「シャーロック+アカデミー」Logic.3 ネタバレガッツリの感想

この記事は

「シャーロック+アカデミー」第3巻の感想です。
ネタバレあります。

あれ?2巻感想書いてなかったのね

ラノベ作家ではなく「ミステリ作家」として紙城先生をリスペクトしています。
「僕が答える君の謎解き」の続刊をどうか、どうか宜しくお願いいたします。

さて、こちらも”本格ミステリ”のシリーズ第3巻。
流石のクオリティでした。

ネタバレありの感想となる為、未読の方はご遠慮ください。

ヘンペルのカラス

穂鶴は何故「ヘンペルのカラス」による証明に拘ったのか?
第3巻最大のトリックはここにあると思います。
未咲を欺く罠は、どうして必要だったのでしょうか。

結論から言えば「真実の追求をされると困るから」ですね。
前城退学を利用した人数錯誤トリック。
そもそも「存在しない人物の殺人事件の裁判」なのだから、死体探しもへったくれもない。
根底から嘘なので、通常の捜査による一般的な裁判が成り立つと困る訳です。
けれど、そもそも通常の裁判では無くて、「第九則の選別裁判」。
真実の追求を求めていないのだから、「ヘンペルのカラス」という途方もない証明方法でも成り立つというロジックで未咲を罠に嵌めたかったのでしょう。

一見すると苦しい論法なのですけれど、これを自然に見せているから凄いわけで。

穂鶴が未咲の推理法をどこまで熟知していたのかは知りません。
全くの偶然だったのか、はたまた、これまでの彼の推理を見ていて気付いていたのか。
どちらなのかは不明ですが、読者視点で見ると「見事な嵌め技」に思えるのです。

今巻は、未咲の特訓シーンから幕を開けています。
“水中密室の謎”を解け。
余談ですが、僕も作中の未咲と同じ推理に辿り着いたのですけれど、まさかハズレだったとは…。
成功率というかリアルに考えれば、こっちの解釈の方が無難ではないかなぁ。
(本棚に隠れて、水と共に脱出したというトリックは無理筋だと思うの…。)

閑話休題。
この訓練を通して、未咲は帰納法が得意であるという分析が語られています。
そして、その弱点についても…。

「思うに不実崎さん──あなたが今まで推理を完成させたのは、誰かからきっかけを与えられたり、推理が大詰めになって状況が整理されたり、最初から答えにあたりがついていたり……そういう状況が多かったんじゃないですか?」

紙城 境介. シャーロック+アカデミー Logic.3 カラスが虹に染まる時【電子特典付き】 (MF文庫J) (p.23). 株式会社KADOKAWA. Kindle 版.

手がかりを整理できていないからこそ、何かを切っ掛けとした閃きが無いと推理が出来ない。

実際今回未咲は、自分で捜査が出来なかったこともあり、穂鶴の提示する捜査資料や証拠から事件の真相を看破しようと試みていました。
「誰かからきっかけを与えられたり」というシチュエーションにピッタリの構図です。
だが、これが罠。
穂鶴の提示する捜査資料等は、「不正は無い」けれど「真実でも無い」。
そこからどう組み立てようとしても「前城は試験開始前から退学していて、現場はおろか学校にすら存在していない」という「真実」には辿り着けないようになっている。

見事なまでに未咲の弱点を突いてるんですよね。

誘導が見事過ぎて、未咲はまんまと罠に嵌ってしまったと。

もしも穂鶴が、未咲の推理法の弱点に気づいていたのだとしたら、「ヘンペルのカラス」による証明はそこまで計算してのものだったのかなと。
こう考えてみると、3巻は未咲の成長物語としても良く出来ているのですよね。
弱点を突かれ、土俵際ギリギリまで追い詰められたものの、土壇場で弱点を克服。
見事に大逆転できたのですから。

穂鶴にとっては必勝のはずだった「ヘンペルのカラス」戦法。
しかしながら、未咲の成長速度の前に敗れてしまったと。

非常に読み応えのあるエピソードでした。

次巻は?

ラスト、穂鶴にとって不穏な引きとなりましたが、彼は前城をヘブンに送ってしまったのでしょうか。
「犯罪RPG事件」と関わっていくのか。
未咲達は、「犯罪RPG事件」を解決できるのか。

凄く楽しみです。

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