「29とJK」第8巻感想 偉大なるグランドフィナーレ

この記事は

「29とJK」最終第8巻の感想です。
ネタバレあります。

終わってしまった…

7巻の感想で「終わるかもと思ったけど、杞憂に終わりそう」とか書いたら、ご覧の通りだよ。
サブタイトルが発表された時点で嫌な予感を持ってたんだけれどね。
公式サイトのどこにも完結の文字が見当たらなかったから油断してました。

あぁ終わってしまった。
お気に入りのタイトルだったので残念です。
ただ、あとがきで「全て書き切った」という裕時先生の言葉を実感できる見事なまでに綺麗な終わり方でした。
「ラノベらしくないラノベ」を最後まで貫き通した展開には、最後の最後まで楽しませていただきました。

お粗末ながら感想を書きます。

偉大なるグランドフィナーレだった

「29とJK」。
タイトル通り「1年間」限定の構想だったのかもしれません。
予定通りなのか、はたまたハプニングなのか、ほんの少しはみ出してしまいましたが、最後の「vs御旗編」はシリーズを締めくくるのに相応しい章となっていました。

何度か書いてきましたけれど、僕が今作に惹かれたのは「ラノベらしくない」部分なのです。
中学高校生をメインにしてるにも関わらず、今作に於ける「サラリーマンのお仕事」には夢も希望もありませんでした。
少なくとも、今作を読んでコールセンターの仕事に憧れを抱くことは無いでしょう。
それこそ、作中の花恋のweb小説の世間の反応と一緒ですよ。
「仕事なんて碌なもんじゃないぞ。」「社畜は辛いぞ。」
ブラックな面をこれでもかと魅せられたら、働いてみたいとはなりません。

実際のコルセンの仕事がどれほど過酷かは存じ上げませんが、サラリーマンの1人としては、決して絵空事ではないなという感想を持っています。
現実にあり得ない要素といえば、JKと知り合いになること(まして交際なんて天地がひっくり返っても無い)と会社や上司に盾突いて勝っちゃうこと(+異例の大出世)くらいでしょうか。
この辺のフィクションというかエンタメ要素さえ抜きにすれば、一般小説として並んでいても不思議では無い内容なんですよね。
個人的には、女子高生とラブコメする半沢直樹というのが第一印象でしたし。

そういった面に惹かれたからこそ、安易なフィクション的な展開は避けて欲しいという気持ちがありました。
例えば花恋が現役高校生売れっ子ラノベ作家になるとか。
秋田禎信先生とか日日日先生とかリアル高校生作家は居たわけなので、これを以てフィクション展開とは呼べないんですが。

ともあれですね、花恋がプロのラノベ作家になるという物語ではなくて、「29歳社畜が、JKと出会って夢の呪縛から解き放たれる話」(原文ママ)を徹頭徹尾貫いてくださったので、非常に満足感高いクライマックスになりました。

花恋という若い才能へ嫉妬して、夢を思い出し、果たせなかった事実に苦しんだ。
コーチとして花恋の側にいるうちに、やがて「自分の夢を託す」ようになった。

第1章でこれを示して、結論も同じだったのは良かったです。
結局鋭二自身が、こういった境地に至れなかったら、沙樹を改心させられなかった訳で。
そうなると花恋の小説は面白いものになれなくて、御旗にも克てなかった。
最後の対決に於いて花恋のラノベ道を「己に打ち克つ」狂言回しにしていたところに、「社畜の辛いお仕事モノ」と「ラノベコーチをしつつのラブコメモノ」を両立させることに成功していたと感じました。

ラストの鋭二の言葉が、作品としての纏めですね。
「また挑戦すれば夢が叶う」というのは「理想郷」…フィクションだよね、確かに。
そんな明日は普通はやってこない。

「明日もしかしたらあの(同僚の可愛い)子から告白されるかもしれない」と毎日夢見つつ会社に行ってるんですけれど、無いよね。そんなの。
それより、死ぬまで独身という現実に目を向けなきゃね。今を見ないと。
そしたらきっと「死ぬまで独身仲間」が増えていくはず。
そういうことだね、鋭二さん!!

まとめ的な

あかん。
要領を得ない意味不明な感想?になってる。

えと、言いたいことを一言で纏めるなら「面白かった」ということです。
もう少し魅力的なヒロイン達のラブコメを堪能したかったですが、鋭二の物語として括れば、しっかりと纏まっていて、これ以上は蛇足になりそうですので締めるには相応しいタイミングなんだなと納得も出来ます。
ある意味「ラスボス」だった沙樹の鋭二への気持ちも上手に昇華されたし、やるべきことに全て結論が出ちゃいましたしね。

惜しむらくはアニメ化が無かったことでしょうか。
オーディオドラマも作られたので期待していたので、そこだけが唯一残念でした。
ただそれ以外は言うことなしの傑作でした。

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