「探偵ゼノと7つの殺人密室」第1話でガッカリのちビックリ

密室という甘美な響き

僕ら本格ミステリ嗜好者にとってミステリという言葉は、お菓子よりも甘美な響きを持っています。
どうしても抗えない魅力に溢れており、つい手に取ってしまうのです。
例えその作品が「自分に合わない」と知っていても…です。
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本作の感想に入る前に、先ずは僕の嗜好を書きます。

ミステリの種類

本格(新本格)、ハードボイルド、サスペンス、リーガルサスペンス、倒叙等々。
ミステリと一口に行っても色々とジャンルがあります。
こういったジャンル分けをする前に、更に2つに大別することが出来ます。
ポイントは1つ。
「読者が謎解きに参加できるかどうか」です。

1つのエピソードが問題編と解答編で構成されている。
問題編の中で謎解きに必要な伏線を敷いて、探偵と読者が同じ目線で謎解きに挑める。
これを基本形にしているかどうかですね。

漫画で当て嵌めると、「金田一少年の事件簿」や「Q.E.D.-証明終了-」は「読者参加型ミステリ」です。
ここは異論ないと思います。

人によって意見が分かれそうなのは「名探偵コナン」でしょうか。
黒の組織編に代表されるように一部エピソードはそもそもが謎解きというよりもサスペンスに寄りますし、1話の「ジェットコースター殺人事件」等は「読者不参加型ミステリ」です。
個人的には「参加型」に分類できると考えていますが、違うという意見も分かるかな。

こうした観点で分けると、僕は「読者不参加型」が苦手なんです。

参加型が好き

ミステリの醍醐味は、「意外な結末に驚ける」点です。
犯人の正体だったり、トリックの意外性であったり、物語自体に巧妙な趣向が凝らされていたり。
作者は読者の予想を裏切る結末を用意してくれています。
騙されることの爽快感が堪らないんですよね。

んで、騙されるには、読者が物語の先を想像する余地が必要になってきます。
犯人は誰なんだろう、トリックは何だろう。
台詞であったり、登場人物の所作であったりと読者は謎解きに必要な要素を見つけ出して、予測を立てます。

探偵と読者が同じ目線で、同時進行で謎解きに奔走する訳ですよ。
さながら探偵(作者)と読者の知恵比べ。
どちらが先に謎を解けるかの勝負に興じれるんです。

僕にとってミステリは、こういった楽しみが出来る読み物。
解けたら万々歳。解けなくても爽快。
99%の割合で解けませんけれど、そんなのどうだっていいんです。
結末に驚ければ、もうそれは素晴らしいミステリということなのです。

故に、「読者不参加型」は楽しみ方が分からなくて困惑するのですよね。
探偵が一方的に謎を解く。
読者は置いてけぼり。
予想が出来ないから、結末にも驚きを持ちようが無いのです。

さてさて、本作の感想です。
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第1話が…

実は1話は「サンデー」で読みました。
最初にも書きましたが、強烈にタイトルに惹かれたのですよ。

7つの殺人密室。

嗚呼。
密室トリック。
トリックの中でも人気ナンバー1の花形スター。
トリック界のイチロー。
きゃーー、こっち向いて~~~(謎

魅力いっぱいの密室が、それも7つも。
表題にするほどの突飛な発想力で以て考え抜かれた密室トリックが描かれるのではないか。
僕の好奇心をこれでもかと刺激してくるんです。
そりゃ読むに決まってますよ。

で、読んだわけです。
端的に言うとガッカリしました。
「読者不参加型」だったからです。

探偵ゼノが登場すると、彼は「僕らには分からないヒント」を集めて思考を構築。
推理という過程を跳躍して、真相に一っ跳びします。
これでは犯人もトリックも考えようがありません。
驚けないんですよね。

やっぱり伏線は必要ですよね。
かの名探偵シャーロック・ホームズは、こんな名言を残してます。

もし中間の推理をことごとく消し去って、ただ出発点と結論だけを示すとすると、安っぽくはあるが、ともかく相手をびっくりさせる効果は十分だ。

名探偵の言葉のように、やりようによっては、探偵が読者を置き去りにして真相を披露しても、読者を驚かせる事が出来ます。
しかしそれには、伏線が必要です。
結論を述べた後で伏線を拾えば、読者は納得し、同時に驚けます。

今回改めて1話を読みましたが、やはり伏線と呼べるものはありませんでした。
ゼノがそれを拾うという作業も無い。
事件自体には驚けないんです。

「残念なミステリ」。
そういう評価を与えてしまったのですよね。

では、何故今回僕はコミックスを買ったのでしょうか。
答えは簡単なのです。
「先が気になったから」です。

意外な結末

事件自体には意外性を感じませんでしたが、1話の終わりには、あっと驚く展開が待っていました。
最初の事件では、真犯人を裏で操っていた存在がいたのです。

それは途方もない綿密な計画。
5年もの歳月を費やした計画。
黒幕は、先ず動機を作ります。
自らが設計した球場に、敢えて手を抜いた箇所を作ると、「被害者」にそれを教えます。
手抜き工事の事故に見せかけて、ライバルを蹴落とす手段を。
「被害者」は実行します。
「真犯人」は、その罠にかかり、”命”を絶たれます。
動機が生まれた瞬間です。

こうして黒幕の計画は滞りなく始まりました。

続いて、殺人トリックを仕込んだ球場を設計すると、今度は「真犯人」を唆します。
構造的欠陥という名の殺人トリックを教えて、憎き「被害者」を殺すように仕向けます。

計画が走り始めてから5年。
「真犯人」は復讐を果たしました。

これが第1話のあらすじです。
この事件を解決したゼノは、殺人現場となった球場を去ろうとします。
そこに掛けられる声。
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 7つの密室だ!
 あらかじめ殺人の仕掛けを施した7つの建造物!
 これを手に入れた者は誰でも、完全犯罪が可能となる! 

黒幕がゼノに宣戦布告してきます。

ミステリとして読むのではないなとこの時点で思いました。
探偵と犯罪フィクサーとの対決を楽しむ作品なんだろうなと。
単純な構図を思い浮かべたんです。
ミステリに託けたよくある形の作品。
そう思った次の瞬間でした。

想像外の展開が待ち受けていました。
これには驚かされました。
確かな「意外性」があったのです。

第1話は先が気になって仕方ない終わり方だったんですよね。
だから買いました。
その先を読みたくて。

墓標館の殺人

第2話から4話仕立てで「第1の殺人密室」の幕が上がります。
結論からいうと、この話はしっかりと「読者参加型ミステリ」の体を取っていました。

犯人もトリックも予想(推理)出来ます。
難易度的には易しいです。

捻らずに直感に従って考えればトリックは解けるし、犯人の正体も分かり易いです。
ヒントとしては、先程引用した黒幕の言葉ですね。
多分、それを示すための「第1の事件」なのでしょうから。

やはり事件自体に意外性はありませんでしたが、期待もあります。
第1に僕が好きな「参加型ミステリ」にしてくれてた点。
謎が複雑になれば、いずれ驚きを得られるでしょうから。

第2にその「いずれ」が訪れそうな予感。
敵が強くなるように、どんどん謎が複雑になる可能性があります。

「墓標館の殺人」編からは、1話の「がっかり感」を覆してくれる期待感に溢れていました。

終わりに

1巻だけでは、嵌れなかったのは確かです。
ですが、2巻以降への期待感に溢れていたのも確か。
大いに期待して読み続けて行こうと思います。

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