「葬送のフリーレン」が話題になっていたので買って読んだ感想

この記事は

「葬送のフリーレン」第1巻の感想です。
ネタバレあります。

はじめに

「週刊少年サンデー」の新連載が、この度ニュースに取り上げられていました。
それが今作。
twitter界隈でも連載直後から面白いという声を目にしていましたが、事実反響も大きいようで。
気になったので、早速コミックス第1巻を購入してみました。

切な系ファンタジーだけれど、何故かホッとするような温かみのある漫画ですね。
感想です。

掴みの1話で心が掴まれた

エルフが長寿という設定はいつ誰が作ったのかしら。
起源は分からないけれど、何故かファンタジーでは当然のように知れ渡っている設定を前提とした世界。
人間の一生がちっぽけに思えるほど、エルフは長生きで、故に人間とエルフには時間に関する認識に大きなずれがある。

物語は、勇者一行が魔王を斃したところから始まります。
これは帯にもある通りですね。

勇者のヒンメルと僧侶のハイターは人間種。
戦士のアイゼンはドワーフで、人間より寿命が長いけれど、エルフほどは生きられないって感じ。
勇者パーティ最後の1人が魔法使いのフリーレンで今作の主人公のエルフの少女(?)。

多種族混合の勇者パーティは、当然に人間種が最も早く寿命を迎えてしまうことに。
ヒンメルの葬式で彼の死に涙を流せなかったフリーレンは、「人間の寿命が短いことを知っていながら、彼のことを知ろうとしてこなかった」と嘆きます。
これがこの漫画のテーマですね。

ヒンメルにとっては長い長い10年の旅路も、フリーレンにとってはたったの10年。
時間間隔に大きな隔たりがあるが故に、ヒンメルのことを積極的に知ろうということをしてこなったのでしょうね。
この感覚は、フリーレンに立って考えると掴みづらいのですが、自分に置き換えると理解が早い。

人間よりも短命の動物はごまんといて、良く聞く話としては、ペットのことでしょうか。
飼っていたペットが亡くなった時に、初めて彼らが人間よりも短命であることを痛感して「もっと遊んであげればよかった」「思い出を作っておけばよかった」と後悔しちゃう。
自分の時間感覚で接していたが故の不幸ですよね。

フリーレンがヒンメルと過ごした時間って、彼女の感覚からしてみれば、本当に僅かだったのでしょう。
あまりにも一瞬。
一瞬過ぎて、彼女がヒンメルのことを知ろうとするには、あまりにも時間が短すぎた。

殆ど彼のことを知らないから、彼の死に泣けなかったし、大きな後悔となった。

この辺りの描写は、本当に痛切に伝わってきました。
ファンタジーを取り扱いながらも、誰もがなじみ深い設定の中だけで物語を構築してくれているので、理解が早くて深くなります。

ファンタジー漫画で陥りがちな難解な世界観設定だけでお腹いっぱいなんてことには絶対になりません。
むしろそういうのは一切ない。
故に、ファンタジー漫画の導入としては、完璧でした。

人間の少女フェルンの存在意義が強い

という訳で、ヒンメルのことを良く知ろうと、彼らと旅した地を再訪することにしたフリーレン。
人間の少女フェルンを弟子にとって、彼女を連れての旅となります。

ハイターが生前に養っていた戦争孤児とはいえ、何故無関係のフェルンを相棒にしているのか。
読み進めると、この疑問は見事に氷解しました。

度々、フリーレンがだらしないのでは疑惑が出ます。
朝に兎に角弱くて、フェルンが1から10までやってあげないと何もしないという始末。
確かにだらしないのはそうなのでしょう。
けれど、これまた人間とエルフの時間感覚の違いが出ている表現なんだと思うのです。

休日に昼過ぎまで寝てしまって、後悔することってありませんか。
言い知れぬ「時間を無駄にした感」があって、折角の休日を潰してしまったと落ち込んでしまうんですよね。
とはいえ、僕自身この感覚を持つようになったのはここ数年のことで、学生の頃は特に寝て過ごすことに幸せを覚えていたので、分からない人には分からない感覚だと思います。

それは兎も角、フリーレンにとっては、昼過ぎまで寝ても「勿体ない」という感覚はゼロなのでしょう。
たったの1日のうちの半分を無為にしたところで、「時間を持て余している」感覚の方が強いんじゃないかな。
10年を短いと表現するエルフにしてみたら、寝坊は寝坊のうちに入らないのでしょう。
(1時間の寝坊が、人間にとってはイラつくほど長くても、エルフにとっては些末な遅れって感じかな)

旅の原因となった「人間とエルフの時間感覚の違い」を常にフリーレンに意識させる身近な存在が必要であった。
そうじゃないと彼女は、人間の感覚に気づけないから。
だからこそ、フェルンが存在したのかなと。

2話でフェルンが初登場し、3話から2人の旅が始まります。
早速3話から両種族間の時間感覚の違いについて触れて、フェルンは人知れずフリーレンに「ヒンメル」について教えていきます。
言い換えれば、フリーレンに「人間」について教えてるんですよね。
人間目線で見た世界をフリーレンに体感させいる訳で。

第6話ラストの「私1人じゃこの日の出は見れなかったな」というフリーレンのセリフが全てを表していたなと。
フェルンは「寝坊して見れませんからね」と取ってましたが、そうじゃないですよね。

フェルンは年に1度の日の出を「一生で数えるほどしか見ることの出来ない貴重で尊い瞬間」として「美しい」と表現したんだと推測します。
一瞬を大切に生きる人間ならではの感覚。
少なくとも「いつも通りの」日の出なんかでは無くて。
けれど、長寿のフリーレンにとっては、「見飽きた」「いつも通りの」日の出だから、「帰って二度寝しよう」という発想に繋がっている。

これまた時間感覚のずれが引き起こしたことで、フリーレンはこのずれをフェルンの笑顔を見て、修正出来た。
フェルンがいなかったら、人間であるヒンメルの気持ちにも寄り添えなかった訳で、それ故のセリフ。

フェルンの大切さがしっかりと伝わってくる構成になっていて、この漫画が面白いなと素直に思える理由になりました。

終わりに

過去の冒険をなぞっていくだけの漫画にはならない!!かもしれないというところで、第1巻が幕引かれるんですけれど、これも見事過ぎて、もう。
基本1話完結なので、同じような旅が続けば、早々に飽きてきそうでしたが、そんなことは無さそうと思わせてくれるには十分すぎる引きでした。

死者との対話の魔法。

眉唾物の存在が示唆され、その魔法にとってキーとなる場所は、今や魔王城がそびえたつ地。
5話でバトルがあったように、この先本格的なバトル要素も入ってくるのかもしれない。
(完全にバトルにシフトしちゃうと、作品のウリが消えちゃいそうなので、そこはバランス取って欲しいところだけれど)
次巻予告でも魔族が出てくるとありますし。

ともあれ、第1巻は非常に楽しく読めました。
2巻以降についてもワクワクさせてくれそうで期待感が強いです。
良い漫画に巡り合えました。
話題にしてくれた皆さんに感謝です。

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