「ライアー・ライアー」第8巻 感想 修学旅行というイベントの特異性を活かしたストーリーに感嘆

この記事は

「ライアー・ライアー」第8巻の感想。
ネタバレを含みます。

はじめに

7巻の感想でどこに修学旅行に行くのかが気になると書いてましたけれど、架空の島でした。
内容に関しても、ここまでの激動の展開からやや番外的な様相の、言うなれば小休止的な回だったかな。
とはいえ、油断が出来ないのがこのシリーズ。
今後今回の話が大きく今後の展開を左右するなんてこともあり得るので、そこのところは頭の隅に置きつつ。
第8巻の感想です。

修学旅行というイベントの特異性を活かしたストーリーに感嘆

修学旅行というイベントの特異性を活かしたストーリー。
それが8巻の僕の感想、その総括となります。
どういうことを言いたいのか。具体的に書いていきます。

今回なんといっても最大のポイントは、本物の彩園寺更紗の登場でした。
今は羽衣紫音を名乗る「普通のJK」。
ある意味、このシリーズにおける最重要キャラクターですよね。
朱羽莉奈が画策し、緋呂斗との秘密の共犯関係の元となった「二重の嘘」は全て彼女に普通の高校生活を送ってもらう為。
つまりは、物語の出発点ともいえる存在。
ラスボスとか主人公という訳では無いけれど、物語の無くてはならないキーパーソンです。

そんなキャラを「埋没」させるわけにはいかないじゃないですか。
どこまでも主役を張らせてあげたいとなるのは、自然の成り行きに思えます。

だからこその修学旅行。

今回のイベントですが、星の奪い合いが無かったという点に於いて、学生の骨抜きに充てられていたような印象を受けました。
更には2年生のみとなり、他校も含めて癖のあるキャラの多くが不参加。
換言すれば、緋呂斗に絡んでくる好戦的なライバルがいないんですよ。
それこそ表向き敵対関係を装っている更紗(莉奈)くらいのもの。
雫もストーカー退治に燃えてたりしますが、向こうから絡んでくるような子じゃないので除外出来る。
言葉が悪いけれど、紫音を埋没させるようなライバルが登場できない舞台なんですよね。

これほどまでにおあつらえ向きなイベントを逃す手は無い…となったかは定かではありませんけれど、「紫音を登場させるためだけに最初から仕組まれたイベント」と言われても納得できちゃうくらいには、これ以上ないストーリーになっていました。

事実、紫音登場のインパクトは絶大でした。
あらゆる意味で大物と言うか規格外の少女だなと。
「箱入り娘」のイメージを覆す豪胆さに勝負強さ、人の器の大きさ。
そして、ゲームに於ける絶大な力。

ゲームの力に関しては、「最強の噛ませ犬」を用意してまで魅せてきたので、衝撃が大きすぎた。
ファントムこと竜胆という最強のチートキャラを登場させ、その彼にトラウマを植え付けた存在として紫音を立てる。
もうこれだけで紫音の化け物っぷりが際立ちますよね。
個人的には、竜胆を「噛ませ犬」として終わらせずに、物語上しっかりと立たせたストーリーテリングにこそ唸らされましたが、前半の「使い方」もお見事でした。

本物の更紗の実力をこれでもかと浮き彫りにしつつ、キャラクターとしても一癖も二癖もある少女として読者に印象付ける。
8巻はまさしく紫音による紫音の為のストーリーになっていました。
こういう感想を抱いた時点で、8巻は成功と言えるんじゃないかと勝手に想像しています。

「紫音と白雪の嘘」が素晴らしすぎた

それにしても、「莉奈の嘘」の落としどころとなった「紫音と白雪の嘘」は上手かったなぁ。
まぁ、よくよく考えれば莉奈の嘘が嘘として通用するわけないんだよね。
「更紗の素顔を知らない」島民達は騙せても、内部の、それこそ彩園寺の人間を騙せるわけないんだわ。
子供の考えた嘘だもの。
いくら見抜かれることを想定して、二重の嘘を仕込んでいたとしても、看破されない訳が無い。

それでも僕は「そういうものか」と疑問すら抱かなかったわけだけれど、実は白雪が一枚噛んでいたと知って合点がいった。

「莉奈が絶対に知る由もないセキュリティが破られていた」という「事実」1つで、莉奈の嘘を崩すことが出来なくなるんですね。
疑惑こそあっただろうけれど、証明が出来ない。
疑惑が上がった時点で強硬策に出ても不思議じゃないけれど、そうしなかったのは、当主の人格か、はたまた裏があるのか…。
現時点でそこまで憶測を逞しくする必要もないですね。

ともあれ、紫音も白雪も知っていたと。
白雪が莉奈と離れた真実にも納得だし、この落としどころは、人情話としても設定の補強としても機能していたと思ったのでした。

終わりに

切迫した状況で、いざ9巻…というところで引きとなりましたが、これはずるいなぁ。
絶対に先が気になるやつじゃん。
今回、星取りゲーム自体は休止していた分、次回はグッと大きく動きそう。
期待しかありません。

 

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