「リコリス・リコイル Recovery days」感想

この記事は

小説「リコリス・リコイル」第2巻の感想です。
ネタバレあります。

小説版第2弾!!

原案のアサウラ先生自ら筆を取る小説版第2弾が発売されました。
あいも変わらず銃器の描写が専門的過ぎてその辺り全くついていけないのですけれど、リコリコの面々の姦しくも楽しい日々が活き活きとあって、現実の嫌なことを一時でも忘れさせてくれました。

感想です。

小説だからこそ分かること

アニメの苦手なところといえば、仔細な情景や心象、動作の描写だ。
勿論苦手とするだけで、この辺りを緻密に活写している作品もあり、苦手だからこそ見事に表現されているとそれだけで絶賛されたりもする。
ただまぁ、受け手側にもそれ相応の理解力は求められるために、やはり力を入れるところでも無い気はする。

その点においては、小説の方に分がある。
むしろ得意分野と言っても差し支えないだろう。

さて、今作でもアニメでは中々伝わってこなかった点が小説ならではの克明な描写によって見事に浮き彫りになっていた。

千束の圧倒的なポテンシャルに関してである。

フキをメインに据えた第四話「One’s duties」にあるようにフキや千束らファースト・リコリスは、セカンドやサードとは一線を画す存在である。
というか、このエピソードの説明で、その「希少性」というか「有り得なさ」加減が殊更伝わってきた。

ターゲットに一切警戒させることのない「人畜無害振り」を演出すべく、服装から体型、年齢においてまで徹底的に管理されるという性質には、なるほどなぁとその設定の奥深さに唸らされた。

銃は重く、また、発射時の反動もあり、アニメや漫画のように「女子供でも気軽に扱える武器」では無い。らしい。
らしいというのは、当たり前だけれど実感したことが無いからだが、多少なり重火器をリアルに描写している作品によれば、そう書かれている。
勿論女性にも扱いやすい小型の拳銃も存在するようだけれど、ティーンエイジャーの少女が気軽に扱える銃というのは恐らく存在しない。
作中でもそのような特殊なカスタマイズされた銃などは出てこず、どうも一般的には「少女の手にはあまりある」銃を使用しているようだ。

そういった銃を扱うためには、相応の筋力は勿論として、しっかりとした訓練を積む必要性がある。
ただし、そうなると一定の体格となってしまい、「相手に警戒心を抱かせない」という主旨に反してしまう。
「無警戒の相手の懐まで近寄り、至近距離から一発で仕留める」というのは、だからこそ設定されたとも言える。
目と鼻の先まで近づければ、銃の腕前は然程必要とはしないだろうし、次の動きに備えるべく発射後の反動を抑えなくてはならない重要性も高くない。
華奢な少女の姿のまま仕事を熟せるというわけだ。

こういったリコリスの基本をそのままに、卓越した身体能力を有することがどれほどあり得ないことか。
ファーストほどの戦闘力があれば、暗殺じみたリコリスの基本を無視して良いのではという意見もあるだろうが、そうなるとリコリスである必要性すら無いわけで、やはり「どう見ても無害な少女」という基本は逸脱できないのであろう。

やや話が逸れたが、千束の異常さがリコリスの設定から見ても十分に伝わってくるのである。

さて第0話「そして、幕が開く」の内容に話を転じてみる。
映画好きの千束が、「映画館で映画を見ることに魅力を感じない」たきなに、それがどれほど人生において損をしているかを力説し、2人で映画デートに向かうまでの物語である。

作中に登場したのは、「TOHOシネマズ 錦糸町オリナス」と「TOHOシネマズ 錦糸町楽天地」のようだ。(調べた)
2人が予約したのが、「錦糸町楽天地」の17時30分の上映回。
17時20分に「錦糸町オリナス」にいて、28分には「錦糸町楽天地」に着いていることが作中から読み取れます。
googlemapによると徒歩9分、650メートルと出る。

作中では、約700メートルとなっているので、一先ず作中の方を優先してみよう。
さて、ここからは少し推測が混じるが、「錦糸町オリナス」で間違いに気づいた2人は、多少の会話を挟み、急ぎエレベーターで1階に下ります。
「建物内でダッシュは出来ない」
「エレベーターから1分と掛からずに映画館のエントランス」
ということから、6回の映画館から建物を出るまでには、少なく見積もっても4~5分は掛かったと見える。
4分掛かったとして、スタート時刻は17時24分となる。
「新天地」に到着した2人は1階に止まっていたエレベーターに乗り込み、この時点で「あと2分」と言っていることから、「錦糸町楽天地」到着は17時26分頃だろうか。
つまり、700メートルを2分間で走破したことになる訳だ。
ここから速度を計算するとおよそ時速21km!!!

実際は「土曜の混雑した人ごみの中」なので、瞬間的には(例えば錦糸公園内)これ以上のスピードを出していたのではないだろうか。
箱根駅伝のランナーの平均時速が20キロということなので、それ以上の速度でスカートはためかせて走ったことになる。
しかも、彼女らは運動靴ではなく、任務帰りなのでローファーである。
走るには不適切な服装で駅伝ランナー同等の速度を出す。
計算結果以上の凄さが見て取れないだろうか。

しかも、セカンドリコリスのたきなが息切れする中、平然と走破した千束。
彼女の異常なまでの身体能力のほんの一旦ではあるが、垣間見えた思いだ。

他にも千束のポテンシャルの高さをさりげなく描写していた。
こういうのは、まさに小説ならでは。

絵的に派手な「弾道を見切って、近距離からも弾丸を避けられる」という千束の能力ばかり目立つが、やはり身体能力的にも群を抜いた存在であることが分かったのが面白かった。

終わりに

そんなことより百合百合な描写が凄く眼福でございました。
千束からたきなを意識した描写が多かったのは特にニッコニコであった。
対するたきなも「自身の夢の中の千束がたきなをカップルとして意識していた」ことから、彼女の千束ラブが仄めかされていたのも良き。

次もありそうなので、是非ともその辺りをパワーアップして届けて頂きたいものだ。

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