歴代最不幸ヒロイン・速水玲香が幸せになるには 「金田一少年の事件簿」考察

この記事は

「金田一少年の事件簿」の考察記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

祝!!!!!!!

勝手に「金田一」祭開催〜。
2,3回程今作の記事を書いていこうと思ってますよ。
最初は漫画界随一の不幸を背負いこんでしまったヒロイン・速水玲香についてです。
彼女が幸せになるエピソード。そろそろあっても良いんじゃないかな。
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この記事には重大なネタバレがあります。
未読の場合はご注意願います!!

波乱万丈

簡単にではありますが、半生を振り返ってみましょう。
先ずは巻き込まれた事件(登場エピソード)をおさらい。

事件名概要
雪夜叉伝説殺人事件ドッキリの撮影中に殺人事件に遭遇。ハジメと出会う
タロット山荘殺人事件父の経営する山荘を舞台にした連続殺人に巻き込まれる。美雪と出会う
速水玲香誘拐殺人事件誘拐される
速水玲香と招かれざる客ファン感謝イベントに脱獄犯が紛れ込む
錬金術殺人事件最重要容疑者になる

他にも「金田一少年の決死行」等にちょいちょい出てきますけれど、主な登場エピソードはこんな感じです。

では、波乱万丈な半生を細かく見てみます。

大女優・三田村圭子の二番目の子どもとして生を授かる。本名は梓。
しかしながら圭子は女優であることを選び、2人の子供を夫に託し去って行きます。
物心つく前に母に捨てられます。
その後、2歳の時に速水雄一郎に兄・小城拓也と共に誘拐され、実父が殺されてしまいます。
この時のショックで記憶を失うと共に、首に何かを巻く事が出来なくなります。(実父が絞殺されたのを目撃した事に因るトラウマ)
そのまま雄一郎に人質として拉致されると彼の娘・玲香として第二の人生を歩む事に。
僅か2歳にして大不孝です。
母に捨てられるわ、実父は殺されるわ、殺人犯に育てられることになるわ、記憶を失くし、トラウマまで作るわ。

だが、彼女の不幸はまだまだこんなものではありませんでした。
5歳で芸能界に入った彼女は、14歳でアイドル歌手としてデビュー。
赤間の芸能事務所に入ったのは何時の事か分かりませんが、雄一郎のタロット山荘建設費として赤間から借金をしたのは、この間かもしれませんね。
タロット山荘は事件の2か月前にオープンしたばかりなようなので、15〜16歳位の時期かな。
さてさて。17歳になると、いよいよ本番です。

手始めにバラエティ(ドッキリ)の撮影で訪れた北海道で連続殺人事件に巻き込まれてしまいます。
堂々の容疑者デビューです。
ここでは特に被害は無かったのですが、着替えシーンをバッチリ見られ、かつ、体重までバレルという年頃の女性にはキッツイ目にあってます。

この事件でハジメに出会った玲香は彼に惚れ、数か月後(?)には手紙でハジメを青森にある実家に呼び出します。
凄い行動力です。恋する乙女の成せる業ですね。
こうして雄一郎が経営する「タロット山荘」を訪れたハジメと美雪。当然殺人事件が起きます。
この事件で玲香は、事務所社長の赤間と養父の雄一郎を失います。
犯人はマネージャーでもあり実兄でもあった小城拓也。
2歳の時の悲劇を知り混乱する玲香は、吹雪の中飛出し、危うく雪崩に巻き込まれそうに。
危機一髪のところ、拓也に助けられた玲香は兄をも失ってしまいました。
恋敵である美雪の存在を知ったのもこの時。
事件のショックと恋敵の存在。しかし気丈にも立ち直った彼女は堂々の諦めない宣言。

事務所を移籍する羽目になるわ、兄貴が殺人犯になるわ、その兄まで死んでしまうわ、養父の正体を知ることになるわ。
そうそう。赤間から借金の肩代わりに関係を迫られていたのも、この時期の不幸の1つ。
「世界一好きな男性(ハジメ)」に恋敵が居る事を知ったのもショックだったと思いますよ。
折角2人きりになれると思ったのに、呼んでも居ない美雪がノコノコとくっついてきてたんですから。
1つの事件でどんだけ不幸を背負いこむんでしょう。
流石です。
それでもめげずに前を向く彼女。
いやはや、強いですよね。

さて、移籍先の鏑木プロの社長である鏑木葉子と養子縁組が纏まろうかという時期に、またしても彼女を事件が襲います。
ピエロに誘拐されました。
ド直球です。
「人生で2度も誘拐された女」。そうそう出来ない経験です。
まだ彼女自身を狙った営利誘拐だったり、彼女を恨んだ末の犯行ならば多少はましだったかもしれません。
そうではなく、一緒に誘拐された彼女のマネージャー安岡殺しのトリックの為。
完全な巻き込まれです。
しかも鏑木が身代金を用意する事も無く、養子縁組にも醜い裏の事情があったと判明。
もう散々です。
誘拐されるわ、社長に裏切られるわ、また事務所が潰れるわ。

唯一の救いは、実母・圭子と再会し、彼女から母の優しさに触れられた点でしょうか。
顔すら覚えてない母の手作りのおにぎりを食せたのは何よりでした。
とはいえ、圭子が母だと知ることはありませんでしたが。

2度の事務所移籍にもめげず、着実にキャリアを積み上げる玲香。
こんだけスキャンダルな事件に巻き込まれても、それでもトップアイドルとして君臨し続けるのは相当凄いですよね。
芸能界で成功を収め続けている訳です。
その証拠に豪華客船を(多分)貸し切っての単独イベントを開催。
ハジメと2人きりになろうとするも、どうやって海上を行く船に乗り込めたのか脱獄犯・朽沼も一緒する事に。
警備がざる過ぎです。
身元不明の不審者を船に紛れ込ませちゃうんですから。
危うく人質に取られそうになるものの、ハジメの機転で難を逃れ、この事件は被害は大きく無く済みました。
恋路はオモックソ邪魔されちゃいましたけれど。
余談ですが、この時のゴリラ顔のマネージャーさんが歴代のマネージャーの中でも唯一の一般人と言えそうです。

船での事件から暫くして、恋琴島(れんきんじま)を舞台とした宝探しバラエティに出演する事になった玲香。
一般参加者としてハジメも参加してきた時点で、玲香が連続殺人で酷い目に遭う事は火を見るよりも明らかでした。
最重要容疑者として軟禁されます。
椅子に座らされ、後ろ手にしっかりと縄を巻かれるという芸人でもなかなか体験出来ない目に遭います。

殺人のスケープゴートにされたのは、当然真犯人の計画通り。
恨みを買っていた訳ですが、そこは我らが玲香さん。
与り知らぬところで勝手に恨まれ(立派な逆恨み)、復讐の対象にされました。
流石の一言です。
そうそう。客船の時のゴリラマネージャーから玲香のマネージメント引き継いだ美影さん。
言うまでも無く復讐のターゲットでした。
殺されはしませんでしたが、事件の核心に近いとこにいるというね。
悪人という訳でも無いし、罪に問われる事もしてなかったですが、若しかしたら交代かもですね。

悲惨…ですよね。
この1年の出来事だけで、「いつみても波乱万丈 速水玲香3時間スペシャル」とか出来そうです。
「雪夜叉伝説殺人事件」時の体験がどれだけ生温かったか(笑
ただの容疑者になるなんて不幸でもなんでもないんだな〜と勘違いしちゃいそうです。

わずか17年の人生で常人数人前の不幸を平らげた速水玲香。
そろそろ彼女が本当の意味で幸せになるエピソードが来ても良いのかなと。

玲香が幸せになるには

何度も書きますが、これだけの目に遭っても芸能界の第一線で活躍出来ているんです。
楽しみ好んでアイドルをやれているのですから、一概に不幸だというのは失礼に値しそうではあります。
でも、プライベート面はぼっろぼろですよね。申し訳ないですが。

母に捨てられ、実父は殺され、養父は実父殺しの犯人で兄に殺され。
兄は養父を殺してから死んでしまい、事務所社長には裏切られる。
親友の為に挑んだ仕事では、その親友の兄貴に勘違いから逆恨みされる始末。
マネージャーも2人死んで、1人は事件の関係者。
4件の殺人事件に巻き込まれ、2回も誘拐を経験する。(1度目は忘れてるとはいえ)
イベントまでも脱獄犯に荒らされちゃいましたしね。

マスコミにも痛くも無い腹を相当探られているんでしょう。
「慣れてるわ」と笑顔で返せるくらい日常茶飯事というか、本当に慣れてしまったんでしょうね。

怒涛の1年を過ごしている(サザエさん時空を採用してる本作に於いては、まだまだこの17歳の1年は続いていくのですが)玲香が、笑顔でいられるのはハジメがいるから。
「雪夜叉」の時に、迷刑事の三枚目を演じていた頃の明智に犯人にされそうになったのを助けてもらった事で気になってからの縁。
それから何度か事件を通して関わり、酷い目に遭う度にハジメが支えてきた。
そりゃ惚れます。
吊り橋効果みたいなものかもですが、何度となく危機を救ってくれたようなものなので。
だから「錬金術」の頃には「この世で一番好き」と美雪に宣言できるほどに愛を募らせていたのは自然に思えます。
でも残念な事に玲香の想いは遂げられそうもありません。
美雪がいる以上は叶う事は無いでしょうし、かといって美雪が失恋しろとも思えない。
ハジメと結ばれるのが玲香にとっては一番だけれど、それが難しい以上どうすれば「幸せになった」と見做せるのか。

どんな事件よりも難しい謎な気がします。
でも、この謎は解けて欲しい。
もう少々玲香について深く見てみます。

圭子との関係

玲香に深いダメージを与えた「タロット山荘殺人事件」。
最も心的に苦しんだこの時の彼女の気持ちを追う事で、玲香の幸せが見えてくるんじゃなかろうか。
そう思って改めて読み返してみました。

そうして気付いた事。
玲香ってハジメに似てるのかもしれないなという事。

ハジメは「罪を憎んで人を憎まず」を貫く性善論者です。
どんなに酷い犯罪を犯した人間であっても、根っからの悪人は居ないと信じている。
玲香もそれに近いものがあるんじゃないかなと思うんですね。

事件が終わり、雄一郎が実父を殺した男で自分を拉致した誘拐犯でもあるという真実を知った玲香。
覚えてないとはいえ実父を殺した人物です。
雄一郎を憎んだりしてもおかしくない。
15年間育てて貰ったから簡単には割り切れないかもですが、少なくとも「父」と思えなくなるのではないか。
でも玲香は「お父さん」と事件後でも雄一郎を称するんですよね。
台詞中のお父さんにはカギ括弧が付くんですけれど、それでもまだ玲香の中では「お父さん」。

で、ハジメにした話と言えば「お父さんは何故自分を殺さなかったのか」という疑問と自分なりの答え。
思い出されるのは優しい顔ばかり。
15年前の事件はしっかりと受け止めた上で、雄一郎を許してるような感じなんですよね。
15年と云う歳月の間に注いでくれた愛情を本物と見做してるというか。

実際雄一郎は玲香を本当に愛していたと思います。
弾みで伊丹(「タロット山荘」最初の犠牲者)を殺してしまった時も、玲香の事を考えていましたし。
アイドルとして頑張っている玲香を応援していた。
節々で「玲香の為」の思考を巡らせていた彼は、確かに「父親」と呼べる人間に変わっていた。
自分を殺さずに大切に育ててくれた。
この「変わった」部分を客観的に評価出来て、「悪い人じゃない」と考えたのかなって。
優しい笑顔しか思い返せないあの人は根っからの悪人じゃないから赦そう…みたいな感じで。
だから、玲香も性善論者なのかもしれないなと感じたんです。

イメージの話なんですけれど、こういう性善論者って愛に満ちてると思うんですよね。
人間愛っていうのかな。
人間そのものを愛している。
だから他人を嫌いになれなくて、最終的には赦しちゃう。

ifの話ですが、仮に美雪が殺されてしまったら、ハジメは復讐に走るでしょうか。
「学園七不思議殺人事件」の時、美雪が放課後の魔術師に襲われ、死の淵を彷徨った事がありました。
この時ハジメは犯人に対して怒るよりも自分を責め、事件から引こうとまでしました。
美雪が助かった際も、純粋に犯人を捕まえるという感じであり、「美雪を襲った犯人を憎む」気配は微塵も無いんですよね。
佐木を殺された際も似たような感じで、犯人というより事件を憎む。
ハジメは例え美雪や両親等「愛する者」が殺されてしまっても、復讐に走る事はしない筈です。
躍起になって真相を究明し、そして説得するんではないかな。
「更生してくれ」と。
犯人に対しても愛情を持って接しているから成せる業でしょうかね。

玲香も他人を嫌いになれない性分な気がするんです。
だから、圭子には母だと名乗り出て欲しいんですよね。
圭子はアイドル玲香にとってマイナスになるからといって、名乗らずにハジメをはぐらかしましたけれど、そんな事無いはずです。
その程度のスキャンダルには慣れっこだそうですし、何より絶対赦してくれるだろうから。

玲香って「天涯孤独」ですからね。
どんなに否定しても、それはやっぱり寂しい事だし、家族の繋がりが有るのならそれに越した事は無い。
復縁して欲しいとまでは言わないので、せめて「母が生きている事」だけでも知ってもらいたい。
再び圭子が登場し、そういう結末を迎えるエピソードが欲しいです。

美雪との関係変化

「タロット山荘」にて。
事件後入院中の玲香を見舞った美雪に玲香が問いかけるシーン。

「金田一君の事どう思ってるの?聞かせて」

美雪のハジメに対する愛の深さを知り「敵わないな」と諦めかけていた時の言葉。
何故こんな事を聞いたかと言えば、ハッキリと美雪自身の口から「好きだ」と聞けたら、ハジメの事をスッパリと諦めようとしたからなんでしょうね。
ここの美雪の答えは作中ではカットされているのですが、多分はぐらかしたんだと思います。
結末で玲香が電波越しに美雪に向けて「ライバル宣言」をしていましたので。

「錬金術殺人事件」にて、再び玲香が美雪に問いかけています。

「答えて!美雪ちゃんの本当の気持ち」

改めてハジメの事をどう想っているのか訊ねたんです。
正直ここは唐突に思えました。
「何故このタイミングで突然美雪に気持ちを訊ねてるんだろう」と。
「タロット山荘」の時の様にハジメを諦めかけていた訳ではありません。
何故なのかと。
恋愛関連に疎いのでメッチャ悩んだのですが、ここは恋愛とは関係ないのかもというのが僕の結論。

このシーンの直前に美雪が心証だけで玲香を信じきったシーンがあるんですよね。
犯人ではないかと疑われた玲香を「玲香ちゃんはそんな事する子じゃ絶対無い」って。
口先だけでは無く「1人で閉じ込めるのは可哀相だから、自分も一緒にいる」と言い実際に行動に移した。

玲香の中でこれまではタダの恋敵でしか無かった美雪が、この瞬間に「仲良くなりたい子」…友達になりたい子に変わったのかなって。
だから、ハジメを好きかという質問は「友人として気持ちを知っておきたい」という事なのかなと。
美雪自身の事をもっと知りたいという興味から出た問い掛け。
この際も美雪が応えることはありませんでしたが、ハジメという共通の話題で盛り上がっていました。
事件が終わり、友達になった美雪と玲香。
初めて3人で「デート」の約束をして別れたことからも、2人の関係が変わった事が見て取れます。

全く同じ質問を玲香から美雪にしている。
1度目はハジメの恋を巡って。
2度目は友情を築こうとして。
恋のライバルという関係はそのままに、新たに友情が築かれた。

ハジメを巡る恋愛に関して玲香は敵わない。
けれど、恋破れてハイさようならと関係が終わらない絆が芽生えたのは前身ですよね。
人を愛せる玲香は、ライバルに負けてもライバルを恨むことなく祝福してくれそうですから。
特にライバルが友人であるなら尚更。
玲香と美雪の関係は良い方向に変化していて、これは玲香にとっての幸せと呼べるんじゃないかなと思います。

まとめ

取り留めも無く、構成を練らずにダラダラっと書いてましたら、とんでもなく長くなりました。
結論としましては、実母である三田村圭子からの告白が欲しいという事。
それと美雪との関係の更なる進展ですね。

この両方と、大好きなアイドルとして順風満帆な様子。
それを描いて欲しいかなという希望。
大きな不幸を描いた分、相応の幸福が訪れて欲しいです。

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