「金田一少年の事件簿」 金田一と高遠の「平行線」と「類似性」

この記事は

「金田一少年の事件簿 20周年記念シリーズ」第4巻限定版の感想記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

第4巻発売!!

限定版を購入〜。
偶々休みだったので、何とか視聴する事が出来ました。
最も忙しい時期を脱せたというのも大きいかな。

という訳で、連日ブログ更新とか出来るかもですが、今日は「金田一」第4巻の感想を。

第三の事件「暗黒城殺人事件」

モスキート音…。
この言葉、なんか一時期やたら耳にしましたね。
ちょっとした話題になっていたような。

今回のメイントリックとなってましたが…。うん。
短編ですしね。

それにしても、これに気づけるような伏線ってあったかな?
金田一君のように直感で気付く以外に方法が見当たらない様なw
やっぱり作り込みという点では、一枚落ちるかな〜という印象。

物語に関しては、そうですね。
2回続けて同名の子が犯人でしたね。
偶然なのか、敢えてなのか。敢えてだとしたら、なかなか面白いのかも。
「まさか同じ名前の子が連続で犯人ではないだろう」という思考を逆手に取るという点では。

それはさておいて、彼女が犯人というのは実に「金田一」らしいですね。
未成年を犯人に絶対にしないという「コナン」とは逆に、未成年だろうと身内だろうと犯人になり得るという点で。
今回はトリックの性質上、犯人は未成年にならざるを得なかったのは確かでしょうけれど。

きっと影島夫妻が全力でバックアップしてくれるでしょうから、彼女の人生はまだまだこれからという事が想像できる分、救いはありますね。

あと気になったのは、美雪の親戚。
「悲恋湖」ではイニシャルが同じという理由だけで殺されたり、今回も巻き込まれそうになったりと、美雪の叔父さん連中は揃いも揃って不幸体質ですね。

第四の事件「薔薇十字館殺人事件」

天樹先生が折に触れ「初期の感覚で作り込んだ」と仰っている20周年シリーズ最後の事件。
薔薇には高遠が付き物という感じで、今回は珍しくというか初めて”共闘”という形を取った2人。
これは、この事件の結末にどうなるのかを含めて楽しみな点ですね。
素直に捕まっても、また脱走して終わりという形なのか。全て高遠の計画の内という終わりなのか。
想像するだに楽しみです。

で、薔薇に高遠だとどうしても「魔術列車殺人事件」を彷彿とさせます。
団長殺しでも、薔薇を「死体発見者を死体に近付けさせないようにする」という役割で登場させていますし、今回も似たような手は使っていそうです。

怪しいのは薔薇の棘に塗られているという毒の存在。
最後に起こった第4の事件では、密室トリックというよりアリバイトリックになるのかな?
まだ誰が殺されたのかも分からない状態で次巻に続くという感じでしたから不明ですが、もしもアリバイトリックならば、薔薇のアーチを横切って時間を短縮したとか有り得そう。
棘に毒が塗られていると思わせれば、そんな事思いつきもしないし。
とはいえ、棘で傷ついては元も子もないので、入浴時に使われたバスタオルを利用したとか。

何かある筈なんですよね。
棘に毒が塗ってあると強調する点に。

あとは、バスタオルも。
わざわざ風呂場に様々な薔薇を浮かべたのは、タオルに薔薇の匂いを付着させる為なんではないかな。
これも絶対にトリックに関わっていると思う。

それに毛細管現象。
ショッキングだった第1のバラバラ事件で、死体がブリザーブドされた意味は、この現象を起こさせないためなのかなと。
逆に第3の密室事件では、毛細管現象が密室トリックに関わっている…とか。
うん。自分でも何を言っているのか訳分かってませんが、何か意図があるんでしょうね。

兎に角分からないことだらけの長編最終章。
20周年記念シリーズのトリを飾るに相応しい素晴らしいシリーズになりそうで、事件面でも物語面でも最終巻が楽しみですね。

OAD「黒魔術殺人事件 後編」

詰め込み感も無く、すんなりと視聴出来ました。
それにしてもこの事件をセレクトする辺り、色々興味深いです。

原作最新シリーズでは、高遠と協力をさせつつ、アニメでは高遠との対峙を克明にしている。
「薔薇十字館」では「似たモノ同士?」と美雪に言わせた反面、そうでは決してなく「決して交わる事のない平行線」と言わせている2人の微妙な関係性をも描きだそうとしているような。

高遠の存在は、金田一の性善説に真っ向から対立させているのかなとも思うんですよね。
金田一君の犯人に対する説教を見る限りは、彼は性善説論者と言いきって良いと考えます。
だから、罪を償って再生して欲しいと願うし、それが可能であると思い込んでいる。

高遠の考えはそれとは真逆。
「生まれながらにして、誰でも悪意を潜ませていて、簡単にそれを引き出し意のままに操れる」事を見せつけているように思えるし、だからこそ性悪説を説いているかに見える。
彼が操る犯人達を「人形」という心通わない”物”に評している点も、こういった考えを如実に示しているように思えてならない。

でも、高遠の考えは、毎回否定されるんですよね。
今回で言えば、井沢がどこまでも優しい人物であり、心を持った人間であることを見ていないから。
だから自分が操ったはずの”心の無い人形”が、金田一に説得されて、マリオネットの糸を断ち切っていく訳で。

そうやって否定されつつも、何度も何度も金田一に挑むのは、若しかしたら、自分の性悪説を間違っていると金田一に徹底的に否定されたいという顕れなのかもしれない。

心の底では、金田一同様性善説を信仰したいと思っている反面、自身の事件の際に左近寺達の悪意を垣間見たから性悪説はあると信じている。
この根っこの部分を美雪は無意識下で感じ取り、「似ている?」としたのかもしれないな〜と。

まあこういった葛藤を解消する為に高遠は、金田一に挑み続けているのかな?
これってある意味、信頼ですよね。
金田一が自分の考えに染まらないと信じているのでしょう。
「薔薇十字館」で、自分と金田一の関係を「平行線」と評したのも、これで頷けます。

どこまでも悪の道を進む高遠と、そんな高遠を捕まえて”改善”させたい金田一。
アニメでは二人の平行線としての関係を描き、原作では共通点を描いているように見えて。
アニメと原作。
見比べてみる事で、より高遠の敵キャラとしての魅力が高まるよう考え出された末に「黒魔術殺人事件」が選ばれた…のかな?

金田一少年の事件簿 20周年記念シリーズ(4) (講談社コミックス)

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