
しかも非現実的な魔法少女と言う職業漫画として扱っている。
そこに凄く惹かれたのです。

この1巻の構成なんて神ですよ。

前述したように「自分」を出せないでいるカナが、面接で落とされるところから始めている。
彼女の記憶力という特技と「魔法少女」がいる世界観とは思えない四角張った大企業のテンプレが見て取れます。

1話はそんなカナが、魔法少女のお手伝いをするエピソード。
臭いものには蓋的な大手企業の性格。
自分らのミスを棚に上げ、無償で手助けを名乗り出る面接者の行動を評価しない姿勢。
「ベンチャー企業」の対となる「大企業」の短所をしっかりと出している。

2話では、大企業の面接官が評価しなかったカナの「能力」をしっかりと評価するマジルミエ社長。
格好がアレだけれど、これも大企業ならば絶対に許されないことだよね。
良くも悪くもベンチャーの自由さが表現されている。

初任務を描いた3話を経て、4話では、社長がベンチャー企業を立ち上げた経緯が垣間見えます。
厚生労働大臣と直通の電話が出来る程の人物であったという驚きの一面もさることながら、そんな大物相手にも怯むことなく会話を続けられるところに強い信念が窺えます。

大企業にはしがらみが多いのでしょう。
魔法少女の世界でも同様で、それ故に、若しかしたら、自由に「人の役に立つこと」もままならないのかもしれない。
さらに最悪を考えれば、「大人の事情」で多くの魔法少女が命を散らしたのかもしれなくて、そこに強い憤りを覚えたのかもしれませんね。
何れにせよ、「正義にもとる現状」を打破すべく社長は、自身で起業した…かもしれません。

そんなことを想像させつつ、最後に「利益優先」な大企業の社長が登場して締め。

「魔法少女を職業とした漫画」という思い付きだけでスタートした漫画では無いのでしょう。
原作者コメでは、そんなこと書かれてましたけれど。
いやまあ、スタートはそうだったのかもだけれど、少なくとも連載時に深く作り込まれたのでしょう。

「もし現実に魔法少女が職業としてあったらば」というお題目からリアルな世界観を構築。
「社長がマジルミエを始めた理由」を軸にしたドラマが紡がれていくのかなと。
厳しい社会の荒波を魔法少女たちがどう乗り越えていくのか。
読み応えのある漫画になりそうな気配しか感じない第1巻でした。

終わりに

なんだかんだオッサン読者パワーで生き残れる気がする。
実際曜日別のランキングでは1位とか2位だし、その甲斐あってか結構推されてるみたいだし。
しっかりと最後まで完走して欲しい漫画。
面白かったですし、続刊は勿論買いです。

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