「劇場版 名探偵コナン」が興行的に快進撃を続ける7つの理由【私見】

この記事は

「劇場版 名探偵コナン」のお話。

遂に100億突破!!!

「劇場版コナン」の快進撃が止まりません。
27年目26作目「黒鉄の魚影」で遂に興行収入100億円を突破。
1作目からリアタイで追ってる身としては、信じられない領域に来たなぁと感慨よりも驚きが先行しています。

初期は30億円行ったら大成功(この成功云々は僕個人の肌感覚であり、実際の興行としての成功・失敗の分水嶺ではありません。)。
30億円を超えたら狂喜乱舞してましたもの。

当時は100億行ったらなぁと夢想してたものです。
関係者でもない素人のくせに。

それはさておき、どうしてこうも物凄いシリーズになったのか。
理由について個人的な感想を交えて書いてみます。

尚、当然ですが、あくまでも僕個人による「~が理由でこうなったと思う」という所感であり、オフィシャルなものではありません。

理由1:オープニングでのあらすじ紹介

第1作目から定番となっているオープニング時の「これまでのあらすじ」。
「俺の名前は工藤新一。背後から迫ってきた男に気づかず。目が覚めたら、体が縮んでしまっていた!!」というお馴染みのフレーズから始まる一連のシークエンス。

幾度となく僕はこの「あらすじ」の貢献度について語っていますけれど、間違いなくこの効果は大きいよ。
観客は、毎年映画を見て、原作を追って、テレビアニメも欠かさないというコア層ばかりじゃありません。
初めての観客もいれば久々の観客だっている。

そういった観客に物語に入ってもらうには、どうしたって事前の説明はいるよね。
「劇場版コナン」は、その作品を鑑賞する上で必要最低限のキャラ紹介や人間関係を冒頭でおさらい出来るので、初心者でもハードルが低いんです。

幅広いファン層を維持できている最大の功績が、これだと僕は思っています。

理由2:人気キャラクター

キャラ人気依存だと最近は揶揄されていますけれど、誇れることじゃあないですか。
赤井だって安室だって元々原作からのキャラクター。
「映画オリジナルキャラクター」(白鳥刑事とか)ではないので、「コナン」が元来持っている魅力の1つなのですから。
ただ1つ言えるのは、昔からキャラ人気にあやかっていた部分はあったということ。

初登場時から高い人気を得た怪盗キッドが顕著。
第3作「世紀末の魔術師」、第8作「銀翼の奇術師」、第14作「天空の難破船」。
大体5作周期で登場しています。

平次も初期からの人気キャラクターの1人。
第3作「世紀末の魔術師」で初登場し、本格的な参戦は第7作「迷宮の十字路」。
キッドのような定期的な登場はしてませんけれど、現在までメインキャラとして多くの作品に参戦してます。

また、記念作となった第10作「探偵たちの鎮魂歌」はオールスターを謳った作品。
キッドも平次も揃って登場しています。

そんな中「劇場版コナン」の盛り上げに一役買ったであろう存在が作品外にもありました。
当然「ルパン三世」のことです。
2009年に放送されたテレビスペシャル「ルパン三世VS名探偵コナン」で奇跡の競演を果たした両者。
この作品の人気を受け、2013年12月に「ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE」が公開されました。
「劇場版コナン」では、同2013年公開の第17作「絶海の探偵」で記録した36.3億円が最高でしたが、今作は42.6億円を計上。
翌2014年公開の第18作から40億を上回るようになったのは、「ルパコナ」が無関係とは言えないと思うのです。
「ルパン」ファンの取り込みに成功したのではないでしょうか。

今のように毎年メインとなる人気キャラが居たわけではありませんが、初期から「人気キャラをメインに据えた作品作り」はされてきました。
中でも無視できないのが、黒の組織ですね。

理由3:黒の組織の登場

「コナン」の本筋に関わり、コナン最大の敵である黒の組織。
組織の出る作品は、昔から人気も注目度も高かった。

初登場は、第5作「天国へのカウントダウン」。
灰原が裏切っているのではという衝撃的な嘘予告もあって、凄く楽しみにしていたのを覚えています。
実際完成度高くて今でも好きな作品上位に入りますね。
世間的にも当時の最高となる29億円を叩き出しています。

次の登場が第13作「漆黒の追跡者」。
1つの転換点と言えるのではないでしょうか。
今作以前と以後では、興行収入が大きく異なります。
それまでは30億円を超えることが珍しかった(30億円越えは12作で3作品のみ)「劇場版コナン」でしたが、今作以降現在まで30億を切っていません。
今作の記録は、当時最高となった35億円。
yahoo!ニュースでも「劇場版コナンがここに来て興行収入過去最高を記録したのは異例である」という記事が掲載されていました。
その記事の中では、過去最高を記録した根拠として組織の登場が挙げられておりました。

第15作「沈黙の15分」の興行収入31.5億円をスタートに4年連続で右肩上がりの成績を上げていた「劇場版コナン」。
第20作「純黒の悪夢」もまたシリーズにとって大きな転換点となりました。
興行収入は63.3億円。
それまでの最高値から+18.5億円ですよ。
赤井と安室が同時に出演していたことも大きなプラスに働いているのは間違いないでしょうけれど、組織編の注目度の高さが窺える結果であると思うのですね。

普段「コナン」から離れている人も、組織が登場すると見たくなるものらしいですよ。

理由4:3代目監督・静野孔文の起用

未だに根強い人気を持つ初代監督のこだまさん。
人間ドラマの描写が巧みで、テレビシリーズには無くてはならない2代目監督の山本さん。
2人共7作ずつ作品を作った後に、15作目「沈黙の15分」から就任したのが静野さんでした。
(15作目、16作目は総監督に山本さん、監督に静野さんの体制。単独監督作は17作目以降。
当時諏訪Pが「静野さんには山本さんから人間ドラマの描き方について学んでもらいたい」と編成の意図を語っておられました。)

静野監督作の評判としては「アクションが過剰」、「推理が(少)ない」って意見が多く見受けられます。
前者は兎も角、後者はそんなこと無いと思っているのですけれど、まぁ感想・印象は人それぞれですから。

それはともかく、静野さんの起用は結果(=興行成績)としては「当たり」でしたよね。
興行収入は監督1人の力では無いし、平均値に意味など無いと分かりつつ、3人の監督期で平均の興行収入を算出すると

こだま監督第1作~第7作25.07億円
山本監督第8作~第14作28.04億円
静野監督第15作~第21作45.54億円

となり、頭1つ抜けています。

さっきも書いたように監督1人の力では無いので、あくまで参考記録程度にしていただいて。
個人的に静野監督の起用による効果は、「新しい風を入れたこと」に尽きると思っています。

テレビシリーズからそうでしたけれど、こだまさん⇒山本さん⇒佐藤さん⇒於地さんと監督は全員「コナンの関係者」なんですよね。
(山本さんは34話から、佐藤さんは3話から、於地さんは4話からテレビシリーズに参画。)
その流れの中で、「3代目監督」もテレビシリーズからがっつり関わってきた方でもおかしくなかった。

静野監督も劇場版の監督就任前からテレビシリーズには関わっていました。
2004年の第378話と2007年の465話です。
演出で参加されていましたが、たったの2回です。
やはりこの起用は「異例」に思えます。

「マンネリを嫌がり、新しい血を注ぎたかった」故の起用だったのではないかな?

理由5:主題歌ビーイング縛りからの解放

1996年の番組スタートから1997年3月までポリグラム所属のアーティストが主題歌を担当してきた「コナン」。
1997年4月以降はビーイングのアーティスト所属となりました。
(1997年4月公開の第1作「時計仕掛けの摩天楼」はポリグラム所属だった杏子さん。「変更」前だったのでしょうね)
テレビシリーズこそ今でもビーイング縛りで来ていますが、「劇場版コナン」では第16作「11人目のストライカー」で破ってきました。

主観ですけれど、ビーイングのアーティストってどんどんいなくなっていますからね。
昔は有名・人気アーティストが沢山在籍してましたけれど、今やB’zと倉木麻衣さんくらいでしょうかね。(ここら辺は異論あるでしょうけれども)
新人や無名アーティストでは販促効果も期待薄ですし、レコード会社の縛りを無くしたことは英断だったと感じます。

ただのタイアップでは無く、福山雅治さんの「零 -ZERO-」(「セロの執行人」)とか今年のスピッツの「美しい鰭」もそう。
アーティスト自身がシナリオを読み込んだ上で書き下ろしてくれていますので、作品の世界観にピッタリというのも相乗効果を生んでいるのでしょう。

理由6:脚本家

「劇場版コナン」の立役者は、監督こだまさん×脚本古内一成さん×劇伴大野さんであることは疑いようもありません。
3人のうち誰か1人でも欠けていたら、今日の「劇場版コナン」は無かったでしょう。

この項で取り上げたいのは、まさしく脚本担当。
「劇場版コナン」では、毎回テーマかメインのキャラが決まっており、そこから脚本家がプロットを考案。
出来上がったプロットを基に監督や青山先生らがアイディアを出して、完成稿に仕上げていくという段取りのようです。
(当然のことながら映像にしていく過程で完成稿が現場レベルで変わっていくこともあるようですが)

僕は当初青山先生が大まかな骨子まで考えているのかと思っていたのですけれど、そうじゃなかったのね。

閑話休題。
先にも書きましたように、「初代」メインライターであるところの古内さんは、シリーズに欠かせない存在だと思っておりました。
キャラクターの理解度、3要素(推理、ラブコメ、アクション)のバランス、伏線回収の巧みさ。
古内さんの脚本あってこその「劇場版コナン」というのは、言いすぎでしょうかね。
僕はそれほど古内さんの脚本が好きでした。

しかしながら、第18作「異次元の狙撃手」を最後に、古内さんは亡くなられてしまいました。
どないすんねんと不安に駆られていた中、後を継いだのが櫻井武晴さん。

「刑事ドラマの脚本家を起用する」という伝統を引き継いだのでしょうね。
櫻井さんはテレビ朝日系列の「相棒」や「科捜研の女」で多くの脚本を担当してきたライターさん。(後者はメインライター)
「コナン」には第17作「絶海の探偵」で初参加となり、やはり「新しい風」でした。

その後、青山先生の推薦で現役推理作家の大倉崇裕さんが参画。
初参加となった第21作「から紅の恋歌」は、ドハマりして6回くらい劇場に通いましたw

大倉さんが参加されてからは、櫻井さんとお2人で隔年で担当されております。

櫻井さんは大人向けの作風に強く、大倉さんは古内さん路線の踏襲って印象が強いかな。
ともかく作風が異なる脚本家さんが交互に担当されていることで、マンネリ感無く続けていられている気がします。

理由7:監督

7作ずつ交代を繰り返してきた監督ですが、第22作「ゼロの執行人」から大きな路線変更をしています。
22作目、26作目を立川譲監督。
23作目、24作目を永岡智佳監督。
25作目を満仲勧監督。

永岡さんは元々静野監督期からの演出スタッフで、「から紅の恋歌」では副監督を歴任。
(テレビシリーズでは2018年放送の891、892話を演出。恐らく劇場版監督を見越しての起用と思われます。)
立川さんと満仲さんは、全くの「外部」の方でした。

マンネリ打破を狙い、新しい血を入れることはギャンブルでもありますよね。
特に日本人は、なんだかんだ言いつつもマンネリ感に安心を覚えて、急に変わってしまうと反発することもありますから。
ただ、そうはなってないのかなと。
きっちりと「名探偵コナン」のフォーマットを守りつつ、作品作りをしてくださっているからなのかなと僕は考えているのですが、はてさて。

終わりに

他にも色々理由はあると思います。
プロデューサーが交代したことによる大々的な宣伝プロジェクトの効果とか。
チケット代が1800円から1900円に値上げしたこととか。(6月から2000円ですね。最大手が値上げするので、イオンや109なども追随するんだろうな)
特殊上映が増えたからとか。
芸能人キャストを本格的に取り入れるようになったからとか。

女性人気は昔から高く、定番のデートムービーだったのもありますが、安室・赤井人気で更に白熱した感は間違いなくあるでしょうね。
とはいえ、とはいえです。
つらつら挙げてきましたけれど、100億超え作品に成った本当の理由は、分からないんですよね。

昔から、それこそ1作目から僕の中では「面白い映画」だったから…なんですけれど。
勿論微妙な作品もあったにはありましたけれど、概ね満足度の高い映画でした。
殊更「面白さが跳ね上がった」ということもなく。
(「ハロウィンの花嫁」と「黒鉄の魚影」は例外として。この2作は「跳ね上がった」)

なんでなんでしょうね。

分からないけれど、好きなシリーズがこうやって大きな成績を上げてくれると自分の事のように嬉しいのも事実。
これからも成績を伸ばしていってくれると良いなぁ。

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