「SLAM DUNK」 あだ名が齎す2つの効果

この記事は

「SLAM DUNK」に関する考察記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

花道の特技の一つ

この漫画の主人公である桜木花道。
彼が得意とするのが、人にあだ名を付ける事ですね。
その名づけ方にも一定のルールがあって、第一印象で決まると言っても過言では無いと思います。
先ずはこのルールについて、おさらいしておきます。

〇ルール? 良い印象から入るケース
基本的には仲間に対してはこちらに該当します。
名前からあだ名を付ける場合ですね。

主なキャラは以下の通り。

名前あだ名
三井寿ミッチー
宮城リョータリョーちん
安田靖春ヤス
潮崎哲士シオ
角田悟カク
野間忠一郎チュウ

例外は陵南の福田吉兆ですね。
彼は敵なのに何故か「フクちゃん」と名前から名づけています。

〇ルール? 悪印象から入るケース
悪印象と書くと本当に「悪い感情」を持ったように思えちゃいますが、必ずしもそうでは無く。
敵チームのプレイヤーなんかもここに入りますように、花道が敵として認識した場合がここに当て嵌まると思います。

このケースの場合、花道は相手の身体的特徴からあだ名を決めます。
主なキャラとしましては以下の通り。

●顔(頭)から判断

名前あだ名
赤木剛憲ゴリ
流川楓キツネ
魚住純ボス猿
花形透メガネ
牧紳一じい
岸本実理チョンマゲ
河田雅史丸ゴリ
野辺将広ポール
沢北栄治小坊主

●体格から判断

名前あだ名
河田美紀男丸男

●印象から判断

名前あだ名
清田信長野猿
宮益義範キツネ
南列カリメロ

●衣服から判断

名前あだ名
青田龍彦ジュードー男

●その他

名前あだ名特徴
越野宏明小僧ただの悪口としか思えないw
田岡茂一じじい見た目(年齢)から
藤真健司ホケツベンチスタートだった為

※流川はあまりあだ名で呼びませんが一応。また、ネーミングも印象からなのかもしれない。
※南は顔からかも。

赤木がここに入っているのは、第一印象が悪かったためですね。
最初は花道の「敵」でしたからw

例外としましては、小暮(メガネくん)と安西先生(オヤジ)ですね。
特別印象が悪かったという訳では無いですが、2人とも身体的特徴から名づけられています。
名前を知る前にあだ名を作ってしまったからなのかもしれません。

また、ミッチーも特異なケース。
やはり最悪の印象から入った為、「女男(最初長髪だった為)」だったのが、仲間になってから「ミッチー」に変わりました。

以上のように、花道は主に2通りの方法であだ名を付けていました。
これが作品にどのような効果を齎したのか。
いよいよ本稿に入っていきます。

1つ目の効果「印象付け」

花道のネーミングは非常に分かりやすい。
特にルール?なんて、小学生とか幼稚園児レベルと言ってもいいかもしれないw
でも、だからこそ強く印象に残るんですよね。
身体的な特徴をあだ名としているから、あだ名だけでキャラの顔が思い出せるほど。
名前でピンと来なくても、あだ名聞けばどんなキャラか分かるなんて事も人によってはあるんではないでしょうか。

さて、中でも僕が印象深いのが河田雅史ですね。
山王工業高校の4番で、赤木を最も苦しめた男です。

そんな彼のあだ名は「丸ゴリ」。
「丸い赤木」という意味なのでしょうね。
確かに丸いですし、それ系統の顔をしてます。
非常にナイスなあだ名だったと思うのですね。
限りなく失礼ですがw

さて。
この「印象付け」の効果。
キャラを覚えるのには非常に打ってつけであったのですが、ちょっとした弊害があると思います。
これについては2つ目の効果の項で言及します。

2つ目の効果「対海南、衝撃のラストパスの演出効果」

湘北VS海南。
湘北高校が、王者海南を脅かした大試合。
土壇場まで追い詰め、あと一息で…という所で花道が世紀の大チョンボを犯してしまいました。
赤木と高砂一馬(海南大付属 センター)を間違えて、高砂にパスを出してしまうという失態です。

ギャグシーンでは無いものの、思わず笑ってしまいかねないようなシーン。
でも、内容は超ドシリアスで。
悔しくて泣く花道。
あまりにも落ち込んだ彼は、自戒の意味を込めて頭まで丸めました。
花道が本気でバスケに打ち込んでいる姿を描いたシーンの一つだと個人的には思っています。
お気に入りのシーンですね。

さてこのシーンに関して。
何故高砂にあだ名が付けられなかったのでしょうか。
理由は分かりません。
分からないのですが、僕は、あだ名を付けなかったからこそ、この名シーンが生まれたのだと思っています。

高砂って、これ読んでくれている方は当然記憶していますよね。
知らないという方の為に一応。

↑高砂一馬さんです。
髪型と言い、顔と言い、花道が間違えるのも無理が無い程赤木にそっくりですw
そう。本当に赤木にそっくりなのですよ。

だから花道が彼にあだ名を付けていてもおかしくなかった。
ネーミングルールに則れば、高砂は容姿からあだ名を決められた事でしょうから、それこそ、山王の河田兄弟と同じく「ゴリ」から派生させたようなものを付けられても不思議では無かった。

牧、神、清田らに隠れてはいますが、彼も立派なスターティングメンバーですしね。
しかも試合では花道ともマッチアップしていますし、逆にあだ名が無いのが不思議なくらい。

でもですね。
もしも花道が高砂にあだ名を付けていたらどうなっていたのでしょうか。
仮定の上に仮定を展開させても意味ないですが、それでも妄想しますと…。

あだ名を付けた上で、上のようなパスミスを花道が犯した場合。
読者はきっと花道をズタボロに叩いていたのではと思うのです。
理由は、やはり「あだ名」を付けたから。

「〇〇ゴリなんて、赤木みたいなあだ名を付けて意識するから間違えたんだ」
「自業自得」
このような事を読者は、花道に対してぶつけていたのではないかと思うのですね。
とてもじゃないけれど名シーンだなんて思われず、ダメなシーンとして名を残していたかもしれない。
そこまではいかなくても、少なくともシリアスで衝撃的なシーンとは見做されていなかったかもしれないですしね。
ギャグシーンだと思われていたんじゃないかなと。

1つ目の効果の項に書いた「弊害」とはこれの事です。
あだ名って確かにキャラの印象を強めます。
ですが、場合によっては強くなった印象が足枷となる事もあるんじゃないでしょうか。
滅多にある事では無いと思っていますが。

上の妄想展開がまさにその「滅多にないケース」で。
この名シーンは、花道が高砂にあだ名を付けなかったからこそ生まれたシーンだと思うのです。

このラストパスの展開がどの時点で考えられたのかは分かりません。
もしかしたら、この回のネームを切っている段階かもしれないし、海南戦が始まる前かもしれない。
なんにしても、もし高砂にあだ名が付けられていたら無かったであろうし、付けられなかったからこそ生まれたシーンなのだと思います。
個人的には、花道が高砂にあだ名を付けなくて良かったなと思いますね。

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