「ライアー・ライアー」第7巻 感想

この記事は

「ライアー・ライアー」第7巻の感想です。
ネタバレあります。

SFIA後編

偽りの正義への倍返し編。
後出しジャンケン要素は確かにあるのだけれど、しかしながら、伏線の回収とキャラの物語への落とし込み方がいつもながら巧みなので、「うわぁ面白いなぁ」という感想に着地する。
今回もまた同様でした。

第7巻の感想です。

雅戦の感動ポイント

やはりというかなんというか、2つの大きな戦いがあったものの、ラスボスである佐伯薫戦は実質おまけのような形で、クライマックスは阿久津雅戦のように感じました。
佐伯戦が物足りなかったとか、薄味だったという意味ではありません。
後述しますが、個人的に唸った展開も含めて読み応えのあるものでした。

けれど物語的に、雅の方が佐伯より格上だと半ば判明した以上は、雅戦の方が大事に想えたのです。

その雅戦。
白眉だったのは、ルールの穴の突き方ですね。
緋呂斗の放つ逆転の手管の殆どが、提示されるルールを読み込んで吟味する必要性が薄い点が、僕はなによりも好きなのです。
ルールをしっかりと把握して、その盲点を突くという手法って、個人的にあまり驚けないんですよ。
簡単なルールに潜ませてある穴を突くというなら驚けるんだけれど、複雑なルールになると、もうダメ。
僕が面倒くさがりで、ルールをしっかりと把握したがらないというのもあるのだけれど、もっと大胆に手がかりを提示された方が嬉しい。

今回がまさにでしょう。
ゲーム中の描写に「龍が倒れた際のクレーターや使用後の武器が残り続ける」という、大胆な伏線を仕込んでおいて、それを回収した上での逆転劇ですからね。
読者にヒントを提示しているフェアな条件下での「逆転の発想」だからこそ、「そんな手があるのか!!」と素直に反応しちゃうのです。

緋呂斗の柔軟な発想力が如何なく発揮されていたという点で、この戦いが今回の個人的ベストでした。

さて、一見あっさりと負けた雅ですが、本来の彼女の実力なのでしょうかね?
もしそうなら、いくら彼女のバックに別の組織等々がいたとしても然程脅威では無いのですが…。
ま、多分そうじゃないんでしょうね。

どうもこの最終決戦に於いては、雅の指揮というより、佐伯自身の考えに則って動いていたように感じました。
徹頭徹尾自分の考えは入れずに、敢えて佐伯に従っていたかのような。
佐伯に与えられた能力だけで突破しようとした結果力押ししかせずに、緋呂斗と霧谷に相手にされなかった。
パワー勝負一点しか雅に指示していなかったから、雅も「自分で考えて戦う」ことを放棄していたような。そんな感じがしたのです。
彼女のことは殆ど分かってなくて、あくまでもイメージ上の雅の戦法とは異なるからそう感じただけなのですけれどね。

ヒロイン・水上摩理の物語への落としどころ

先に書きました佐伯戦で最も唸った展開と言うのが、摩理のキャラと物語のリンクです。

囚われの少女と死神。
それを決定づけるカオス値。
最後のゲームは、これらの関係性の構築が出来た時点で、周りの肉付けをしていったのかもですね。
それほどまでに、枝葉のルールよりも圧倒的に重要な設定のように思いました。

死神になるには、カオス値が最も高いプレイヤーになることが必要であり、カオス値は他のプレイヤーへの妨害や謎解き時に「他者を害する答え」を導き出す必要がある。
その対極にいる囚われの少女は、カオス値が最下位のプレイヤーである。
この設定って、納得感が凄いですよね。
PKなど悪質な妨害行為はカオス値が沢山貰えて、普通に迷惑なゲーマーだから死神扱いされても当然だし、その逆が「清らかな存在」と呼ばれても不思議じゃない。

で、後は徹底的に摩理を「清らかな存在」として描いていくだけでいい。

共感性が普通よりも高く、さらにアビリティで強化してるすみれに「摩理は天使のように悪意が全くない」と言わせる。
双子ならではの共感性を他人にも感じれて、それを特殊な技能で確かなものとしているのだから、まぁそうなんだろうと受け入れざるを得ない力押し、嫌いじゃないw

謎解きなんて、2度も入れてる。
どちらも摩理の答えは「他者を害したりすることのない答え」。
丁寧なのは、そこに「他者を害する別解」を添えている点。
「清らか代表」大天使・白雪ですら「魔獣を屠る」という「他者を害する答え」を言っていて、しかも、こちらの答えの方がしっくりとくるのがミソ。
摩理の答えの方がマイノリティであると思わせられるからこそ、彼女の特異性が浮きだってるんですよね。

ここまでしてるからこそ、摩理が「清らかな存在」と言われたら、納得しか無い訳で。

7巻でキャラブレしたわけでは無くて、6巻から摩理はこういう子。
全て最後のゲームの布石としてキャラメイクされているから凄いわけですよ。
逆算でキャラを作ったのだとしても、キャラの物語への落とし方が上手いなぁと思った好例ですね。

終わりに

修学旅行かぁ。
なんだか本物の更紗が出てきそうな雰囲気。

一体どこに行くのでしょうね。
何処に行くにせよ、彼らが観光地に行くのは、甚だ迷惑なんじゃとつい考えてしまうw

やたら好戦的なの多いし、派手なゲームしたがるしw
一般人を巻き込まないかハラハラしますね。

「どこに行くのか」という変わった期待をしつつ、次巻を待ちます。

 

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