「金田一少年の事件簿 30th」第2巻 八咫烏村殺人事件 感想

この記事は

「金田一少年の事件簿 30th」第2巻の感想です。
ネタバレあります。

はじめに

1巻の時は感想書かなかったんだね。
「イブニング」誌上で連載中の「金田一少年30th」。
第2巻を読了しましたので、八咫烏村殺人事件の総括と言う体で感想を書きます。

「37歳」とは比べるべくもない内容

やっぱり「37歳」の事件って物足りないんですよね。
敢えてなのかなと、今回の事件を読み終わったら強く感じました。

久々の「少年」。
連載開始30周年を記念した期間限定の復活となった新シリーズですけれど、最初から豪華な作りになっていました。
2つの密室トリックとアリバイトリックが1つ。
それぞれメイントリックになり得るレベルのトリックを3つも使った豪華なモノ。
とはいえ、目新しさは薄かったので、「昔」に比べると感動も同様に薄いんだけれど。
(天樹先生の同じネタをこねくり回す系の発想方法もそろそろ限界なのでは…と偉そうなことを言ってみたり。)

さておき、豪華は豪華よね。
5重密室トリックとかネタが割れれば、な~んだってなるんですけれど、やはり演出(見せ方)が図抜けているから魅惑的な謎として終盤まで引っ張れているしね。
なんといってもフードの中に生首隠すとか狂気じみた「小技」。
密室の謎を解くのにどうしても立ち塞がる「生首をどうやって持ち込んだのか」という疑問の答えを服装に仕込んでいた点は新鮮でした。
「名探偵コナン」の「山荘包帯男殺人事件」(名作よね)を思い出しましたね。
大胆さで言えば「魔術列車殺人事件」の山神団長の首の持ち運びに近いものを感じたかな。

んでもって、今回の白眉は和密室でしょう。
「ダムの底に沈む直前の村」という真犯人の目論見が一番色濃く出ていたこともそうだし、機械に頼らない密室というところは、心理トリック好きな僕にはツボでした。
心理的な密室トリック、大好物なんですよ。
「異人館ホテル殺人事件」の赤い部屋のトリックとか当時感動しましたもの。
今回はそこまで手の込んだものではありませんでしたけれど、「見せかけの密室」トリックとしては、個人的に上位に入りますね。
障子戸で封印された和室ゆえに「細工が施しようのない単純な構造」を逆手に取った単純さが実にいい。
ワイヤーとか使った機械トリックよりも、こういったトリックの方がやっぱり好きだわ。

アリバイトリックにしても一見単純だけれど、見せ方1つで難解に見せていたし、全体的に練り込まれていた印象が強かった。
強いていえば、練り込み具合も犯人特定のロジックや伏線の貼り方も初期に比べると物足りないのですけれど、(連載してない期間も含めれば)30年も続けてきて未だにこのレベルのミステリを提供してくれるところが嬉しいです。

そう。
連載雑誌も変わり、恐らく担当編集者も変わり、制作体制も「マガジン」の頃とは確実に違ってると思うのですよね。
だからこそ「37歳」は、練り込みの足りない物足りなさは仕方ないのかなとも考えていたのですけれど。
同じ「イブニング」で連載している以上「37歳」と制作体制は同じはずで、このクオリティの差は、わざとなのではないかと思わずにはいられません。

推理力が落ちた37歳?

玲香に纏わる「忌まわしい事件」で謎を解くことに懲りてしまったハジメ。
それから20年、歌島での4度目の殺人事件に巻き込まれるまで「推理すること」から離れていたハジメは、すっかり衰えたとしても不思議ではありません。

以前も感想で書いたように、今は「リハビリ」段階なのかなと。
天才もさび付いてしまったけれど、少しずつ難解な事件に関わっていくうちに、徐々に往年の輝きを取り戻していく。
今はその過程なのかなと…思いたいんですよねw

やっぱり練りに練られた事件を読みたいんですよ。
大掛かりなトリックも魅力的だけれど、往年の「金田一少年」の凄さって、脇を固める小技にこそあります。
「え、こんなことが」って位小さな疑問が、しっかりと意味を持っていたり。
些細な違和感が大事な伏線であったり。
靴の痕とか分かりやすい物じゃなかったんですよw

なんだか「昔はよかった」の懐古主義論調ばかりは良くありませんね。
えっと。
纏めますと、久々に事件面で大満足出来ました。

終わりに

次の事件のタイトル、まだ出てないんですけれど、こんなこと今までなくて戸惑ってます。
「金田一史上初の事件」の意味も分からないですし。
なんかタイトルを隠してることに関係してるんかな?

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