「りゅうおうのおしごと!」第12巻感想 物語のラストシーンが見えた気がしたぞ!!

この記事は

「りゅうおうのおしごと!」第12巻の感想です。
ネタバレあります。

遂に描かれちゃった過酷な現実

つい「弱い方」を応援したくなります。
それは世間的に見てもメジャーな「応援の仕方」なのだと思う。
ある者は弱者が強者を破るドラマを夢見て、感動を覚えたいから。
ある者は自身とを重ね合わせて、勇気を貰えるから。
そして。誰もが夢を叶えるハッピーエンドを見たいから。

後の無い者が夢を掴み、先のある者は、未来で夢を掴んで欲しい。
そうした誰もが幸せになるハッピーエンドは、しかし、年齢制限がある世界では存在出来ません。
毎年「後の無い者」が現れるから、毎年必ず敗者が出てしまう。
そういった過酷な現実を、遂に突き付けられてしまったというのが、12巻の率直な感想です。

ただ、だからこそ、今作は名作たり得るのだと確信しました。

鏡州を全力で応援してた

勧善懲悪の物語ではない限り、必ずしも最後に笑うのが主人公サイドである必要はありません。
特にスポーツものとかだと、そうだと思うのですけれど、僕は「相手を応援できちゃうほど魅力的な対戦相手」が出てくる作品が大好きです。
どっちも負けるな、頑張れと心の中で応援しつつ読み進められる作品に心揺さぶられちゃうのです。

例えば、「SLAM DUNK」。
部活は3年間という期限が付いていて、どうしても「負けたら引退」という状況が生まれます。
3年生がいるチームは、それだけにどこも必死になってくるわけです。
中でも個人的に好きだったのは、藤真健司。
監督のいない翔陽高校で、プレイングマネージャーだった藤真。
頭脳明晰だし。
誰よりも熱いし。
チームメイト皆から慕われていて、どんな時でもスポーツマンシップに則った言動が出来る。
田岡監督の言葉のように「最初から選手として試合に出られていたら…」。
そう思わずにはいられないほど、魅力的な相手でしたし、その点悔いのようなものが残る選手でした。
選手専任の藤真率いる翔陽と湘北の試合を見て見たかった。
まぁ、藤真は引退しませんでしたけれど、この試合はどちらの高校も応援して読んでましたね。

本作の話に戻りますが、鏡州飛馬は、僕がずっと応援していたキャラクターでした。
どれくらい応援してたかと言えば、桂香と同じくらいには応援してました。
だって、メッチャ善い人じゃないですか。
勝負の世界で、もう後が無いにも関わらず、笑顔で後輩の面倒を見ちゃう。
彼のなにが良いって、腹の裡ではちゃんと奸計を巡らせてるところなんですよね。
今回だって、創多が負ければとか考えてる。
ちゃんと善性と悪性を併せ持つ人間らしい部分を持ちつつも、絶対に卑怯な手は使わないし、悪い考えを自省して正々堂々を貫く。
そして、手を差し伸べる。

もし彼が坂梨を励ますような一言を言わなければ、鏡州がプロになれてたかもしれなかったのに…。
坂梨に声を掛けたことを後悔するとか絶対にしないんだろうなぁ。

銀子だって、彼女の苦労とか悩みとかを散々知っている訳だから、勝って欲しいと思ってました。
でも、鏡州にも勝って欲しくて。
結末を読んだ今でも、正直複雑な気分です。
創多が大泣きして、夢を引き継いでくれたことがせめてもの救いでした。
あれが無かったら、僕の心の中はもっと荒れてたかもしれません。

これまではなんだかんだと辛い現実を回避してくれてました。
桂香とかね。
彼女のドラマも、「どうしても女流棋士になるんだ」という想いに強く心を揺さぶられたので、非常に感動しました。
挫折と苦労を散々重ねてきた末、漸く報われたのですから、そりゃ嬉しかったです。

今回もなんだかんだと鏡州の苦労が報われるものだとどこかで期待していたのですけれど…。
期待していた分、ショックも大きかった。
ただ、白鳥先生の言葉を信じるのであれば、アフターケアはこの先しっかりとしてくれそうです。
そこに期待します。

魔王が討ち滅ぼされる物語が始まる?

残酷な現実が突き付けられた。
これは、西の魔王による残虐物語のほんの始まりに過ぎないのかもしれないなと「感想戦」を読んで感じました。

於鬼頭の掲げた「自分の才能を知れば不幸は減る」という考えは、間違っていたのでしょうか。
主人公(八一)が否定し、怒りさえ覚えたのですから、作品的には「間違い」と見做すのが筋なのかもしれません。
けれど、「そうじゃないよ」というのが、「感想戦」で描かれていたのかなと。

於鬼頭って「不幸な人間」を知ってる側なんですよね。
「自分が死ぬことで、不幸にした人々への償いになる」的なことを本気で考え、実行にまで移しちゃうくらいには知ってる。
決して思い込みとかでなくて、そういう人間たちを見て来たはずなのですよ。

であるならば、「その努力で不幸になる人はいない」という八一の言葉こそ、「類い稀な才能を持つ」が故の誤謬。

八一は知らないはずです。
最愛の女性の苦悩を。
自身の才が、彼女を苦しめていた事実を。

ただただ勘違いをしているんです。
空銀子は、強い棋士であると。

その勘違いが。
好きだからこその間違った評価が。
知らず知らず銀子を蝕み、やがて彼女を不幸にしちゃうんじゃないかな…。

自分のせいで最愛の人を不幸にしてしまった。
そう自覚した時、八一は、本当に魔王になってしまうんじゃないかな…。

次巻から始まる新章は、いよいよシリーズの最終章になる気がします。
主人公が魔王に堕ちるところから始まり、その魔王が打ち滅ぼされるまでの物語が。

竜王のお仕事は、勇者を生む事。
自身が魔王となり、倒されることで、小さな女の子たちを勇者にすることが、八一に課された仕事。
あいと天衣、2人の勇者が八一という魔王を倒す物語。

その導入となるお話だったようにも思ってしまいました。

終わりに

八一、魔王になる前に、本物のロリ王になりました。
女児とキスするとか、マジロリコン。

12巻のロリ王は、
「この俺が、小学生の気配を感じられない……だと?」
という名言も飛び出すなど、最初から最後まで非常に絶好調でしたねw

その中でも最大のトピックは、やはり天衣とのキスですね。
まさか…でしたよ。
本当に不意を突かれたのかと疑わしいレベル。

この一連のシークエンスですが、伏線ですよね、きっと。
帰りの車内での天衣の可愛さにごまかされそうになりましたが。

天衣がキスしたのですから、いつかあいだってすると思うのですよ。
じゃあ、いつかと言えば、クライマックスしかないのかなと。

あいが魔王八一を倒して、キスをすることで、八一を人間に戻す。
りゅうおうになった八一をロリ王に戻してあげる魔法のキス。

穿ち過ぎだと自分でも思うのですが、貴重なラブコメシーンまで伏線に思えてきました。
それもこれも「感想戦」のせいですよ。
あんな不穏なラストを読まされると、どうしても…ね。

まぁ、どうなるかは分かりませんが、新展開に大いに期待して、今回の感想は終わります。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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