「スパイ教室」第13巻感想 百合語り続きからのシリアス

この記事は

「スパイ教室」第13巻の感想です。
ネタバレあります。

ほぼ1年振りの百合語り

今回も前巻から間を空けての刊行となりましたが、なんらかの企画絡み…なのか?
今作の企画とは限らないし、単純に執筆に時間を要しているだけなのかもですし、やっぱり考えたところで埒があきませんね。
いずれ判明するかもなので、座して待ちます。

さてさて、12巻ではリリィとモニカの”はじめて”が描かれ、発狂してしまった僕ですが…。
感想の中で、こんなことを書いていました。

独居房では足のみを拘束され、手は自由だというのを逆手に取り、かつ、「仲間と思われていない」「(恐らく作中世界では同性同士は考えれない)女性同士」という盲点を利用した手法。

今でこそLGBTQ+という言葉で、世界的にも多様性が認められ始めている現実世界。
まだまだ差別等々は根付いてはいるけれど、こういった価値観を受け入れ始めたのは、ほんの少し前です。
「スパイ教室」の作中世界と似たような時代は、とてもではないけれど表立って明かせない時代でした。

だから、作中世界でも”恐らく同じだろう”と踏んでいたのですが、思わぬ形で明言されました。
ホモセクシャルのスパイ『八咫烏』ことクリフォードの登場です。

クリフォードがメンバーを招いたのは、ビル近くにある彼の私邸だった。
出迎えたのは、豪邸と玄関にずらりと並んだ──メイド服姿の少年たち。
年齢は八歳から十七歳の少年たちが三十人以上、長い黒スカートと白エプロンを着せられ、一直線に整列している。
(中略)
ムザイア合衆国であろうと、同性愛者への差別は根強いはず

竹町. スパイ教室13 《燎火》のクラウス (富士見ファンタジア文庫) (pp.132-133). 株式会社KADOKAWA. Kindle 版.

同性愛者なのに、異性の服装を着せるという倒錯した趣味に、首を傾げつつ。
やはりこの世界でも同性愛者への差別は間違いなくあるとのこと。

それなのに、それなのにですよ!!!
作戦の為とはいえ!!!
自分たちが助かる手段とはいえ!!!!!!
敵兵の目の前でキスをするリリィ。

ですね

 

 

感想です。

「暁闇計画」の全貌

原爆やん。
圧倒的な破壊力による抑止力を用いた世界平和…ねぇ。

成就か阻止か
ヴェロニカかギードか
個人的には、途中までは圧倒的にギード派でした。
阻止一択で、ヴェロニカの考えにはちっとも賛同出来んかった。

風向きが変わったのは、ヴェロニカの真意が判明したところから。
そっかぁ。
名も知らぬ他人より愛する家族を優先するのかぁ。
どこまでも冷血酷薄であり、一方で慈愛に満ち満ちた考え。
「世界に満ちている痛み」を知り尽くしたからこそ、どれだけ強くてもあっという間に命を散らす現実を理解した上での決断なのだろうね。
余命が差し迫っているからというのもありそう。
どこまでも先を見ていながら、どこか視野狭窄になっている気がして、もっと話し合っていればと思わずにはいられなかったけれど。
それでも、共感してしまう部分は大いにあった。

逆にギードの考えはあまりにも極端で過激。
大切な家族を重罪人にしたくないという気持ちも分かる。
自分よりヴェロニカを優先してしまうというのも事実に違いない。
それでも、それでも家族をもっと信じることは出来なかったのだろうか。
捕縛を選ばず、殺すという最後の手段を取ったのは何故なのか。

とはいえ、五分五分だぁ。
どっちにも肩入れ出来るし、どっちにも反対したい。
これこそトロッコ問題だよな。

どちらかを選べと言われても、簡単には決断できんよ。
クラウスはどういった意図で、そっちを選んだのか?

ヴェロニカの目指したヒーローになる為の選択だと思ってもいいのかな?
両方助けるというヒーローの答え。
混沌のまま第3章は幕を閉じ、最終章が始まるようです。

終わりに

重たいエピソードでした。
笑い成分はしばらくお預けかな。
リリィに期待したいんですが…どうかなぁ。

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