漫画メソッドを実写映像に落とし込む工夫が見受けられなかった「地獄先生ぬ〜べ〜」

この記事は

実写版「地獄先生ぬ〜べ〜」を批判してる記事です。
安易なドラマ化はいかんですよ。

はじめに

先日予約録画していた実写版「地獄先生ぬ〜べ〜」を視聴しました。
うん。

うん。

まあ、正直な感想は「ヒドイ」の一言。
基本設定だけを借りた全くの別物でしたね。はい。

キャスト(が合っているかどうか)は横に置き、尚且つ、設定の変更にも目を瞑っておきます。
高校生に変更された生徒達が無性にウザかったんですが、そこもご愛嬌とし。
実写化に於いて大切なキャラの立たせ方も原作準拠とは言い難いですが、これに関してもノータッチ。

何がそんなにまでダメだったのか。
個人的な意見ですが、「漫画的メソッドをどこまで再現するか」に着目して書いてみます。

漫画的メソッド

漫画的メソッド。
主にここでは、以下2つの意味合いで使わせて頂きます。

1つは、見た目。
かつて「銀魂」本編でも触れられていましたが、漫画やアニメのキャラクターの見た目は特徴が強く出ている事が多いです。
特に設定に非日常的な要素が強く出ている程、キャラの見た目も個性的な物になっている節があります。
極端な話本当にシルエットで誰か分かる位の特徴付けがされることもあり、実写化に於いてはこれが壁の一つにもなります。

2つ目は、必殺技の処理。
気功波の類だったり、超人的な身体能力を駆使したものだったり。
漫画ならではの技の数々をどう処理するのか。
バトル漫画(バトルを扱っている漫画)を原作としているならば、これも避けては通れぬ道ではないでしょうか。

これらを元にいくつかの作品を見てみます。
今回は主に見た目に絞っていきます。

「るろうに剣心」

先ずは好例として「るろうに剣心」を挙げさせて頂きます。
見た目は原作を意識し、再現出来る限りの手の込んだ作りとなっておりました。
見ただけで誰が何のキャラを演じているのかが分かるレベル。

外印など見た目を変更しているキャラもいましたし、十本刀の一部は少々チープなものになっていたことも事実です。
ただ、それを差し引いても再現度で言えば近年稀に見るという感じでしょうか。

やはり大事なのは「違和感無く見れるか」どうかだと思うんですよね。

作品世界に馴染んでいて、浮いてない。
コスプレに見えない。
特殊メイクだと意識することなく見れる。

元々原作の世界観が現実に則したものである為、キャラの再現に於いてもファンタジーを舞台とした漫画よりも”楽”というのもありそうです。
けれど、それでも原作のキャラの見た目を大事にしつつ、可能な限り、違和感無く再現するという点に於いては素晴らしいものがありました。

必殺技の処理についてですが、こちらは「あくまでも実写なんだ」というスタッフの作品に対するスタンスが垣間見えた(少なくとも僕はそう捉えた)点でした。
基本的には技を技として見せない演出だったというのかな。

飛天御剣流の数々の技は、時代劇で違和感無く見せるにはやや漫画的メソッドが強いものです。
これをそのまま実写で再現してしまうと、一歩間違えば作品全体が安っぽくなってしまっていたことでしょう。
処理するのは難しい思うんです。
だからなのかどうかは分かりませんけれど、技を技として見せるのではなく、飛天御剣流の特徴の1つである「身のこなしの速さ」という点を拡大解釈し、アクロバティックで剣術と云うよりも拳法に近しい動きを付ける事で”再現”されていました。

志々雄や斎藤もそう。
やはり焔霊、紅蓮腕、火産霊神などの見た目も派手で格好良い技の数々は明示こそされていませんでしたが、「火の出る剣を操る」という志々雄を表現するには最低限の部分はしっかりと再現。
牙突という技名こそ省かれていましたけれど(僕が忘れているだけで1作目で使われていたかもです。ちょっと自信無い)、牙突の構えを見せる事で斎藤っぽさも出していました。
二重の極みのような漫画的メソッドの強すぎる部分はオミットし、再現できる点に於いてはきっちりと再現する。

実写化に於いて”無理なく再現が可能なモノ”かつ”キャラを描くのに必要な点”を精査し、慎重に慎重を重ねて再現されていた。
そういう感想を強く強く抱けるものでした。
実写版「るろ剣」は、この辺のバランス感覚が秀逸で、漫画的メソッドを実写映画に上手く落とし込んでいたという印象が強いんです。

「THE NEXT GENERATION パトレイバー」

続いてはこちら。
まだ4話までしか視聴出来ていないのですけれど、取り上げさせて頂きます。

そもそも本作は、「漫画版やアニメ版の実写化」とは異なります。
原作を下敷きとし、その後の未来を舞台にしている為、原作から引き続き出て来ているのは千葉繁さん演じるシバシゲオのみ。
その為、1つ目のポイントである見た目は、論じることが適いません。
但し、原作のメインキャラの特徴を踏襲したような映画版のキャラ達。
見た目もどこかしら野明達を彷彿とさせるようなキャスティングでした。

さて2つ目の必殺技の処理に関して。
というても、必殺技なんて出て来ない作品ですので、ここではレイバーの再現度についてでですね。
これはCGを使っているので、再現出来ていて当たり前と言えばそれまでなんですけれど。
問題はレイバー(イングラム)のデザインです。

細部に関しては若しかしたら変わっているかもですが、基本の見た目は原作をそのまま再現していたんです。
原作の未来を舞台としているから当たり前なのかもしれません。
それにしても、「途中デザインの見直しが入った」の一言で、大きく見た目を変更できたでしょう。
それをせずに、そっくりそのままの姿で描かれている。

アニメと実写では思い入れとかは関係無いのかもしれませんけれど、原作のファンにとってこれは嬉しい事だったのではないかなと。
ゆうきまさみ先生の漫画版で。
或いはアニメ版で。
親しんだデザインのまま実写版でも再現されている。

レイバーは作品の顔でもあるので、レイバーの見た目を変更されてしまうと具合が悪いです。
これは大きいと思うんです。

見た目を重視して見る

キャラデザに特徴の薄い、シルエットだけでは何の作品の誰なのか分からない。
そういう「普通」のデザインを施されたキャラクターが活躍する漫画だっていっぱいあります。
その手の作品はそれだけで実写化向きと僕自身思ってしまいます。
壁の1つが無いんですからね。
あとは、ジャンルが実写化向きであればよりベターではないでしょうか。

そんな壁の薄い作品でも、なんとか原作に近づけようと努力されている跡が見て取れる作品もあります。
顕著なのは「20世紀少年」でしょうか。

浦沢直樹先生原作のこの名作が実写映画化された折には、多くの比較画像が作られました。
やっぱ似てるんですよ。
似せてるんです。
原作のキャラに似た俳優をキャスティングしただけでなく、メイクや衣装で可能な限り近づけている。
やはり「似ている」という声は多く目にしました。

(画像は拾いものです。)
小泉響子役の木南さんとか、動いて喋っている姿を見ても「そっくり!!」と声を出しかけるほど似ている方もいて。
キャスティングの拘りは半端じゃ無かったですね。

あとは、今年公開の「ルパン三世」もそうかな。
小栗さんは「サル顔」でも「特徴的なモヒカン」でも無かったですが、最低限ルパンに見える格好をしていて。
それは次元も五ェ門も銭形そうでした。
顔の似たキャスティングでは無かったけれど、衣装や小道具などで原作に寄り添っていたんです。
作品の内容的には「ルパン三世」ぽさはあまり感じられませんでしたが、見た目は確かに「ルパン三世」の実写化であるという印象を抱かせてくれました。
少なくとも初の実写作品である「念力珍作戦」と比較したら、「ルパン三世を実写にしよう」という気持ちは伝わってくると思うのです。

「地獄先生ぬ〜べ〜」

で、この作品ですよ。
TVドラマと映画を比較すんなよと言われても仕方ありませんので、最初にこの部分について触れておきます。
確かに両者を単純に比較するのは無意味です。
明らかに予算が違うでしょうから。

メイクにしろCGにしろ、普通に考えれば圧倒的なまでに予算の多い映画作品の方が出来の良いモノとなるでしょう。
キャスティングにしても、時間とお金を掛けて、「より原作に近い人選」が可能かもしれません。

それでもこれを言い訳に使って欲しくないというのが僕の本音です。
予算に関係無く、良いものは良いし、悪いものは悪いんです。
技術レベルが高く、予算が有ったとしてもダメなものが出来る事はとある作品でハリウッドが証明して下さいました。
(あの映画こそ「DRAG〇N BALL GT(ごめんなさい 鳥山先生)」と名付ければええんや)

また、僕が予算とか知りようも無いですし、制作の内情にも実の所興味がありません。
見たまんま。感じたまんまの感想を書かせてもらいます。

で、ダメだと感じた所は実の所見た目に全てが集約されます。
主人公のぬ〜べ〜は、原作の雰囲気や恰好を再現されていたと思います。
鬼の手にしても、違和感を覚える事無く見れました。
ただ、他が…。

玉藻役の速水もこみちさんのカツラとか、ゆきめの衣装とか…。
見た目の違和感が凄い。
でも一番”酷かった”のが、覇鬼。

コントかよ。

本気でそう感じたんです。
あの覇鬼初登場シーンは間違いなくコントというかギャグシーンのようなものでしたけれど。
それにしたって特殊メイクが酷過ぎでした。
違和感バリバリ。
あまりにも安っぽく、どうにもコント番組にしか見えませんでした。

実写版の「こち亀」にも言えることなんですけれど、コントとコメディドラマを履き違えてる感が凄いというか…。
敢えて「安っぽさ」を演出し、それすら笑いの種に変えるコントと「真剣にコメディを演じる」ドラマは違います。
コントだって演者は真剣ですので、「コントは真剣にやっていない」と言いたい訳では無いです。
演者というより(キャストを除いた)作り手の意気込み・本気度とでも云うのかな。

違和感を消し、不自然に見せず、実写映像に落とし込むのがドラマ(コメディドラマ)。
敢えて違和感を覚えさせ、不自然なままにすると、それはコントだよねという話。

なんていうのでしょう。
「これでいいや」というある種の妥協した姿勢が見えちゃったというか。
真剣に大変な想いで作られているスタッフ・キャストの方々には大変失礼な物言いだと自覚してはいますけれど、そう見えちゃったのです。
違和感や安っぽさを消そうと躍起になっている姿が想像出来なかったんです。
「20世紀少年」や「るろうに剣心」に感じた部分が思い描けなかった。

感想を回っていて、戦隊や仮面ライダーと比較している方もいらっしゃいましたが、どう見ても特撮ドラマの方が上。
平成ライダーにしても、CGはまだまだお世辞にも「違和感無く映像に溶け込んでいる」とは言えませんけれど、真剣に「子供騙し」として成立しています。
非現実な世界観を真剣に作っているからです。
普通の人間がスーツや着ぐるみを着ているという感じを微塵にも感じさせていない。

けれど、「ぬ〜べ〜」は違う。
「子供騙し」にも成り得ていない。
非現実な世界観の中に、現実が覗いて見えているから。
どう見てもメイクの鬼にどう見てもカツラ(カツラではなく、地毛を染めているのかもです)の妖怪教師。
ゆきめも見た目・能力描写共に妖怪ぽさを感じさせず。

「地獄先生ぬ〜べ〜」からは、漫画メソッドを消そうという努力があまりにも感じられませんでした。

終わりに

コント番組を作りたいのでしたら、オリジナルでいくらでも見せて欲しい。
わざわざ漫画に手を出し、ただでさえ難しい実写ドラマにするんですから、「漫画メソッドを実写映像に落とし込む工夫」を感じさせて欲しい。
格好良すぎる両さんとか、違和感バリバリの衣装を着たり、メイクをした役者さんはお腹いっぱい。
真剣に”バカ”をやってくれた「HK 変態仮面」のような作品を見たいんです。

予算の問題だったリ、時間の制約だったりでこの大事な作業が疎かになるんでしたら、初めから漫画には手を出して欲しくないかなと改めて感じたドラマでした。

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