「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 アンソロジー1 雪乃side」感想

この記事は

「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 アンソロジー1 雪乃side」感想です。
ネタバレを含みます。

はじめに

アンソロ第1弾「雪乃side」読了です。
さささっと各編の感想を記します。

【石川博品】その答えは風に吹かれている。

バカな。
何故だ。何故、戸塚のスカート姿がイラストになってない。
おかしいではないか。
常識で考えれば、ここはしっかりとイラスト化される場面ではないか。
いや、されるとも。
されなければおかしいまである。
おかしいのはこれがアンソロという特殊な状況だからだろうか。
もしも1枚しか指定出来ないという制約があるのであれば、雪乃か戸塚で悩み、悩み抜いた末に材木座のスカート姿をイラストにして中立を保つべきではないのか。
おっと。自分で書いてて意味が分からなくなってきたので、この話を広げるのはよそう。

なんか八幡が無駄に暑苦しいのだが(笑
内容的には本当にくだらないお話w
そこに「俺ガイル」っぽさはミリも存在しないんだけれど、こういうお話を読めるのもアンソロの魅力なのかもしれない。

【さがら総】将棋はとっても楽しいなあ!!!

さがら先生と言えば、ロリコン塾講師か将棋かの2択。
今回は将棋を題材とした、将棋部からの依頼のお話。
八幡の一人称で描かれる本編とは異なり、雪乃視点(基本三人称)で綴るという非常に挑戦的な一作。
雪乃視点が混じってるからこそ、八幡とそれ以外のモブとの扱いの差が顕著に出てますね。
彼女にとってモブは本当に眼中になく、八幡は「コミュニケーション」として辛辣に当たっているというのは、分かりやすく八幡が特別だということを表現していて面白いなと思いましたね。
正直ここまで極端な思考はしてないと解釈してるのですが、これはこれで雪乃っぽいのかもしれない。

あとは、将棋についても千葉愛を語れる八幡は、ポイント高いですねw

【天津向】雪ノ下雪乃と比企谷八幡の、期せずして生まれた初舞台

先にアンソロ2巻を読んでいたので、雪乃とのコントって何のことだろうと思っていたのですが、このことだったのですね。
で、読んだ感想は率直に言うと、「天津向さんは僕には合わない」。
どうもキャラ解釈に差があるようで、八幡が八幡に見えない。
故に、八幡のモノローグが多いだけに、別作品にしか思えないのですよね。

ただ、雪乃っぽさはしっかりと出ていたと思います。
オチの下品さも含めて雪乃には出来ないことを八幡が補間するという点も「らしい」。
それだけにキャラ解釈の差が残念。

そうそう。
コントの脚本を練るよりも普段の八幡と雪乃のやりとりを見せた方がウケたんじゃないかな。
八幡がツッコミの回らざるを得なかったところは、作中一番笑えました。

【水沢夢】いつしか雪ノ下の髪は、あの日の風に揺れる。

個人的なベストは、この水沢先生の作品。
各作家さんとも自分のフィールドに落とし込んだ「俺ガイル」を綴っている中、今作も例に漏れず同様の手法で作られていました。
水沢先生と言えばツインテールということで、雪乃とツインテールについて研究を重ねたのかもしれません。
その考察の結果を「俺ガイル」の世界観の中で見事に魅せてくれていたのかなと。

キャラ解釈、話の捻り具合、オチ。
どれをとっても「俺ガイル」を正しくトレースしたかのような作品。
ツインテール要素も自然と入れていて、かつ、「何故雪乃はツインテールをしなくなったのか」という問に対する答えを出している。
非常に秀逸な短編でした。

【裕時悠示】そして、雪ノ下雪乃(29)は問い直す

「29とJK」のノリで、「もし雪ノ下雪乃29歳がコルセンで働いていたら」というifの世界のお話。
ある意味最もあり得なくて、最も野心的な作品。
原作で描かれてない設定を基にして組み立てられた物語なので、この作品の世界観を受け入れる必要性は必ずしも無いのだと思う。
大事なのは、中心にあるテーマ。

敢えて名前を似せて来てるので、すぐに原案となったエピソードが何か分かりますが、ようは「相模編」のアンサー的な物語なのですね。
(てか、「相撲」なんて苗字は流石に無いでしょと突っ込んで読んでたけれど、念のため調べたら…いらっしゃるのね…。岐阜県か…)
あの時何も出来なかった雪乃があの頃の八幡に向けた答え。
うん。
成長した雪乃ならではの答えだし、八幡の解決策の上を行っていると素直に思えるものになっていた為、これはこれでアリになっちゃうなぁ。
「29とJK」バリの逆転劇を短いページ数で纏め上げる手腕も流石。
非常に読み応えがあり、大満足出来ました。

【渡航】斯くして、彼の前に新たな敵は現れる。

パパノン視点は卑怯すぎるw
こんなん面白いに決まってる。
陽乃やははのんがアレだったから、雪乃の家族は彼女に対して厳しすぎるなぁと感じざるを得なかったのですが、なんだ。
ちゃんと分かりやすく愛されてるんじゃないの。
心の裡でいちいち愛娘を想うお父さんに笑いがこみあげてきます。
あと、お父さん。
ついでのようにははのんを誉めそやしてましたが、やればやる程ははのんへの絶対的な恐怖心が浮き彫りになるだけなので控えた方が良いかとw
骨の髄までははのんに掌握されちゃってるんだなぁ、このお父さん。

父親視点で改めて雪ノ下家を描かれたのは、非常に新鮮であったし、なにより一家への印象がガラッと変わりました。
厳しいし屈折してるけれど、ちゃんとした家族愛がある家庭だったのね。
それでも陽乃のことは苦手だけれど、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ認識を改めた次第。

終わりに

繰り返すようですが、水沢先生の短編は、そのまま本編にあってもおかしくないような出色の作品でした。
全体的に面白いアンソロになってますが、今のところ2巻通じても一番かもしれない。
面白かったです。

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