「リコリス・リコイル」総括 魅せたかったのは、千束とたきなの絆!!設定説明の取捨選択が上手かった

この記事は

「リコリス・リコイル」の感想です。
ネタバレあります。

オリジナルアニメの傑作

いや~面白かった。
足立慎吾さんの監督デビュー作と言うことで注目していた本作ですけれど、シリアスに傾倒しがちな世界観の中で、明るくポップな面を見せていたところが最高でした。
これは千束のキャラクターからすると、大事な点ですよね。

一度は失ったはずの命。
「きゅうせいしゅ」さんのお陰で生き延びた人生を、人の為に尽くし、そして、明るく前向きに生きる。

千束の人生観を表現するには、鬱々としたシリアスムードでは不適合ですからね。
作風から千束のキャラクター性を見て取れていたなぁと。

これは制作陣の想いなんだと感じたのです。
先にも書きましたが、世界観自体は滅茶苦茶重いんですよ。
戸籍を持たない孤児を戦闘員として育て、「マーダーライセンス」を与えて、犯罪者を秘密裏に消させている。
これを国家ぐるみで行っているというから、やろうと思えばいくらでも重く暗く描けます。

国の暗部、陰謀、孤児としての寂しさや、犯罪者とはいえ人を殺すことへの葛藤。
なんだって出来る。

事実、そういった「闇」は確かにあの世界に存在しているのでしょう。
リリベルなんて、その一端ですよ。
同じ国家の組織であるはずなのに、リコリスを抹殺する使命を帯びている。

ここら辺正確な情報が明かされなかったので、想像でしかありませんけれど、リリベルの主目的が「リコリスの排除」なんじゃないかな。
その性質上、世間に絶対に明かせないDAの存在。
実働部隊のリコリスが世に出ることがあれば、リコリスを秘密裏に消すことが任務。
リコリスよりも更に陰に隠れた存在なのかもしれません。

こう考えると本当に闇が深いよね。
でも、千束がさらっと「過去に襲撃されたことがある」と話す程度だし、出番も終盤に「リコリスを消す任務」で描かれたくらい。
最低限に留められていました。

この辺の塩梅が実に巧くて、「見せたかった事」が明確になっていた。
だからこそ、面白く感じたのです。

魅せたかったのは、千束とたきなの絆

今作の軸は、政府の闇でも無ければ、テロリストとの闘いでも無かったのだと思うのです。
メインヴィランの真島が、憎むべき悪役では無くて、敵役として描かれていたのも象徴的です。
テロリストだし、サードリコリスを抹殺したりやってることはエグイし、犯罪者のそれなんだけれど、千束との「殺し合い」ではなくて「戦い」を主眼としたところなんか、ライバルの位置づけに近い。
最終話では、彼なりの正義感が語られていたところも興味深い。
本当の悪役ならば、正義なんて言葉使わないですよ。

政府の闇も、テロリスト真島との闘いも、あくまでも味付け、潤滑油に過ぎません。
最も魅せたかったのは、やはり千束とたきなの絆なのでしょう。

だからこそ、2人の絆を描くのに不要な設定は、敢えて作中に出さなかったのでしょうね。

出さなかったのではなく、出せなかった。
つまり、設定されてなかったのではという疑問もあるでしょうけれど、ここら辺「リコリス・リコイル Ordinary days」にさらっと描かれてたりするので、設定は存在していることが窺えます。

  DAは、ダイレクト・アタックの略称だ。組織名としては明らかにおかしな名前である。
唯一無二の組織ならばリコリス同様に適当な呼称でいいが、具体的な役割をあえて組織名にするという事はそうではない、という事だ。
つまり〝平和な日本の姿を守る〟とする同様の理念を有しながら敵への直接攻撃を主としない別の組織が存在するのはほぼ間違いない。
恐らく類似した超法規的組織というのは幾つも存在しており、DAはその中の一専門組織、何なら巨大組織の一部署に過ぎないのかもしれない。そして、その名付けをしたもの──これらを包括、または統括する上位のものもまた存在するはずだった。
これらは決して教えられる事はないが、DAの名前に違和感を持てば誰でも遅かれ早かれ気がつく事である。しかし口にするのは何とはなしにタブー感があり、リコリス同士の会話でもあまり出た事はない。

アサウラ. リコリス・リコイル Ordinary days (電撃文庫) (pp.181-182). 株式会社KADOKAWA. Kindle版.

上に「リリベルの主任務はリコリスを抹殺すること」ではないかと書きましたけれど、根拠はこれです。
「〝平和な日本の姿を守る〟とする同様の理念を有しながら敵への直接攻撃を主としない別の組織」がリリベルなのではないかという推測は容易に立ちます。
合ってるかどうかは定かでは無いですけれどもw

設定がある以上、作中で語られても良かったけれど、それをしなかったのだと分かります。
軸のテーマを魅せるのに不要な設定をあれこれ盛り込まれると、情報過多になって焦点がぼやけちゃうんですよね。
結局何が言いたかったんだろうってなる。

ぶっちゃけ、この13話でアラン機関って結局なんだったのかとか、リリベルって何だという疑問は解消されません。
そこを気にしちゃうと「説明不足な散漫な作品」に映るのかもしれません。
けれど、「主人公コンビの絆」に着目すると、アラン機関の目的とかリリベルの正体とか些細な事なんですよ。
どうでも良い。

どうでも良いからこそ、説明を最小限に省いた構成に納得だし、焦点がぶれずに楽しめました。

続編に期待しよう

語られなかったアラン機関やリリベル含めた他の組織の事は、もし続編があるのなから、そちらで語られていく可能性だってありますよね。

特に千束に含みがありそうなリリベルの謎の少年。

twitterでは、ヨシさんに似てるから彼の息子ではないかと言う考察がありましたけれど、案外そういった裏設定がマジでありそうですよね。
こういったところを拾えば、いくらでも続きは出来そうですしね。

もし2期があるなら、今回の作風のコントラストはそのままにして欲しいな。

 

さておき、オリジナルアニメとして久々に超絶楽しんだ一作となりました。
最高に面白かった。

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