何故ギャグ漫画のページ数はストーリー漫画より少ないのか考察する

この記事は

漫画のページ数についてあれこれ考えてみた記事です。
主にギャグ漫画に関してです。

はじめに

ページ数。気にしてみると面白い。
週刊漫画のストーリー漫画は1話当たり16〜22ページ程ですね。
多くは19ページが基本。
「サンデー」の多くは18ページかな。「マガジン」になると22ページくらいとやや多めという印象が強い。
3年前の「ONE PIECE」。
映画「STRONG WORLD」公開数カ月前は、尾田先生も多忙を極めていたのか17ページがデフォとなっていました。

ところで、「マガジン」には面白い逸話があります。
2005年の赤松健先生の日記に以下のような記述がありました。
参考:AI LOVE Network(2005年前半の日記帳)

ところで、(これは別に企業秘密ではないよね?)17号から徐々に、
マガジンの連載漫画の”デフォルトページ数”が減ります。基本偶数で、
ネギまの場合は18ページになります。(現在は19ページ)
これは、奇数ページだと間の広告などが増え、無駄に本誌が厚くなるので、
スリム化のための処置みたいです。エコ時代に相応しいですね。

今はどうなっているんでしょう?
今手元にちょうどある「探偵犬シャードック」のページ数が1話大体20ページですので、現在も継続中なのか…。

漫画の多くは、本を開いて左側のページ(雑誌で奇数ページ)から始まる事が多いです。
右側に作品の1ページ目が来ることもありますけれど、大概は左側ページから始まります。
すると、1話あたりのページ数が奇数(1話19ページ等)だと、作品と作品の間には1ページ以上余分なページを挟まないといけなくなります。
赤松先生の日記の「奇数ページだと間の広告などが増え」はそういう理由から。

これが全作品偶数ページになるとどうなるか。
雑誌の左側ページから始まった作品は、右側ページで終わります。
なので、その次のページから次の作品が掲載できる。
作品間の「余分なページ」が無くなり、雑誌全体のページ数の削減に繋がる…という感じ。

良し悪しは分かりませんけれど、なんだか面白いエピソードだなと当時日記を読んでいて思いました。

さておき。
ギャグ漫画のページ数って、何故ストーリー漫画に比べて少ないのでしょう?
先程ストーリー漫画について書きました。
週刊誌で16〜22ページ程。
月刊誌になると、ストーリー漫画は30〜45ページくらいでしょうか。

しかし、ギャグ漫画になるといっきにページ数が減ります。
週刊誌で約13〜15ページ。ページ数が1ケタの作品も決して少なくない。
月刊誌でもほぼ変わらず。
その代り複数話掲載(2〜3話)という感じが多いかな。

何故なんでしょうね。

ストーリー性

考えられる理由として最も有り得そうなのが「ストーリー性が薄い」というギャグ漫画の特性から来ているのかなと思われます。
ここでギャグ漫画と引き合いに出される事の多いコメディ漫画というジャンルについて考えてみます。

コメディ漫画はギャグ漫画と似ている部分も多く、作品をジャンル分けする際にどっちなのか迷う事があります。
そこで、ジャンル分けする際に着目すべきは、作品の内容よりも1話あたりのページ数にあるんじゃないかなと思うのですね。

コメディはギャグよりもストーリー性が高く、故にかどうかは分かりませんが、ページ数も比較的多いです。
統計を取った訳ではないのでハッキリした事は書けませんけれど、ストーリー漫画と同等か少々少ない程度が一般的ではないでしょうか。

同じように笑いを主としている2つのジャンルですが、ストーリー性を重視しているか否かでページ数にも差が出るようです。

なんていうか、コントと一発芸の関係に似ているんじゃないかなと。
コメディ漫画が比較的長い時間を使って演じられるコントならば、一瞬でドッと場を沸かせる一発芸がギャグ漫画。
そう考えるとギャグ漫画のページ数が少ないのも必然な気がしてきます。

ギャグ漫画の読み応え

もう一つ考えられるのが、「読者の読み応え」です。
上で挙げた赤松先生が日記内で良く言及されていたのも、この「読み応え」。
勝手に抜粋させて頂いた日の日記も、上記の続きとして

しかし、そのためちょこっと読みごたえが減ったりするかも?

として結んでいます。

この「読み応え」なんていうのも、人によって・作品によって様々。
好きな漫画ならば何十ページでも読みたいと思うし、多ければ多い程嬉しいのも事実。
んでも、多過ぎても「ダラダラとした感じ」を得る事も多分にしてあります。

同じく「マガジン」で活躍し、現在は小学館系の「月刊ヒーローズ」で執筆を続けている綾峰欄人先生のブログで「ページ数と読み応え」に関して氏が一つの見解を述べられています。
2007年8月1日のコメント欄にて

ページは長くても纏まってないと厳しいんですよね…勉強が必要ですよ

てな感じに。

で、これは漫画界全体の普遍的な考えなのかなと。
漫画賞の選考ページとか読んでいるとそう感じます。

例えば「週刊少年ジャンプ」の「ストキン炎」。
ページ数無制限が特徴の一つでもある賞ですが、これの選考ページには同じような文言が並んでいる事をしばしば目にします。
審査員の歴々曰く「ページ数が無駄に多い」と。
「31ページや45ページに纏めて欲しい」という意見が多いんですよね。
勿論かなりのページ数であっても構成が練られていれば、このような事は書かれないようですが、その際でもページ数に関しての言及は必ずあります。
「こんなにページ数が多いのに、よく纏まっている」云々という感じに。

この事からストーリー漫画には、ページ数に関してある程度の指標がある事が窺えます。
かなり横道に逸れますが、「ヒカルの碁」がこの賞の前身の「ストーリーキング」で入賞し、連載に繋がったと記憶しております。
やはりページ数無制限の賞で、「ヒカルの碁」も相当なページ数があったみたいです。
それなのに入賞できた理由の一つとしては、7〜8話くらいに細かく話を区切ったから…かもです。
あ。これは僕の頼りない記憶の中の話で実際とは異なる可能性があります。
確か「ヒカ碁」は1話ではなく、7〜8話くらいを応募していた…と思う(汗

閑話休題。
ちなみに、「31ページや45ページ」という数字は「ジャンプ」の別の賞である「JUMPトレジャー新人漫画賞」に由来しているのかもしれません。
この賞のストーリー部門のページ数が31又は45ページとなっているので。
月間賞は名前を変えつつ、昔っから存在している賞ですし、この辺りの募集要項も変化は無さそうですし。

話をギャグ漫画に戻します。
件の「ジャンプ」の月間漫画賞ですが、ギャグ漫画では
15ページ、19ページ、31ページ
の何れかから選べるようです。
ここでも、ストーリー漫画より少なく設定されています。

ギャグ漫画の読み応えは、少ないページ数で十分満足するものという定義があるのかもしれません。
まあ、実際そうかもですよね。
ギャグには、どうしてもテンポを求めちゃいます。
キレのある笑いをテンポよく見せて欲しいという欲求があって。
ページ数が多いと、それに応えるのは難しい気がしますし。

まとめ

そういえば「DRAGON BALL」は、ストーリー漫画にも拘らずギャグ漫画と同じページ数です。
13〜15ページがデフォでした。
これはギャグ漫画である「Dr.SLUMP」の名残なのかもですね。

長い事13〜15ページでの仕事が身に付いてしまって、そのリズムで作品を作る事に慣れていたんじゃないかなと。
「ジャンプSQ.」で連載中の「新テニスの王子様」がまさしくそんな感じですし。
基本的に週刊時代の1話19ページ…とはいかないものの、1話10数ページ程。
それを複数話(2〜3話)載せて”月刊誌のストーリー漫画相当”稼いでいる感じです。

で、「DRAGON BALL」でも、ナメック星編の頃2話掲載という事もしてました。
ストーリー漫画定番の1話あたりのページ数を増やす「大増ページ」ではなく、1話あたりのページ数は変えずに「2話掲載」という形なのもギャグ漫画の名残なのかもしれない。

色々と書いてきましたが、真相は不明です。
が、ギャグ漫画のページ数が少ないのには、きちんとした理由が背景にあるのかもしれませんね。
若しかしたら、4コマ漫画中心に一部のギャグ漫画のコミックスのページ数が少なめなのも、同じ理由なのかもな〜と思いました。
「読者を疲れさせない・飽きさせない為」の配慮なのかも。

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