「冴えない彼女の育て方fine」、それは報われなかった彼女たちの救済の物語【感想】

この記事は

「冴えない彼女の育て方fine」の感想になります。
ネタバレありますよ。

はじめに

ヒロインが可愛いという印象だけが残ったアニメ。
偽らざる僕のテレビシリーズの感想です。
中でも恵の可愛さに惚れました。
いそうでいなかった新しいタイプのヒロイン。
手持無沙汰になると、携帯を弄りだすという癖がまた可愛い。
初期はしょっちゅう、画面の隅のピントの外れたところで携帯をポチポチしてました。

次に可愛いなと思ったのが、英梨々です。
ツンデレ金髪ツインテは鉄板ですね。

この2大ヒロイン見たさに視聴していた感は否めません。
物語はあまり琴線に触れなかったですね。

そんな僕が、この度完結編となる劇場版に行き、どのような感想を持ったのか。
99.9%の方はどうでもいいよと思われるでしょうけれど、気にせずに書きます。
ヒロインが救われた物語だったなと。
特に、倫也との恋が叶わなかったヒロインにとっては。

短いですが、感想を書きます。

英梨々と詩羽の物語

「サークルから抜けた私たちなんて、どうせクレジットも最後の方なのよ」
冒頭からメタ会話を繰り広げていた英梨々と詩羽ですが、本当に最後尾にクレジットされていて草。

でもね、最後尾って実は好位置なんですよね。
本当のモブは、主人公格⇒メインキャストの順の後。
役名も適当、もしくは、記載が無く、「その他大勢」的に纏められているから分かりやすい。
もしも2人が「ただのメインキャスト」ならば、伊織の後あたりに載せられていた筈。

最後尾は、裏主人公的な重要な配役に割り当てられた特等席です。

英梨々と詩羽は仲良く、その位置に一塊となってクレジットされている時点で、本作の裏主人公という証左になっているんです。
実際、物語を振り返ると2人の活躍は主人公カップルと比べても遜色ありませんでした。

結局サークルを抜けた時点で、恋愛レースに於いて恵の後塵を拝することになったわけですよね。
やっぱり苦しい時期や夢を追う環境に共に身を置くことは、主人公を射止めるには必須ともいえる立ち位置です。
そこから離脱することは、恋愛レース自体からの離脱とも居える行為であって。
映画本編スタート時点からそこは分かりきっていたからこその、冒頭のメタ発言にも繋がるのでしょう。

英梨々と詩羽は最初から恋愛に負けたという自覚を持っていた。
あとは彼女たちがそれをしっかりと受け止めるイベントが必要だ。

であるならば、紅坂朱音の脳梗塞での入院もそれによって倫也が彼女たちの助っ人に入ることもその為でしかない。
このイベントで、倫也と恵は大喧嘩することになりますが、これはもう内容からして痴話喧嘩でしたからね。
(倫也が100%悪いので、彼の肩を持つ気にはなれないのですが)
恋愛の発展イベントとしての側面は薄く、全ては英梨々と詩羽の恋の精算としての意味しか感じられませんでした。

ただ、それに気づいたのは終盤。
構成の妙ですね~。
最初は簡単に倫也に頼んだような作りになっていたので、「調子いいなぁ」と流石に呆れてしまったのですけれど。
種が明かされてからは、なるほど~と。

詩羽冷静だなぁ。
彼女は彼女なりに、ここに行きつくまでに相応の苦悩を味わったのでしょうね。
詩羽の恋も本物に違いなかったはずだもの。
裏で枯れるまで泣いたのかなと。
彼女まで取り乱したり、一緒に泣いてたら収拾がつかなくなる…と考えるのはメタ過ぎる考え方ですね。
詩羽ならば、プライドを持って「あの子の前では泣くわけにはいかない」とか考えていたのかも?

ともあれ、冷静に諭す詩羽と泣きじゃくる英梨々のコントラストが、一層彼女たちの苦しい心境を表していたと思いました。
その上で、いがみ合っていた2人の相性の良さも表現されていたのかなと。

倫也を巡って、絶えず争っていた2人。
しかし、こと争いの種が無くなる段階で、詩羽は損な役回りを自ら引き受けた訳で。
彼女だって泣きたかったけれど、それを英梨々に譲った。
譲った上で、支えて・前を向かせた。
英梨々もしっかりと詩羽の優しさに甘えて、ちゃんと認めた。
セリフにもその辺りの2人の関係性の変化が出ていて、「良いシーンだな」と。

blessing softwareのサポートを全力でこなした後、朝焼けの中で抱き合う2人のシーンも見ていて辛かったけれど、良かったですね。
コンビとして前を向いて歩いていきましょう。
失恋の中にも希望を抱かせる会話は、救いとなりました。
…うん。これはヒロイン2人の救いでもあって、僕にとっても救いでありましたね、間違いなく。

ただただ悲しんで、傷ついて終わりじゃ、やっぱり可哀そうで嫌だもの。
倫也を振り向かせていたんだというプライドを持って、彼の良きライバルで居続けるべく、手を取って先を目指す。
クリエイターらしい結びで綺麗だし、なによりも漸くわだかまわりを溶かした新しい関係性に嬉しくなりました。

エンドクレジット後のおまけパートも、鑑賞後の余韻を爽やかにしてくれた意味でもとっても良かった。
下の名前で呼び合う英梨々と詩羽は、良好な関係性を保っていたというなによりの証。
そこをしっかりと確認できた。
「未来」でも倫也や恵と笑いあえる関係性で居られていた。
一応シリーズを見て来た1人としては、この上ないハッピーエンドに映りました。

終わりに

ヒロインが複数登場する物語としての1つの理想的な終わり方だったなと。
全員が報われるハーレムエンドは、設定の段階で作り込まないと難しいですから。
1人のヒロインに絞った上で、他全員と絆を保てたまま終われたというのは、ちょいとあり得ないのかもですけれど、フィクションとしては全然アリでした。

おまけのエピローグがぐっと爽やかな余韻を際立たせてくれて、大変良かったです。

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