「劇場版 名探偵コナン 黒鉄の魚影」ネタバレ感想 原作愛に溢れた最高傑作

この記事は

「劇場版 名探偵コナン 黒鉄の魚影<サブマリン>」の感想です。
ネタバレあります。

最速上映終わりのテンションでお送りします。

旅先で「劇場版コナン」を見るという贅沢。
毎年有給取っての年一の「自分へのご褒美」ですが、今年はシリーズ初めて(だよね?)の「深夜0時最速上映」に行って参りました。

平日だし余裕でチケット取れるかなと思いつつも、用心をしてしっかりと予約開始と同時に買いに行って正解。
それでも何度かエラーで弾かれて、ぎっりぎり席を確保できました。
で、車いす席除いて僅か5分ほどで完売。

あんまり良い席は取れなかったけれども、それでも予約出来て本当に良かった。

雑談はこれくらいにいたしまして、感想です。

原作の組織編を映画化したような傑作

「時計じかけの摩天楼」
「天国へのカウントダウン」
「ベイカー街の亡霊」
「異次元の狙撃手」
「から紅の恋歌」
「ハロウィンの花嫁」
僕が特に好きな「劇場版コナン」です。
これらの作品を見るたびに「最高傑作」という言葉を用いていたかもしれません。

が、今回はちょっと頭一つも二つも飛び抜けていました。
ラブコメ、アクション、ミステリ。
コナン3大要素を全てバランスよく高次元に纏めつつも、ここにサスペンスという要素を加えてきている。

そう。
サスペンス。
組織映画の時に付け足される最強の奥の手が、今回は本当にとんでもなく素晴らしかった。

普通に怖かった組織

今までどこか間が抜けていた組織のメンツ。
そのためにやや興が削がれていた点は否めませんでした。
けれど、今回は全員がマジです。

それぞれの立場からきちんと行動の全てに理由が分かるようになっていた。
誰一人ミスらしいミスしてないんですよ。

1人ずつ見てみましょう。

まずはジン。
気に入らないなら仲間すら手にかけるこの男。
それが遺憾なく発揮されていました。
冒頭、キールの肩越しにニーナを射殺するシーンなんて、まさにラストの布石でした。
あの場面、わざわざキールの肩を貫く必要性って無かったのよ。
もしかしたら、射線上にキールがいたから仕方なくという点もあったのかもしれない。
ただ、そこを考慮に入れたとしてもやりすぎに思える。
敢えて理由を探すのなら、キールが射殺を躊躇ったように見えたからでしょうか。
そうかもしれない。
灰原らが逃げる際に「お前の行動はおかしいぞ」的なこと言ってましたから。
ともかく、冒頭からジンの冷徹な一面を見せ、さらに、ピンガは「ジンの失脚を狙っている」という立ち位置の男。
それならば、ジンが目障りなピンガを抹殺したとしても不思議ではない状況が出来上がっている。
理由なんてなんでもよかったのでしょう。
実際「連絡を忘れていた」と嘯いて、爆破に巻き込まれて死亡するように仕組んでましたしね。
キャラ的にもブレず、更には、今回下手も打ってなかった。

次に語るべきはウォッカ。
監督が「怖いウォッカが見れる」と仰っていたとおり、普段にない怖さがありました。
ピンガを使って灰原を拉致監禁。
灰原らを追い詰めるシーンのウォッカは鬼気迫るものがありました。
が、そこはウォッカ。
天然ぶりもちゃんと発揮。
キールの作戦にハマり、まんまと脱出の方法をゲロするわ、キールが縄抜け出来るように結んでいたのに気づかないわ。
相変わらずでしたw

3人目は、ベルモット。
彼女が灰原を助けるようなことをした意外な理由に声を上げそうになりました。
でも、こういうところ本当にベルモットらしいよね。
気まぐれというか、なんというか。
与えられた善意はしっかりと返すところは、本当にベルモット。
とはいえ、独断で灰原を助けることは立場上出来ないし、しない。
大義名分がなければ、ベルモットは動かなかったはずです。
しかし……。

4人目は、キールですね。
今回最大の功労者と言ってよいでしょう。
彼女の有能さをしっかりと思い知りました。
灰原に仕掛けられた盗聴器の存在を把握しつつ、あの手この手でウォッカやジンに対抗。
組織のメンバーとして立ち回りつつも、本職であるCIAとして民間人を助ける役目も全うしていました。

そして、ピンガ。
ミスしてたといえば、こいつが唯一ミスしてましたけれど、そこは今回の「真犯人」だから致し方なしですね。
コナンが指摘していたハンドサインの無知とカップを拭く仕草は、どちらも目立っていたので、僕ですら早々に「あ、こいつ犯人だ」と分かりましたw
ただ、コナンの正体を見抜いていたり、そこそこ強かったり、それなりに頭が良かったりと中々に優秀だったのではないでしょうか。
小物だったけど。

長々と書きましたけれど、今作の緊迫感はシリーズ随一でした。
脚本面での「ただただ怖い組織」が機能していたのは上述通りですし、菅野さんのBGMがこちらのテンションを盛り立ててくるんですよ!!
単純に使い方も上手いのでしょうけれど、今作は全編通してBGMがメチャクチャ良かったですね。
気持ちをせり立てて、どうなるんだという気分を高揚してくれるBGMが多くて、一層の緊迫感を持って鑑賞できました。

抑えつつ、しっかりと見せ場のあるアクション

作を重ねるごとに超人化してきてるコナンたち。
けれど、今作はそこまでには感じなかったかな。
相変わらずスケボーを使ったり、キック力増強シューズを活用したアクションは派手派手なんだけれど、人間やめてるレベルではなくて。
「原作の範囲内」のアクションとでもいうのかな。

例えば蘭。
至近距離からナイフを交わしたりしてるんだけれど、今までよりは間違いなく弱体化してた。
ピンガとの戦闘時の動きも超人的な感じではなく、「漫画的なプラスαを加えられた空手」ってイメージだった。
当然見る人の印象によって異なることだし、あくまでも僕個人の印象ではですけれどね。

スケボーアクションも抑えめだったし、カーチェイスもそう。
クライマックスのキックも同様かな。

じゃあ、今までより地味かというとそうではない。
蘭とピンガのバトルは、殺陣を意識したかのようなカンフーアクションで面白く見れるし。
カーチェイスは緊迫感あるBGMで囃し立てつつ、演出で派手に見せてました。
コナンの活躍もそう。
花火ボール射出ベルトのあんな使い方は今までにないというか。
海という舞台を活用した非常に面白みのある方法だったし、絵的な派手さもあった。
赤井さんの「とっておき」は言うまでもなくですね。

見ごたえがメチャクチャあるアクションシーンの数々でした。

灰原哀とのラブコメ

コナン(新一)、蘭、灰原。
絶妙な関係の3人を上手く物語に溶け込ませていました。

この3人のラブコメを描く時に大事なのは、灰原の蘭への想いだと思うのです。
最初は嫌っていた蘭のこと。
その感情がはっきりと変わったのが「網にかかった謎」。

名場面ですよね。
蘭を認め、また、姉と蘭を重ねている。
(蘭に抱きすくめられてる時に、灰原に「お姉ちゃん」って心のなかで言わせる脚本最高かよ)

新一のことを意識しつつも蘭も「大切な女性」なんですよ。
そういう灰原の複雑な想いが溢れていたな〜と。

「14番目の標的」を意識したあのシーンと最後の最後のあの衝撃のシーン。
そして最後の灰原のセリフ。
灰原哀という女の子が完璧に描写されていて、最高でしたね。

ボスは何故パシフィック・ブイの破壊を命じたのか

もう一度ベルモットの行動について追ってみましょう。

お婆さんに変装したベルモット。
お目当てのフサエブランドのブローチの予約に間に合わなかったが、灰原に譲ってもらうことで目的を達成しました。
この一件が、灰原を(今回だけは)助ける動機になっています。
(これが無ければ躊躇なく灰原を殺していたことでしょう。)

バーボンとともにパシフィック・ブイで一仕事終えたベルモット。
そこで老若認証システムの危うさに気づきます。
この件をボスに伝えると、返事を予測していた彼女は、一路海外へと飛び「宮野志保=シェリーに似た人物に変装」して、世界各地の防犯カメラに映り込みます。
さらには老若認証システムに細工をし、変装した自身が「シェリーとして認識されるように」して、ウォッカの「灰原とシェリーの同一人物説」を否定してみせました。

そうして細工を終えたベルモットは、最後にパシフィック・ブイごと老若認証システムを破壊する一役を担ったわけです。

一連のベルモットの動きですが、謎が1つあったんですね。
途中まで「何故」と感じたのが、「ボスに連絡した理由」でした。
灰原を助けるため?
これはノーです。
独断で助けるほど、ベルモットはシェリーを思っていません。
なにより組織の一員の行為としてありえない。
先にも書いたように「大義名分」があって、初めてシェリーに恩を返すことが出来るんです。

なら、その大義名分がボスからの勅命だったはずで。
ベルモットは予めボスにとっても老若認証システムが「パンドラの箱」であると確信があったようです。
ボスから破壊を命じられることを予測した上で、その命令を遂行する過程で灰原への恩を返すこととした。

つまり、ボスこと烏丸蓮耶にとって「今の顔がバレるのを恐れた」のでしょう。
烏丸蓮耶としての老人の顔では無いです。
彼が恐れたのは、顔認証システムではなく、「過去と未来の顔が予測されること」。

老人であった烏丸に未来も糞もないので、過去の顔ってことですね。
ということで、現在の烏丸は「若いときの顔」をしていることで確定ってことでしょう。
実際ラムは、ベルモットの危惧とは逆に老若認証システムを用いてボスを探そうとしていたようですし。

散々考察されてきたことですが、公式に明言されたようなものですね。

原作でも未だ明言されていない事実をこっそりと明かしてくる。
これもまた僕が「原作にありそうなエピソード」と感じた理由です。

凄まじい完成度でした。

原作の色々なトピックを絡め、過去の劇場版の要素も反映した贅沢な一本。
まさに「名探偵コナン」の全てが詰まったような映画でした。

全編待ったなしのノンストップサスペンス。
今年こそ100億を突破すると確信しました。

 

ちなみに。
劇場版恒例の来年の予告。
劇場全体から黄色い声が吹き荒れてすごいことになってましたwww
平次とキッドの対決を女性ファンの多くが待ち望んでいたようです。

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