探偵の永遠のライバル・黒くて怪しい真犯人さんを語る

はじめに

全身黒タイツの憎いヤツ。
漫画のミステリーの影の主役である・真犯人が人気です。
「名探偵コナン」の真犯人なんかフィギュアになりましたからね(笑
汎用性高そう!『名探偵コナン』の犯人フィギュアが登場―凶器パーツも充実 | おたくま経済新聞
最初聞いた時は「誰が買うんねん」と思ったものですが、なかなかどうして注目度が高いと聞いてビックリ。
なかなかに人気があるようですね、真犯人は。
フィギュアになって、それがある程度売れるっぽいですからね。
誰が買うのか…。

人気の一端を示す…というと大袈裟になりますが、ニコニコ動画にはこんな動画も上がってます。
元ネタは「お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!」のエンディング。
このエンディングを基にした多くの動画が上がってるんですが、これはその中の1つ。
「名探偵コナン」の真犯人にスポットを当てています。

あまりのくだらなさに初見時は大笑いしましたwww
動画のコメントにもあったと思うのですが、こうも人気なのは、やはり表情の豊かさからくるのでしょう。

そんな真犯人ですが、登場作品によって描かれ方は様々。
そこで、いくつか取り上げまして、作品別に見てみます。

以下全身黒ずくめのシャイなヤツの事を敬意を表して「真犯人さん」とします。

「金田一少年の事件簿」

そもそも全身黒ずくめの真犯人さんの登場は、「金田一少年」が最初だと言われています。
小説とは異なり、絵で魅せる漫画という媒体でミステリをやる時に、犯人の素顔を読者にばらさない為の工夫。
それが老若男女関係無く一定の姿形をした黒ずくめという外見になったと。

とはいえ、実の所序盤では彼らの出番って殆ど無かったりします。
出て来ても数コマ。
無表情でセリフも無し。
犯行を行う瞬間の様子が描かれる時に出てくるくらいなんです。

こうまで登場の少ない理由は、「金田一」歴代の犯人の殆どが”怪人”に扮してるから。
ホッケーマスクを被ったり、夜叉の仮面を身に付けたり、どこぞの民族衣装?の仮面をしたり。
コスプレイヤーの集まりである「金田一」の犯人達は、真犯人さんになる事の方が少ないんです。

そんな「金田一」の真犯人さんが、初めて大きな活躍を見せたのがファイル7「異人館ホテル殺人事件」です。
お得意の「物陰からこっそり探偵を覗く」という必殺技を披露し、目障りな探偵=はじめを殺す事を決意する真犯人さん。
なんとも大胆な行動に出ます。
ホテルの内線電話を使ってはじめに直接電話を掛けるんです!

これはもう凄いです。
探偵を罠に嵌め、推理劇から退場させるという一世一代の見せ場がやって参りました。
ファイル6までのモブと見紛うばかりのちょい役しか貰えなかった下積み時代を経て、華々しいまでの活躍を見せた真犯人さんの「デビュー作」でした。

ところで、「正体を伏せる」という意味合いで、真犯人さんは、文字通り真犯人以外の方でも扮することがあります。
その中で僕の好きな真犯人さんの出演方法が2つあります。

1つ目は、謎解き出演時の真犯人さん。
はじめが事件の謎をすべて解き明かし、関係者全員の前で謎解きをするシーン。
この謎解きシーンは大きく2つの状況に分ける事が出来ます。

1つは、容疑者を横並びに集めて、「犯人はこの中にいる!」と宣言してから始めるパターン。
もう1つは真犯人を罠に嵌め、追い込んだ状況から始めるパターン。

後者のパターンの初出はファイル6「悲恋湖伝説殺人事件」。
はじめの罠に嵌ったジェイソン(真犯人さん)。
大勢の真犯人さんに取り押さえられてしまいます。
当然ジェイソン以外の真犯人さんは、殺人鬼ではなく、ただの容疑者達です。

僕はこの出演方法が凄く好き。
ギリギリまで真犯人の正体、この事件の場合ですとジェイソンの中の人が誰なのかを読者に伏せる為に、容疑者全員を真犯人さんにしてるんですよね。
ジェイソン以外の真犯人さん達がセリフを1つ言う度に、中の人が誰なのか判明。
次々と真犯人さんから素顔に戻る容疑者達を見て、僕等読者は「ジェイソンは、コイツじゃないのか〜」となる。
1人、また1人と容疑者が減っていき、まさか…というところで本命の真犯人さん(この事件ではジェイソンね)の中の人がドーンと描かれる。
ミステリ漫画ならではの演出であり、真犯人さんの輝かしい実績の1つでもありますね。

2つ目は、これまた真犯人以外の人間が扮した時の真犯人さん。

上記画像左はファイル8「首吊り学園殺人事件」出演時の真犯人さん。
特徴的な髪型が隠れて無いですよ仁藤君。
この先誰が殺されるのかが分かる仕様になってました。

右はファイル35(20周年記念シリーズ第1作)「人喰い研究所殺人事件」出演の真犯人さん。
1話目ラストページでの出演なんですが、どことなく内股になっていて、あれこれ女性では?と思ったら、2話冒頭で女性だと判明。

特に正体を隠す必要の無い時の真犯人さんは、ちょっとだけ素顔を覗かせている。
オチャメですね♪

「Q.E.D.-証明終了-」

「Q.E.D.-証明終了-」での真犯人さんといえば、第36巻収録「Q&A」。
真犯人さんと登場人物達が対面し、登場人物がとつとつと「この島で何が起こったのか」のあらましを説明していくという構成です。
主な登場人物は7人。
探偵役の燈馬君、ヒロインの可奈と燈馬の妹の優。
容疑者は4兄妹。長男、次男、三男、長女。

最初は燈馬君が真犯人さんと対面し、何が起こったのかを話します。
続いて、可奈と優。
次に長男。
その後には、長女、三男、次男の順で真犯人さんは対面を…ってアレ?

そう。
真犯人さんは登場人物全員と1対1で面談しちゃうんです。
「どういうこと?」
「真犯人さんの中の人は誰?」
混乱する中、思いがけない真相が飛び出してきます。

ネタバレになるのでこれ以上は書けないのですけれど、「老若男女同じ姿」という真犯人さんの身体的特徴を使った読者を騙す高等トリックが仕掛けられていました。
いや、まあ、多少語弊があると言いますか、大袈裟かもですけれど、真犯人さん出演シーンとしては、特筆すべきエピソードでした。

「名探偵コナン」、「サイコメトラーEIJI」

「名探偵コナン」でも「金田一」同様調べてみると、初期は出番が少ない真犯人さん。
「金田一」のように怪人になりきるコスプレイヤーは少ないのですが、作品としての特徴が真犯人さん登場の少なさに現れています。

「コナン」の特徴とは

  1. 連続殺人が少ない
  2. コナンら主要人物が第一発見者になるケースが多い
  3. 倒叙型ミステリ(犯人が予め分かっている物語)も多い

1つ目と2つ目の特徴は、即ち「真犯人さんが犯罪を行っている場面の描写が少ない」という事。
既に犯行を終えた後にコナンらが出て来るので、出番自体が少ないんです。
3つ目は、そもそも真犯人さんが出てくる意味がありません。

そんな少ない見せ場の中で、キラリと光る存在感。
フィギュア化まで漕ぎ付けた「コナン」の真犯人さんの活躍シーンを一部ピックアップ。
「ピアノソナタ『月光』殺人事件」(第7巻)で初といっていいアクションシーン・窓から華麗に逃走を披露。
ちょっとした明かりでも素顔がばれてしまうので、逃げ足の速さは大切ですね。
「資産家令嬢殺人事件」(第9巻)では、睡眠薬を飲ませた蘭を溺死させようとするなど、大胆な犯罪に出ています。
通常状態の蘭だと返り討ちに合ってしまうので、眠らせてから襲うという頭脳プレイ。
流石です。

でも、人気の理由である豊かな表情を披露する場面ってまだ少ない時期。
ハッキリと表情を出してきたのは第21巻収録の「青の古城探索事件」くらいからでしょうか。
ハアハア言いながら、幼女(歩美)を追いつめる姿が眩しいです。
ザ・犯罪者って感じで輝いてましたね。

この辺を境にして、徐々に真犯人さんの出番が増えます。
第26巻「命がけの復活」では遂に「殺してやる」という決めゼリフを披露。
目標を掲げ、それを達成すべく、努力を惜しまない直向きさ。
やる気が見て取れますね。

全身黒ずくめという一張羅を貫いていた真犯人さんですが、31巻にて遂にファッションに目覚めます。
剣道着を着こなす真犯人さんの勇姿がこちら。

以降、色々な服を着てオシャレに磨きをかけていくことになります。

そんな個性豊かな「コナン」の真犯人さん。
さてさて、アイデンティティ出しまくりの真犯人さんと言えば「サイコメトラーEIJI」も外せません。
殆どの真犯人さんはトラウマを抱えており、それが殺人の動機になっていることが多いのですが…。
ともかく個性的。

「ヒィーヒィーフゥ〜」とラマーズ法のような呼吸を繰り返すメビウス。
長い舌を出して、犯行を繰り返すサイレント・ストーカー。
コック帽を被り、コック服に身を包み料理人に扮していた殺人シェフ。
変態の集まり。

キモかった恐かったですよね。
正直。
個性でまくりの上、どれもこれも変質的。
漫画史上最も恐ろしくて悍ましい真犯人さんだったと思います。

実写でも真犯人さん

実は漫画の世界に留まらない真犯人さんの活躍の場。
実写にも登場してたりします。

個人的に衝撃だったのは、「綾辻行人・有栖川有栖からの挑戦状 安楽椅子探偵シリーズ」。
関西エリアでのみ放送されていた懸賞金クイズ付き本格ミステリドラマ。
ミステリ界の最前線で活躍されている綾辻、有栖川両氏がタッグを組み、このドラマだけに描き下した長編ミステリを出題篇と解答編に分けて放送。
この間に視聴者に事件の真相を解いてもらって、最もスマートな解答を出した人が現金を貰えるという趣向の番組でした。

僕がこのシリーズを知ったのは第4弾「安楽椅子探偵の聖夜 〜消えたテディ・ベアの謎〜」。
唯一関東圏でも放送された為リアルタイムで見れたのですが、この作品以外はDVDを購入して見ました。

このシリーズ、問題篇はドシリアスなんですけれど、解答篇は一転コメディタッチになります。
早い話遊びまくってるんです。
画像は第6弾「安楽椅子探偵と笛吹家の一族」の解答篇の1シーン。
左側に居るのが、そう。
僕らの真犯人さんです。
実写でも全身黒ずくめです。

携帯カメラがダメダメで、全体的に紫がかっていて見辛くて申し訳ないのですが…。
徳井優さん扮する被害者(画像中央)を今にも殺そうかとしてる直前の真犯人さん。
実写になっても黒光りしてますね。

第5弾「安楽椅子探偵とUFOの夜」では、追いつめられ本名を探偵から暴かれた真犯人さんが、素顔を晒す様子までありました。

最初このシリーズで真犯人さんを見た時は「アホなんじゃないか」と絶賛しましたねwww
良い意味でバカバカしいノリで、こういうの大好きですw

おわりに

こんな感じで真犯人さんについて熱く語り、調べたり、写真撮ったり、figmaの「真犯人フィギュア」をポチったりしてたら、夜が明けてしまいました*1のでそろそろ終わります。

知れば知るほど真犯人さんの素顔が見れると思いますので、ミステリ漫画を読まれる際は是非真犯人さんに着目してみて下さい。

*1:現在朝の6時になろうかという時間です。徹夜です

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