「千歳くんはラムネ瓶のなか」第5巻感想

この記事は

「千歳くんはラムネ瓶のなか」第5巻の感想です。
ネタバレを含みます。

はじめに

夏休み。
ラムネの季節。
イマイチ判然としなかったタイトルの意味を薄っすらと予感させる内容。
そうして、物語は大きく動き出す。

青春と言えば夏が似合う。
ということで、激動の第5巻感想です。

感想

僕が子供の頃、好きな季節は断然に夏でした。
夏生まれで誕生日プレゼントが貰えるからという現金な理由も大きかったのですが、なんといっても夏休みがデカかった。
子供にとっての夏休みと言うのは、掛け替えのない期間です。

祭り、海、プール、旅行、TBSアニメフェスタ、タッチの再放送。
楽しいことがこれでもかと詰まった夢の時間。

物凄く楽しいからこそ、過ぎゆく夏と共に膨れ上がる寂寥感。
夏が終わっちゃうんだというやるせない気持ちと高く積まれた手つかずの宿題の山。
まるで「楽しい」の貯金を搾取するかの如く、夏の終わりは多くの痛みを与えてくるのです。

流石に社会人になると夏なんて暑いだけで、楽しいことなんて1ミリも無くなるんだけれど、だからこそ当時の記憶を揺り動かされるような体験をしました。
5巻には、夏の楽しさと、それと同等の悲しみが詰まっていました。

なんでもそうだけれど、振れ幅が大きいほど印象にも大きく残ります。
作中の言葉を借りるならば、ギャップも同義と呼べるかもしれない。
普段の印象とは真逆の水着を着ることで、男心を大きく揺さぶるテクニック。
なれば、今巻はまさにそういう構成でした。

4章構成の今回、3章までは「高校二年生の夏」を全力で楽しむ彼らの青春譚がありました。
優空との買い物からの「通い妻」の現場に陽と悠月が合流しての夕食会。
明日風との夏の小さな冒険。
夕湖母娘との突然の食事。
祭りではチーム千歳総出での初めての花火鑑賞。
そして、3泊4日の勉強合宿。

ヒロイン全員と確かな思い出を積み重ねていく日常がこれでもかと描かれていました。
ただただ羨ましく、そして、幸せそうな日々。
青春してるなぁ、眩しいなぁとおじさんは目を細めながら読んでいました。

だからこその4章の落差たるや…。

男女混合の仲良しグループ。
傍から見てるとただただ羨ましくもあり、陽キャ・勝ち組の代表格にも見える。
それこそ美男美女ばかりならば、男女関係なく羨望、嫉妬を向けちゃうのは自然と言える。

だけれど、当事者たちは、非常に危ういバランスの上で成り立っているという自覚があり、今この時の「奇跡」を大切に想い、愛おしく感じ、少しでも長く続くよう願っている。

こういった彼らの「リアル」が3章までの楽しい日々に、確かに書かれてるんですよね。
これらは云わば伏線であって、正直無かった方が、関係が壊れた時の絶望感をより強く感じれたと思います。
夕湖が振られ、彼女を諦めていた海人が激昂し、チームの危うかった関係が壊れてしまう。その衝撃をより強く印象付けられたでしょう。

ただ、そうしなかったのは、僕は裕夢先生の「やさしさ」と解釈しました。
読者にしきりに不穏な空気を感じさせて、ショックを和らげてくれたのだと。
作劇的にはキャラクターの心情描写をしっかりと入れることで、ドラマ性を高めるという意図だったのでしょうけれど、今だけは「そうじゃない説」を推したい気分。

なんにせよ、大きく大きく物語が進行しました。
メインヒロイン筆頭の夕湖の失恋。
このままラストまで駆け抜けていくのか?

はたまた、夕湖の逆転劇が待っているのか。

夏を想起させるタイトルだけに、クライマックス突入説を拭い切れない中、どう展開してくのでしょうね。

終わりに

夕湖が「健太っちー」と言うたびにフライドチキンが食べたくなる病にかかりましたw
久々に食べに行こうかしらカーネルさんのフライドチキンを。

最新情報をチェックしよう!