「竜とそばかすの姫」感想

この記事は

「竜とそばかすの姫」の感想です。
ネタバレあります。

はじめに

細田守監督の長編オリジナルアニメーション第6弾。
「美女と野獣」を細田監督のエッセンスによって現代語訳された作品。
という総括かな。

ネタバレ有りで感想を書きます。

感想

上述の通り、「美女と野獣」をモチーフとしているのは明らか。
主人公・鈴のアバターの名前がベル。
Uを荒らすモンスター(ビースト役)として竜が城に住んでいたり。
ガストン役は、自警集団のリーダーであるジャスティンでしょうか。

オリジナルと異なるのは、王子である野獣の正体。
ヒロインの想い人は別に立てて、竜の正体は年下の少年だったというところ。

竜を助ける行為が愛ではないというのが、オリジナリティとなっていて、そこまでの動線がとてもシンプルに整理されているから、鈴の心情を素直に理解できる仕組みになっていました。

見ず知らずの子を助けて命を落とした母と同じように、気づけば鈴も当時は理解できなかった母と同様の行為をする。
「サマーウォーズ」で描いた人と人との絆を再度取り入れることで、この心理的ハードルを無理なく飛び越えさせるシナリオは、とても美しかったです。

母の死のトラウマで歌うことが出来なくなっていた少女が、アバターという仮面を付けることで歌えるようになった。
そして、素顔で訴えかけないと伝わらないという説得力のある場面を演出することで、無理にでも背中を押して、素顔でも歌わないといけない状況を作った。
竜を助けたいという気持ちと周囲の人たちの想いを受けて、素顔で歌を届けるシーンは、クライマックスに相応しい盛り上がりを見せていました。

「デジタルモンスター ぼくらのウォーゲーム!」や「サマーウォーズ」で得意とした舞台を再利用しつつも、全く読み味の異なる物語を見せてくれました。
「ネット世界の物語」というテーマに絞れば、今作が最も本筋とリンクさせた出来になっていたと思います。

いうなれば、「U」という仮想空間が無かったら、鈴の復活無かったし、竜こと恵は救えなかった。
物語が成立しなくなるという意味で、非常に重要な位置に置けていたと思います。

と、ここまでが私情を出来るだけ無視した感想です。
実際面白かったは面白かったのですが、個人的には「サマーウォーズ」超えは今回もならずってところでした。
事件の規模が小さかったし、なによりも3DCGの比率の多さには残念な気持ちしかありませんでした。
古臭いと言われようと、僕は手書きアニメーションが好きなんですよね。
力の入った長編アニメだからこそ、手描きアニメの素晴らしさを拝みたかった。

あとはキャストが…。
鈴を筆頭に、芸能人キャストが揃いも揃って下手すぎて…。
歌が見せ場の鈴は仕方ないにしても、周囲は本職で固めてほしかったなぁ。
悠木碧さんがクレジットされてたけど、どこで出てたんだろ…。
彼女ほどの声優さんを使うなら、しっかりと役付きでお願いしたかった。

ただ、「サマーウォーズ」をピークにして、どんどん下がっていた細田監督の作品の評価は、今作で大分持ち直しました。
個人内ランキングでは「おおかみこどもの雨と雪」と競う第2位ですね。

僕としてはこじんまりとした印象を持った本作ですが、その分「世界を救うより、たった1人(2人)を救う物語」にリアリティを覚えて、より多くの人に刺さる気もしました。
鈴の内面描写はやはり理解しやすいですから。
共感を覚えて、感動する人は多い気がします。
ということで、興行的には細田監督の作品内でもトップを取るんじゃないかと思ったりしました。

終わりに

歌が今作の売りの1つになってますので、大画面で堪能して欲しいかな。

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