この記事は
「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」の感想です。
ネタバレあります。
2020年夏、英雄死す
あまりにも唐突に、悲しいニュースが飛び込んできたのが2022年の夏のことでした。
いつものように横浜でポケGOをやっていた僕。
ハマボールイアスでレイドボスと戦うまでの隙間時間でyahooのニュース欄を見ていたら、あり得ない、信じたくない記事を見てしまったのです。
「ブラックパンサー」主演のチャドウィック・ボーズマンさんの死去。
MCUが大きな区切りを着け、新しいフェーズへと向かおうという矢先。
サーガの中核を担っていくであろう、中心で活躍して欲しいと願っていたチャドウィックさんの急逝には、正直言葉を失いました。
仔細に当時の状況を未だに覚えているのは、それだけショックだったということです。
あれから2年が経ちました。
主役亡き後の「ブラックパンサー」の続編が公開されました。
一体どういう物語が紡がれているのか。
これまでのMCU映画を見に行く時とは全く異なる感情を持ちつつ、鑑賞いたしました。
感想です。
ラストに凝縮されたチャドウィック氏への想い
ライアン・クーグラー監督を始めとした全てのスタッフ、キャストがチャドウィック氏の死を悼んでいる。
深い悲しみが全編に亘って溢れていたように思います。
象徴的だったのが、ラストシーン。
シュリが1人で死者との別れの儀式を行っていましたけれど、このシーンは本編の文脈から考えると少し不自然なのです。
ネイモアに殺された母ラモンダ。
相次いで肉親を失ったシュリは、海底王国タロカンに復讐戦を仕掛け、ネイモアの首を取る寸前まで追い詰める。
今まさに止めを刺そうとしたその瞬間、母の幻を見たシュリは、復讐を止めてネイモアに降伏を呼びかけ、戦いは終わった…。
そういった流れで、ラストシーンに向かう訳ですけれど、別れの儀式なのです。
普通真っ先にラモンダを想うものではないか。
けれど、実際にシュリが悼んでいるのは、兄ティ・チャラのみ。
ラモンダはまったく出てこないんです。
これは恣意的にラモンダを「排除」したんでしょうね。
ティ・チャラを、いや、チャドウィック氏への哀悼。
その為に作られたシーンなのでしょう。
スタッフ・キャストの負った哀しみが、シュリの涙にギュッと凝縮されているようでもありました。
個人的にはそれで終わっても良かったのですけれど、悲しんでばかりはいられないってことにしたかったのかな。
ティ・チャラには息子がいたという「希望」を見せてのエンディング。
直後の「我らの友 チャドウィック・ボーズマンに捧げる」に泣きそうになりました。
ブラックパンサーになるためのハーブを全て焼いちまった件
クーグラー監督が今作の脚本第1稿を挙げたのは、2022年7月のことらしいです。
その1か月後にチャドウィック氏が亡くなってしまい、失意の監督は引退も考えたらしく…。
そこから立ち直って、200ページに亘る改稿をして…。
主役が居なくなるという最悪の事態から、よくここまで破綻の無いシナリオを書けるものなのかと。
素人の僕には及びもつかない才能ってあるんですね。
タロカンの王ラモンダがメインヴィランという軸はそのままに、アイアン・ハートの絡め方からブラックパンサー復活の道筋、そしてチャドウィック氏の死までをもシナリオに見事に組み込んでくるなんて。
勝手な憶測ですけれど、監督が一番頭を悩ませたのはブラックパンサーの「復活」の方法だったんじゃないかなと。
そういや前作でキルモンガーがハーブを全焼させちゃったんですもんね。
まさかティ・チャラの後のブラックパンサー誕生なんて想定してなかっただろうし、当時はなんの迷いもなく撮られたシークエンスなんでしょうけれど。
これには参ったでしょうね。
思わずキルモンガーを「復活」させて、シュリに「余計なことしやがって」と文句言わせるくらいにはw
いや、笑い事じゃないですね。
何はともあれ、ハーブ復活までの道のりが本当に綺麗。
ここから全てを組み立てたんではないかって位、多くの要素がピタッと嵌っていて、無駄が無い。
多少長すぎた感はありましたが、これだけのことをやるには必要な時間だったのだという納得感の方が上ですかね。
シナリオは、非常に素晴らしかったです。
今回は字幕版を推奨したい
いつも通りに吹き替え版を見たんですけれどね。
まぁ、前作に比べたら百田さんの演技の上達っぷりが凄かったですけれど。
だけれどね…。
どうしても怒声に力が無くて。
声を張り上げるところは、本当に残念だったです。
「ワカンダ、フォーエバー」とシュリが叫ぶ重要なシーンもお陰で迫力が全く感じられませんでした。
普段吹き替え派の方も、今回は字幕版見た方が良いと思うっす。
終わりに
ブラックパンサーは帰ってくる!!!!!
でも、クークラー監督はこの先はまだ何も無いという。
ううううん。
帰ってきてくれるのは嬉しいのだけれど、やっぱりチャドウィック氏じゃないブラックパンサーは寂しい。
辛いなぁ。
辛いけれど、今作を見たら、シュリのブラックパンサーも納得出来たし応援していきたいとも思ったので、彼女での3作目に期待したいです。