「妹さえいればいい。」第14巻感想と作品総括~料理で読者(僕)の胃袋は掴まれた!!

この記事は

「妹さえいればいい。」第14巻の感想です。
ネタバレあります。

はじめに

5年に亘るラノベ作家青春群像劇に幕!!!
楽しい思い出をありがとうの気持ちを込めて、最終巻を「思い出の場所」で読んできました。
「妹さえ」の多くの物語をこのカフェで読んで来たんだよな~と勝手な感慨に浸りながらの至福の時間でした。

最終巻の感想を含めて、総括記事を書かせてもらいます。

ぷりけつに見るキャラの成長

最初にこれだけは言わせて。

春斗の妹、最高かよ!!!

典型的なツンデレを発揮してて、少ない登場ながら最高の可愛さを見せてくれた妹。
アニメ版のミズハスボイスとか最高過ぎて泣いたまである。

それが、最後の最後ででっかい爆弾を落としてくれるとは。
最高かよ!!!(大事なことなので)
春斗のこと好きすぎだろとは思ってたけれど、それでもまさか
「おにぃが家を出て行くならアタシ死ぬから!」
と駄々を捏ねるほどブラコンを拗らせてたとは。
ああああああ水橋さんの声でセリフを聞きてぇなぁ。
ここはニヤニヤしながら読んでました。(完全不審者)

さてさて、最終巻は3年後の物語。
丸々1巻使っての贅沢なエピローグでした。

作中でも成長を見せてきた主人公達。
伊月や千尋、那由多。
変わる彼らの中でも、「変わりすぎだろ」と思わず突っ込んでしまったのがぷりけつ。
チャラい見た目に軽薄なキャラ。
「っす」を語尾に付け、千尋のお尻を付け回す変態ストーカー。
ある意味「妹すべ」史上最もとんがっていた彼が、「まともな」青年になるなんて。

別人にも程がある。

元々イラスト上達の為ならば、どんな奇行も厭わないというキャラでしたが、見た目の変化は、彼が「イラストレーターという在り方」により真剣に、真摯に、本気になったという表れなのでしょう。
とはいえ、平坂先生的に
本気になった=見た目の真面さ
と安易にイコールで結びたかったのではないのだと思います。
イラスト以外の「細事」に煩わされないように、また、1つでも多くの仕事を依頼されるよう信頼を得るために、自身を最適化した結果がこれだったのではないでしょうか。
見た目で信頼を得て、結果で信用を勝ち取る。
こう考えると、非常に納得の姿ではあるんですよね。
自分の人生に本気で向かい合ってきた伊月に感化された人物として、ぷりけつの変化はある意味最も象徴的に思えました。
最初が奇抜だっただけに余計にね。

そうは言いましても、ここまでの変わりようは成長というより「別人になった」と表現する方が適当に思われます。
だからこそ、「ケツが大好きなイラストバカ」アピールは、非常に大事なのでしょう。
大きく変わってはいるけれど、その本質は変わらない。

伊月が「妹バカ」では無くなっても「主人公になりたい」という本質を喪わなかったように。

キャラには皆ブレない芯があって、それ以外の部分で成長という名の変化をしている。
それが見て取れただけこの壮大なエピローグには十分な価値がありました。

料理で読者の胃袋を掴む!!

群像劇というのは、確かに「登場人物皆主人公」ですね。
その点に於いて、今作は紛れもなく「主人公たちの物語」として機能していたと感じました。

上にも書きましたが、1人1人しっかりとした「芯」があって、そこが一貫してぶれてないんですよね。
故に、しっかりとキャラが立っていて、キャラが立ってるからこそ魅力的に映る。

平坂先生の作風って、決してキャラクターの心情を精緻に描写しているわけでは無いと思っています。
悩みや苦しみ、葛藤などキャラの喜怒哀楽を表現してはいるものの、その描写は深すぎず細かすぎない。
どちらかと言えば、あっさり目に書く作家さんだと思っています。

それでもキャラクターに厚みを与えて、しっかりと立たせられるのは、作品世界の中で「当たり前の生活」をさせているからなのだと信じております。

ざっくりと言えば、三大欲求をちゃんと描いている。
今作では特に食欲。

グルメ作品では無いにも関わらず、食へのこだわりは半端じゃありませんでした。
北海道に行けば、新鮮な海の幸を食べ。
沖縄へと飛べば、オリオンビール片手にチャンプルーを食らう。
アニメ版も含めて、飯と酒には異常なコダワリが詰まってました。
何度作中で紹介された外国産ビールを飲んでみたいと思ったことか。

食べたこと・飲んだことが無ければ書けないであろう味に対する含蓄ある文章は、それを食らうキャラクターに生命を宿すようでした。
実際の土地の実在の飲食物を摂るキャラクター達に「僕らと同じ世界に生きてる」感を覚えたんですよね。

性欲すら避けずにしっかりと描くことの意味合いとしては、キャラクターに命を吹き込みたいからなのではないでしょうか。
少なくとも僕はそういう風に解釈していました。

芯があって、寝て食って生きている。
それだけでキャラは立って見えるし、生きているように映るのです。
平坂先生のキャラが皆活き活きとしているのは、その為なのでしょう。

1人1人、あまりにも魅力的なキャラクター達が紡いできた青春譚。
本当に楽しく読ませていただきました。

終わりに

あぁ、カントク先生の「妹さえARTWORKS」買おうかな…。
この大好きなキャラ達を手元に置いておきたいから、非常に魅力的。
平坂先生との対談(今作の裏話)も読みたいし。

あと、「〆切前には百合が捗る」が本採用となって嬉しい限り。
出版が非常に楽しみですが、「ガガガ」からでは無いんですね。
「カクヨム」ってことは、KADOKAWA系列のレーベルから発売でしょうかね。

「MF文庫J」に戻るのかな?

折角なので、同じレーベルから出て欲しかったけど、事情があるのかな。
なんにせよ一種のスピンオフ的作品として楽しみ。

うん。
なんにせよですね、非常に大満足なシリーズでした。
平坂先生の次回作を楽しみにしつつ、この記事はここで終わります。
ありがとうございました。

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