「劇場版 名探偵コナン 緋色の弾丸」ネタバレ感想 ノンストップ脚本の素晴らしさと「名家連続変死事件」のオマージュに彩られた大傑作

この記事は

「劇場版 名探偵コナン 緋色の弾丸」の感想です。
ネタバレあります。

キタキタキタキタ!!!!!

コロナの影響を受けて1年間の延期となった「緋色の弾丸」。
ようやく。
ようやく見ることが叶いました。

試写会を見たライターさんの記事で「最高傑作として差し支えない」というレビューを見ていたのですが、まさに!!!!!
少なくとも櫻井さん脚本映画では、随一の出来だったと思います。

感想です。

ハイスピード・ノンストップ

シナリオには緩急があります。
最初から最後までクライマックスという具合に目まぐるしく展開させることは難しいし、それが良いと言うわけではありません。
最後が一番盛り上がるように、タメの部分はどうしても必要な要素です。
我慢して我慢した先に、鬱憤を晴らすような胸のすく快感があったほうが、やはり素晴らしく感じるものです。

では、ミステリーで「緩急」の「緩」に当たる部分はどこでしょうか。
個人的には、捜査シーンにあたると考えています。

ここはどうしても物語が停滞しがちですからね。

それが今回はどうだったのか。
実のところ、「ここが捜査の場面」と呼べるところは唯の一箇所もありませんでした。
コナン、赤井、FBIは、それぞれ常に移動をしながら捜査を進めるわけです。

現場でコナンが調査内容を指示。
赤井とFBIが調べ、結果をコナンにフィードバックする。
それを元にさらなる調査を今度は灰原に託し、コナンはまたそれを受ける。

物語を進行させつつ、少しずつ捜査シーンを散りばめて、真相へと向かっていくわけです。

だから停滞感を全く感じなかったのですね。
強いて挙げるならば冒頭の15年前のアメリカでの事件シーン。
ただこれも動機に必要になってくるドラマなので、決して見逃していいところではありません。
過去回想は物語の停滞の大きな要因の一つではありますが、それを真相解明シーンではなく、冒頭に持ってくることで「中弛みしてるな」と観客に感じさせない構成になっていたと思いました。

このように停滞感を覚えさせない構成が、物語のスピード感を高め、クライマックスへのタメになっていたところが、今回最大のポイントだったと思います。

唯でさえどんどんと進行する物語の速度が、クライマックスでは物理的に加速していくのだから、こちらとしては興奮しっぱなし。
BGMもそんな興奮を煽ってくるので、気持ちも非常に高まります。

二段、三段構えの畳み掛けるような真相シーンも素晴らしかった〜。
犯人特定の方法のダイナミックな演出、赤井のシルバーブレッドとしての超人的な狙撃、急転する事件とカーチェイス。
そして、絶体絶命の状況からの大脱出。

赤井、世良、秀吉と個性的な兄妹の個性をしっかりと出しつつ、それぞれに見合った活躍の場が用意されたクライマックスは圧巻の一言。
これでもかと畳み掛けられる危機の連続には、お腹いっぱいの大満足感を味わえました。

作画も素晴らしかった。
やっぱり作画が良いと、俄然クオリティも上がるように感じますね。
近年の興行収入のアップが製作費にバックされているのでしょうか。
滑らかに動くし、単純に作監の修正具合も良い。

ゲスト声優の浜辺さんの演技も、ところどころ危うい点が見られたものの、それでもゲスト声優の中では安心して鑑賞できるレベル。
少なくともアニメにそぐわない演技ではないので、白けることは無いと思います。

全体的に言うことなしの出来でありました。

ここに来て活きた1年延期

1年間の延期があったことで、この間TVアニメが1000話を迎えました。
本来であれば新作の長編を見たかったところですが、スタッフが選択したのは過去作のリメイク。

何故という思いがあったのですけれど、今回の映画の為だったのだとしたら納得。

リメイクされた「ピアノソロ『月光』殺人事件」は、コナンにとって忘れがたい事件となりました。
「名家連続変死事件」でコナンが平次に痛切な表情で振り返った「唯一犯罪者を死なせてしまった」事件。

推理で追い詰めて犯人を死なせてしまったら、それは犯罪者と変わらない。

コナンはこの事件でもガソリンで自殺を企てていた犯人の思惑を看破し、事前に食い止めた上で、過去唯一死なせてしまった犯人を思い返していました。

「名探偵コナン」を語る上で避けては通れない重要なエピソードで、まさか今回の劇場版にもテーマ的に繋がってくるとは。

確かに予告編で、犯人を銃殺しようと目論むジョディに詰め寄るコナンのシーンがありました。
ジョディは「FBIにはFBIのやり方がある」とコナンの「甘い考え」を一蹴。
赤井がその実行を果たすわけですが…。

赤井に実行を促しつつも、犯人の命を助けるという信念を貫いたコナンの素晴らしさよ。
それを決して誇るわけでもなく、むしろ寂しそうな表情で「月光事件」を振り返ってるかのような演出を入れてくるところに、コナンらしさを見ました。

ある種「名家連続変死事件」のオマージュとも呼べる素晴らしいラストであったと思います。

終わりに

本当に素晴らしい映画だった。
あと数回必ず見に行こう。

そんで次作。
警察学校の同期5人組がまさかの登場ですか!!!

一体どういう物語となるのか。
彼らの新しい活躍を見たいと思っていたので、非常に楽しみです。

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